踏切

 会社を出て、近くのコンビニに行こうとしていると、カンカンカンと警報機が鳴り出す。走って踏切を渡ろうかと思うが、周りの目を気にして思いとどまる▲しばらくすると上りの列車が見えてくる。やっと渡れると思っていたら今度は下り列車の接近を知らせる矢印が点灯する。なかなか上がらない遮断機の前で、走るべきだったかと後悔する▲このイライラも、あと数日で解消される。JR長崎本線の連続立体交差事業で、28日に線路が高架化されるからだ。この事業でJR長崎駅から長崎市松山町にかけて四つある踏切がなくなる▲会社近くにあるのは梁川橋踏切。列車の本数が多い夕方には1時間に延べ18分間も遮断機が下り、「開かずの踏切」とも言われる▲と、さんざん不満を書いておきながら、なくなってしまうとなると何となく寂しい気もする。待ち時間が長いので踏切で意外な人に出会うことがあったからだ。10年以上前に取材でお世話になった人や高校の同級生。いずれも踏切がなかったら再会していなかっただろう。同じような体験をした人も結構いたのではないか▲夕方、遮断機の前でふざけ合う学校帰りの高校生をよく見かける。踏切がなくなればイライラとともに、こういった光景も消えていく。街角の景色が少しばかり変わる頃が近い。(豊)

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