クーペのようなフォルムで人気のホンダ ヴェゼル
コンパクトというには少しサイズは大きいかもしれませんが、デザインコンシャスなSUVといえばホンダ ヴェゼルが浮上してきます。
ユーザーの皆さんは、幻想的な霧の中の首都高速や都会を駆け巡る赤いヴェゼルと「Suchmos」の”STAY TUNE”が流れるCMを覚えていますか。まさにデザインに特化したシティユースのSUVを表現しているものでした。
ヴェゼルは、2013年にSUVの力強さ、クーペのあでやかさ、ミニバン並みの使い勝手など、ジャンルの枠を超えた価値を高次元で融合したクルマとして誕生しました。
その後、商品ラインナップや安全運転支援システムなどを充実させた結果、全世界で累計約327万台、日本では累計約42万台を販売。洗練されたデザインや広い荷室、室内空間で、世界中の幅広い層のお客様から支持されているとホンダはコメントを発表しています。
実際に運転しても、若干左後方の視界が悪いことを除けば、センタータンクレイアウトを採用していますので、室内の広さも十分。その上で、2ドアクーペのように見せるエクステリアデザインはお見事です。
リアのドアハンドルをCピラーに隠し、同じくリア側のドアに、後方に向かって駆け上がるキャラクターラインを入れることでドアのカットラインを目立たなくしています。
さらに、ルーフのピークをセンターピラー位置から少し前にすることで、ドライバーズカーに見せ、且つ、6ライトにしなかったことも2ドアクーペに見せる効果を生んでいます。このようにあちらこちらにデザインのこだわりが見て取れるのです。
扱いやすいボディーサイズが魅力のフォルクスワーゲン T-CROSS
一方のフォルクスワーゲン T-CROSSですが、一見コンパクトカーのポロをベースに背高にしただけのように見えますが、パネル類も大きく変わっています。
輸入元のフォルクスワーゲングループジャパンも、ポロとサイズがほぼ一緒なのは、同じ工場で一台ずつ交互に流れてきても大丈夫という生産上の都合によるところが大きいようですとコメントしています。
ポロのサイズは競合などを見据え、売れ筋の地域であるラテンヨーロッパ周辺での使いやすさから決められたものです。ほぼ同様の地域にT-CROSSも導入するので、ポロそのものに縛られているというより、マーケットの需要に合わせた結果としてポロと全長全幅がほぼ一緒になったといえるでしょう。
精緻な作り込みはフォルクスワーゲンならではで、このコンパクトクラスでも手は抜いていません。LED ヘッドライトはフロントフェンダー周りにまでつなげることで幅広く見えるように工夫され、バンパー周りの黒いモールディングと埋め込まれたフォグランプは、幅広さとともに高さのあるクルマにも見せています。
この手法はリアも同様で、横いっぱいに広がるブラックトリムフレームを備えたリフレクターバンドは、新形状の LED テールランプとともにクルマの幅広さと躍動感を視覚的に演出しています。
サイドもがっちりとしたCピラーとスクエアなデザインがSUVらしさを表現していますし、シャープな2本のキャラクターラインはフォルクスワーゲンの他モデルと共通で、洗練された印象を与えています。
そして最も特徴的なのはカラーバリエーションです。基本8色のボディカラーに内外装のカラーコーディネートができるデザインパッケージが標準設定(1stPlusのみ)されました。
ダッシュパッド、シート、アルミホイール、ドアミラーをオレンジ、グリーン、ブラックの3色から選ぶことができるもので、このデザインパッケージとボディカラーの組み合わせは13通り。そこに標準の8色を加えた内外装のトータルの組み合わせは21通りもあるのです。実用車であるとともに遊びグルマでもあるSUVですから、選ぶ楽しさも重要ですね。
少し大きなヴェゼルとトルクが大きなT-CROSS
では恒例のスペック比較をしてみましょう。T-CROSSがガソリンモデルしかないので、ヴェゼルも同様のモデルを選択してみました。
ボディサイズはヴェゼルの方がT-CROSSよりも一回り大きい印象で、それに伴いエンジン排気量も大きくなっています。
ここで注目したいのはそれぞれの最高出力と最大トルクの発生回転。どちらもT-CROSSの方が低い回転域で発生しています。
さらに、最大トルクの値はT-CROSSの方が大きいため、エンジンの性格が高回転を好むのがヴェゼル、それほど回す必要がないのがT-CROSSとなるわけです。安全運転支援システムに関してはどちらも必要なものは装備されていますので、大きな差はないといっていいでしょう。
カラーを選ぶ楽しさはどこかへ出かけたくなる
さて、このどちらを選ぶかはまさにお好みでどうぞという感じなのですが、個人的にはあえてT-CROSSを選びたいと思います。
その理由は2つで、まずはクリーンなデザイン。決してヴェゼルのデザインがよろしくないということではなく、飽きの来ないシンプルなデザインのコンパクトSUVも魅力だと思うからですし、気軽に乗ることを楽しめそうな気がするのです。
そして、カラーを選ぶ楽しみがあります。前述の通り21パターンもの組み合わせが可能。
マウイ島のビーチをイメージしたという新色のマケナターコイズメタリックも魅力ですし、ピュアホワイトにオレンジのデザインパッケージを組み合わせた仕様も楽しそう。こんな仕様にしたらどこへ出かけよう、そんな気持ちにさせてくれるのがT-CROSSなのです。
[筆者:内田 俊一]