ちゃらちゃらした水谷豊「表参道軟派ストリート」傷だらけの天使が蘇る? 1978年 3月25日 水谷豊のシングル「表参道軟派ストリート」がリリースされた日

イメージしたのは「傷だらけの天使」のアキラ?

「ねぇ、お茶飲みに行かない? そこの黄色いセーターの女の子」

こんな、ド定番な誘い文句から始まる「表参道軟派ストリート」。声掛けから、あえなく失敗するまで、軟派な男子のナンパが描かれる。異性に声をかけることをナンパと呼ぶのって、この曲で広まったんじゃないだろうか。

歌う(+喋る)のは水谷豊。この曲に出てくる軟派男子、まるでドラマ『傷だらけの天使』で水谷が演じたアキラ(漢字は「亨」と書く)なのだ。最終回、肺炎になって一人寂しく死んでしまったアキラが生き返って、表参道でちゃらちゃらナンパしてる! と、当時ちょっとうれしくなった。

だが、『傷だらけの天使』が放送されたのは、1974年10月から75年3月。「表参道軟派ストリート」がリリースされたのは、1978年3月。意外とタイムラグがあることに、今頃になって気がつく。ってことは、この間水谷はずっと… というか、1978年10月から始まる『熱中時代』の北野広大先生を演じるまで、“気弱な不良少年” というアキラのイメージをひきずっていたのかもしれない。

当時の表参道は閑静なケヤキ並木、これじゃナンパはうまくいかない?

私が初めて表参道に行ったのは、中学1年生だった1980年。買い物とか食事とか、そんなうきうきする理由ではなく、大きな病院に行くためだったが、あの軟派ストリートに行くんだ! と、ちょっと浮かれ気分になった。

きれいなお姉さんを目当てに、軟派な男子が集まる表参道。至るところで、男と女の駆け引きが繰り広げられて… なんて、中1の妄想は広がる。だが、いざ行ってみると、80年当時の表参道は、落ち着いた印象の閑静なケヤキ並木。こんなしっとりとした街並みだったのか。これじゃアキラのナンパ、うまくいくわけないなぁと、あの曲のオチに納得した。

そうそう、久しぶりに「表参道軟派ストリート」を聴きたいと YouTube を探したら、2008年の水谷が、1978年に歌う自身の映像からバトンタッチで歌う動画が見つかった。2008年の水谷、いかにもアキラなあの誘い文句、どうするのかと思ったら、『相棒』の杉下右京に変身。そうか、2000年代の水谷豊といえば、『相棒』だよね、ふーん。

冷静沈着でインテリの右京さんもいいけど、やっぱり愛おしいのは、気が小さくておバカで兄貴想いのアキラなんだよなぁ。

※2018年9月26日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 平マリアンヌ

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