「アロンソとハミルトンはF1史上最強のラインアップだった」とマクラーレンの元ドライバー

 マクラーレンの元テストドライバーであるペドロ・デ・ラ・ロサは、同チームが2007年に起用したルイス・ハミルトンとフェルナンド・アロンソの組み合わせが、F1史上最強のラインアップだったと考えている。

 13年前、マクラーレンの会長兼CEOのロン・デニスは、傘下ドライバーだったハミルトンを昇格させてレースシートを与えるとともに、新たに2度のF1チャンピオンであるアロンソを獲得した。

 ふたりは激しく戦い、その結果、チームは不本意な結末でシーズンを終えることになった。109点で同ポイントとなったハミルトンとアロンソは、フェラーリのキミ・ライコネンに1点差で敗れ、2007年のドライバーズタイトルをつかむことができなかったのだ。

 激しいライバル関係はハンガリーGP予選で限界点に達した。ポールポジションを争うなか、アロンソがピットからなかなかスタートしなかったことでハミルトンはラストアタックに入れず、アロンソは故意に妨害したと判断されて降格されるという事件が起きた。

「すべてのことがあのように爆発したことに驚いた」とデ・ラ・ロサはF1のポッドキャスト”Beyond the Grid”の最新版で語った。

「振り返ってみると、あのドライバーラインアップはこれまでで最強だったと思う。かつてないほどにね」

 マクラーレンが2シーズンにわたって擁したF1の伝説アイルトン・セナとアラン・プロストの組み合わせが最強だと考える者も多いだろう。しかしハミルトンとアロンソがトップを争っていた時期にテストドライバーを務めていたデ・ラ・ロサは、このふたりが史上最強のラインアップだったと考えている。

「新しい世代の方が強いと僕は感じるんだ」とデ・ラ・ロサは語った。

「だからセナとプロストを貶めているわけではない。彼らは僕の永遠のヒーローだ。でもフェルナンドとルイスのレベルは驚異的だった」

「彼らのデータを見て、『ふたりは別の惑星から来たのかな』と思ったことを覚えている。それでも、彼らのライバル関係が爆発するようになるとは予想していなかった。あれは残念だったよ。なぜならふたりはマクラーレンに何度もタイトルをもたらすことができただろうからね」

■デ・ラ・ロサ「アロンソとハミルトンは心の底では相手を尊敬していた」

 ふたりのドライバーによる愚かな行動と心理戦にもかかわらず、デ・ラ・ロサは彼らの間にはあるレベルの敬意があることを感じたという。

「彼らはコース上で常に最大限に敬意を払っていた。なぜなら彼らは相手がどれだけ優れているか分かっていたからだ。公にそのことについては決して語らなかったけれどね。彼らはお互いを大いに尊敬していたよ」と49歳のデ・ラ・ロサは付け加えた。

「彼らの間で、レーストラック上で何か問題のあることが起きたことはない。いつも激しいと同時に公平な戦いをしていた」

「押し出したり、フロントウイングを壊すなどといったことは何もなかった。ふたりの戦士がレーストラックで勇敢に戦っていたという感じだった。だからそれについて悪い思い出は何もないよ」

「ふたりとも極めて速く、才能に恵まれていた。ルイスはあの年にフェルナンドから多くを学んだと思う」

2007年F1ブラジルGP フェルナンド・アロンソとルイス・ハミルトン(マクラーレン)

「彼(アロンソ)はレース中にいかに一貫性を保つか、タイヤだけでなくマシンをどのようにして労わるかということを特別クラスで教えていたようなものだ。それでフェルナンドは、テレメトリーやデータがルイスにとって有利に働いていると感じ始めた」

「そして彼はフリー走行では本来の速さでは走らなくなった。予選でいきなり速さを発揮するようになったんだ。ふたりの偉大な戦士の間では、多くの駆け引きが行われた」

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