【おんなの目】 のどかな春

 のどかな春    菊田守

 晴れた朝/庭を散策する/すみれの花があちら、こちら/そこかしこに咲いている/宇宙の意志が自在に花を咲かせている/詩の女神が庭に舞い降りて。/裏にまわると/土筆が二本/兄弟のように背比べをして立っている/隣の家の植込みで/うぐいすが春を告げるように鳴いている/のどかな春

 今年は暖冬で、一月二月には早、春のような陽気の日が続きましたが、やはり本物の春とは違い、どことなくちぐはぐでした。明るい卵色の日差しですが、どこか光に自信がない。水槽のメダカも藻の陰から出たり入ったりしておちつきなく空を見上げていました。もう、春かしら? やはり四月にやってくる春は本当の春。春の日差しは自信に満ちて余裕があります。余裕は「のどかさ」を生みます。私達は、「のどかさ」に包まれて、豊かな暖かい心になります。本当の春がきたのです。もう身を春にまかせればいいのです。私は先日可愛いすみれを見ましたよ。

 近頃は春が短くなっている気がしませんか? すぐに去って行ってしまいます。  

 ともだち    秋山基夫

 桜の枝にランタンを吊るし/輪になってお酒をのんで/この明るさをよろこびあおう/どうせ暗い道を散っていくのだ

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