人気のSUVに向けたふたつの新型タイヤをCX-5でインプレッション|ヨコハマタイヤ BluEarth-XT & GEOLANDAR CV

横浜ゴム ブルーアース XT & ジオランダー CV

クロスオーバーSUVにマッチするタイヤの登場

「青い地球と人を守る、低燃費タイヤ」として誕生したヨコハマタイヤの中核をなす乗用車用タイヤシリーズが「ブルーアース」シリーズだ。コンパクトカーから高級セダンまで様々なジャンルの車種が展開される中で、車両特性に合ったバリエーションを揃えていくのはタイヤメーカーにとって大きなチャレンジといえるだろう。

そんな中で待望視されていたのは、ここ数年の間に世界的なトレンドとして自動車メーカー各社が次々と市場に送り込み一躍主力マーケットに成長した、SUVカテゴリーに適合するモデルの登場だった。それも特に市街地マーケットに主軸を置く「クロスオーバーSUV」車への適合タイヤが待たれていた。

世界中で売れているクロスオーバーSUV マツダ CX-5にピッタリ

横浜ゴム ブルーアース XT

今回レポートする「ブルーアース XT AE61」(以下ブルーアースXT)はまさにそのカテゴリーにマッチする最新のブルーアースとして登場したものなのだ。

今回はこのブルーアース XTを、クロスオーバーSUVとして国内だけでなく世界中のマーケットを席巻しているマツダCX-5 スカイアクティブ-Gの2リッターFF(前輪駆動モデル)に装着。市街地周辺での実用域走行フィールを確かめてみたので、インプレッションをお届けしよう。

横浜ゴム ブルーアース XT

CX-5 20Sに標準装着されていたのは225/55R19サイズの純正ラジアルタイヤだ。SUVでありながら幅広かつ19インチという大径のタイヤを標準装着していることがCX-5の特徴とも言える。デザイン的な逞しさと走行性能を両立させる一方で燃費や走行ノイズ、運動性能など様々な要件を高度に満たしている。リプレイスタイヤを純正装着品に取って替えるとなれば、同等以上の性能やデザイン性が求められるわけだ。

横浜ゴム ブルーアース XT

直進安定性の高さを印象づけるブールーアース XT

横浜ゴム ブルーアース XT

ブルーアース XTの外観デザインはトレッドパターンに特徴を集約している。4本の太いストレートリブを通しウェット路での排水性を高度に保ち、幅広のセンターリブは高速での直進安定性の高さを物語っている。

一方横方向に刻まれる溝は、ショルダー部を含め左右を貫通させず5種類のピッチバリエーションで、タイヤ全周を巡る。ショルダー部は高い剛性を与えられたことで、ハンドリングにも貢献するわけだ。

すっきりしたフェイスで品のあるトレッドデザインでありながら、ポイント毎に高度な要件を満たす工夫が凝らされているというわけだ。

ブルーアース XT × 新型マツダ CX-5の相性はいかに?

早速装着車を走らせてみよう。最初のタイヤのひと転がりからブルーアースXTの素性の良さが感じ取れる。タイヤの転動がスムーズで、転がり抵抗の小ささが伝わってくるのだ。トレッドパターン剛性が高く歪みが小さいためになせる技といえるだろう。そのままアクセルを踏み込まなくても自然に車速が上がっていく感覚は低転がり抵抗タイヤの特徴ともいえ、実際走行燃費も純正装着時より常に好数値を燃費計が示すようになっている。走行ノイズが小さいことも感動的だ。速度を上げても車室内が静寂で、ワンランク上級の車種に乗り換えたような錯覚を覚えるほどだ。

横浜ゴム ブルーアース XT

次にコーナーを少し攻めてみると、正確なライントレース性で安心感が増した。路面のギャップに走行ラインを乱される事がなく、ステアリングを切り込む量も減少し、舵角抵抗も減少していると言えるのだ。ちなみに駐停車時の据え切り操作ではステアリングを回す力が低減していた。タイヤのケーシング剛性が高く変形が抑えられているため、タイヤトレッド面の接地中心の動きが少なく一点を中心に転舵できている証で、偏摩耗の抑制にも効果がありそうだ。

そして乗り心地のしなやかさが向上し、段差通過もショックが少なく快適になった。

このようにブルーアース XTはあらゆる走行シーンで標準装着タイヤのフィーリングを上回る乗り味が確認でき、リプレイスタイヤとして存在感を強力に示していることがわかったのだ。

横浜ゴム ジオランダー CV

土系イメージのジオランダーもクロスオーバーSUV向けを発表

今回、もう一台同時にインプレッションしたタイヤがある。それは同じヨコハマタイヤのSUV用タイヤとして既に知名度の高い「ジオランダー」ブランド。その最新モデルである「ジオランダー CV G058」(以下ジオランダー CV)だ。SUV車の中でも悪路をより意識したクロスカントリー系モデルに好んで装着される「ジオランダー」だが、クロスオーバー系SUVにまで適合性を拡げたのがこの「ジオランダー CV」なのだ。

横浜ゴム ジオランダー CV

一見ブルーアース XTと競合するように思われるが然に非ず。サイズは同じながら外観的には多くの相違点を見出だすことができる。トレッドパターンデザインは4本のストレートリブを配しているのはブルーアース XTと同様だが、横方向に貫通する細かな溝を数多く配されている。一見して太い横溝と細い横溝が目視できるが、さらに詳細に見ると2D、3Dといった複雑で細かなサイプ状の溝が刻まれている。それもそのはず、ジオランダー CVは急な降雪にも対応できる「M+S」規格なのだ。「M+S」のマーキングが刻まれていれば冬季の冬用タイヤ規制には対応していないが、都市部での急な降雪程度なら走行可能である。特に4WDモデルに装着すれば首都圏のドライバーには突然の雪に立ち往生、という心配もなくなるといえる。

ジオランダー CV × CX-5の相性は?

横浜ゴム ジオランダー CV
横浜ゴム ジオランダー CV

今回はCX-5(初代)ディーゼル4WDモデルに装着し、舗装路での走行フィールをチェックしてみた。装着タイヤのサイズは225/55R19。標準のサマータイヤから履き替える。

停止状態でステアリングを転舵し据え切りしてみるとハンドルが軽くなっていることがわかる。これは溝が深いこととサイプが細かく配置されているため、トレッド剛性が低くなっているためと思われる。サイプを多く配置することと接地形状のフラット化により、雪道では雪を圧雪し剪断剛性を確保してトラクションを引き出せるのだ。接地形状の影響は、走行中の転舵でも感じ取れた。

横浜ゴム ジオランダー CV

標準タイヤでは転舵時にタイヤ接地面の形状が前後に長く、接地中心を軸の回転モーメントが大きくなって操舵力が重くなる。だがジオランダーCVでは接地面形状がフラットな形状のため操舵力が軽いのだ。乾燥舗装路の剛性感としては若干落ちるものの、ハンドルが軽くなって操作性が高まるのは多くのドライバーの助けになるし、車両の操舵系への負担も軽減されるので旧式モデルにも好ましい。

横浜ゴム ジオランダー CV

走行フィールだが、トレッド全体に溝が多くなるのでパターンノイズでは標準のサマータイヤに劣るが、溝が深く摩耗寿命が長く見込めるので、4WDのSUV車で長距離ドライブの多いユーザーには助けとなるはずだ。

横浜ゴム ブルーアース XT & ジオランダー CV

このように今回テストしたヨコハマタイヤの最新SUV用タイヤは共に市場ニーズを十分解析し、幅広いユーザーと車種、走行パターンにマッチする好特性に仕上げられていることが確認できた。

筆者/中谷明彦 撮影/田村 弥

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