小学生でも書ける人権作文の書き方~受賞例に見る書き方のコツ~

人権作文はほぼ全国の中学で宿題として出されますが、最近では、小学校でも宿題になることがあります。早いと小学校3、4年生に書かせる学校もあるようですが、子供がそもそも人権とは何かを理解できず、何を書いていいのかさっぱり分からないことも多いでしょう。この記事では、小学生に書きやすい人権作文のテーマと書き方のコツを紹介します。

人権とは?

小学生に人権作文を書かせる場合、まず「人権とは何か」を説明することから始めなくてはならないでしょう。当然、宿題を出す前に学校で子供たちに教えているはずですが、実際に家で宿題をしようとすると、やはりきちんと理解できていないこともあります。小学校3、4年生の子供にも分かるように説明するには、どうすればよいでしょうか。

全国中学生人権作文コンテストの定義

まず、人権の定義を確認しておきましょう。法務省が毎年実施している全国中学生人権作文コンテストの応募リーフレットで、法務省は人権を以下のように定義しています。

「人権」とは,「人間が人間らしく生きる権利で,生まれながらに持つ権利」であり,誰にとっても身近で大切なもの,違いを認め合う心によって守られるものです。

(引用元:人権作文を応募いただく生徒の皆さんへ ~人権作文の書き方~|法務省)

小学生にわかりやすく説明するには

「人間が人間らしく生きる権利」という表現は、小学生には今ひとつ分かりにくいかもしれません。もう少しかみ砕いた表現で説明すると、「人間は一人ひとり違い、誰でも自分に一番合った生き方をすることが幸せで、その幸せは誰にも邪魔されてはいけないこと」と考えればいいでしょう。

身近な例を挙げて、さらに分かりやすく説明しましょう。

例えば、クラスメイトにいつも悪口を言われたり、嫌がらせをされたりする生活は、人権が守られているとは言いがたいものです。また、女の子でもゲームが好きで、学校でゲームの話をしたい子もいるでしょう。それなのに、「女のくせに」と言われ好きな話もできないのは、幸せを邪魔されていると言えます。病気、障害、性別、肌の色、体系など、他人と違うことをからかわれたり、受け入れてもらえない例は、子供でも経験、目撃したことがあるはずです。

小学生に書きやすい人権作文のテーマ

人権作文は、自分自身が体験したこと、実際に目撃したことをテーマとするのが、最も書きやすく、説得力のあるものとなります。普段の生活を振り返り、自分にとって衝撃的だったこと、大したことではなくても後味の悪かったことなどを探しましょう。

友達との関係

仲間外れにされて悲しい思いをしたこと、いじめを目撃したこと、また軽くからかうだけだったつもりなのに、友達を傷つけてしまったことなどありませんか? 毎日、濃密な人間関係の中で過ごす学校生活では、ときには嫌な思いをすることもあります。その時どんな気持ちになったか、また同じことが起こらないようにするためにはどうすればいいのかを考えてみましょう。

家族との関係

小学生のうちから家族のありがたみを意識している子供は多くないでしょう。しかし、普段の生活を少し振り返れば、お父さんやお母さんが助けてくれた例はたくさん見つかるはずです。家族は一番小さな社会です。人権が守られている理想的な社会とは、一人ひとりが他の人の気持ちを受け入れ、思いやりを持って接することができる社会でしょう。そういった社会を構築するためには、まず家族内で互いに思いやりを持つことが大切です。

祖父母と一緒に暮らしている場合、高齢者をいたわる気持ちを取り上げてもよいでしょう。おじいちゃんやおばあちゃんが、耳が遠かったり歩くのが遅かったりして、イライラしてつい冷たく当たってしまうことはありませんか? その時、おじいちゃんやおばあちゃんはどんな気持ちになったでしょうか? 友達につらく当たられ悲しい気持ちになったことは、誰でも一度や二度はあるでしょう。その時の自分の気持ちを考えれば、高齢者などに対してどのように接するべきかは分かります。

男女差別

「男はこんなことで泣くんじゃない」「女の子なんだから手伝いなさい」など、思わず大人の口から漏れる言葉に、違和感を抱く子供もいるはずです。男の子でもピンク色が好きな子もいれば、女の子でも男の子に交じってサッカーをする子もいるのが普通です。しかし、私たちの社会は、子供のうちから「男らしさ」「女らしさ」を求める傾向があります。社会の旧態依然の考え方に異を唱え、誰でも自分らしく生きられる世の中にしたいという思いは、小学生でも持っているものです。

病気や障害者に対する差別

病気や障害のある人が身近にいる場合は、その人たちに対する差別や偏見を目撃することがあるかもしれません。また、養護施設などとの交流会を通し、自分自身が今まで偏見を持っていたことに気づく場合もあるでしょう。

外国人に対する差別

住民基本台帳に登録されている外国人小学生の人数は、いまや8.7万人に上ります。外国籍の子供がいる小学校が増え、日常的に外国人と接触している子供もいるでしょう。外国籍の子供が、言葉や文化の違いで困っているのを見たことはありませんか? 周りの人から、からかわれているのを目撃したことはありませんか?

参考

外国人の子供の就学状況等調査結果(速報)|文部科学省

受賞例に見る書き方のコツ

テーマを決めたら、作文を書き始めます。小学校の人権作文の宿題は、400字詰め原稿用紙2~4枚程度です。以下の3つのステップを踏めば書きやすく、規定文字数も難なく埋まるでしょう。

1. 自分が体験したことを描写する。
2. 体験によって何を感じたかを書く。
3. これからどうしたいか、またはどんな社会になるといいと思うかを書く。

具体的に、受賞例を参考に見てみましょう。

『いじめのない世の中へ』

福岡県の小学4年生の作品です。まず、自分が目撃したいじめについて描写しています。その後に、自分がただ黙って見ていただけで注意をしなかった後悔がつづられています。さらに、自分が友達に仲間外れにされた時の気持ちに重ね合わせ、いじめられていた子への共感を示します。最後に、いじめのない世の中を達成するために、一人ひとりがいじめに加わらないことと、いじめをしてはいけないと思う心を持つことが大切だと説いています。

参考

人権作文入選作品(小学生部門)|太宰府市、P11

『へん見で人をきずつけないために』

岐阜県の小学5年生は、病気や障害に対する偏見を取り上げました。まず、自分と母親の体験をもとに、他と違う様子をジロジロ見られることの居心地の悪さをつづりました。その後、学校で障害者施設の人と交流した経験を書いています。自らもつらい体験をしたことがあるため、自分は障害者への偏見はないという自負があったにもかかわらず、実際にはある障害者の行動に不快感を持ち、理解しようとしなかったことを書いています。最後に、偏見で人を傷つけないためには、相手のことをもっと知る努力が必要だと述べています。

参考

最優秀賞 小学生の部|岐阜市、P1

『男女平等』

日本は世界でも女性の家事負担が重い傾向がありますが、岐阜県の小学4年生は、家庭の中でその問題を指摘しています。「男はいいんだ」と家事をしない父親を「ださい」と一刀両断し、娘にしか手伝いを頼まない母親も批判しています。その上で、自分も「男らしさ」「女らしさ」の先入観にとらわれていることがあることに気づき、一人ひとりの意識を変えていくことが大切だと説いています。

参考

優秀賞 小学生の部|岐阜市、P1

まとめ

人権作文と言っても、難しい人権問題を取り上げる必要はありません。日常生活のささいな出来事でも、「何が起きたのか」「自分はどう感じたのか」「これからどうしたいのか」をていねいにつづっていけば、立派な人権作文となるでしょう。

参考

人権作文を応募いただく生徒の皆さんへ ~人権作文の書き方~|法務省

人権作文の書き方|書くことが得意になる!小学生からの作文・感想文

人権作文小学校3年生向けの書き方ガイド!おすすめテーマとスラスラ書くコツ! | 言葉のギフト

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