火災店舗から人名救助 冷静な対応に感謝状

 川崎市役所(川崎区)近くの繁華街で昨年末、バーの店長ら3人が火事になった近隣店舗から店主を助け出し、消防が到着する前に消火まで終えるという活躍をした。川崎消防署は「3人の勇気ある行動がなかったら、人命が失われていたかもしれない」と感謝状を贈った。

  発生は昨年12月7日の深夜1時ごろ。川崎区砂子1丁目のスポーツバー「ココウェル」の店長斉藤毅さん(37)は営業を終え、常連と店の階下の焼き肉店で食事をしていた。すると「近くの店で煙が出ている」という通行人の声が聞こえた。外に出ると、シャッターが閉められた隣の店内から煙があふれ出していた。

 近づくと店内から音がする。店主の男性(52)と顔見知りだった斉藤さんは、中に人がいると確信した。

 「充満している煙が黒い場合は危ないが、白い場合は高温ではない。バックドラフト(閉じられた空間に急に酸素が流入することで火炎が飛び出す現象)は起きない。これは開けても大丈夫だと思った」。かつて飲食チェーンに勤めていた際に、災害対応の研修で培った知識が役立った。

 扉を開けると入り口近くでうずくまる男性が見え、外に連れ出した。さらに、一緒に飲んでいた女性(22)と男性(32)らとともに消火器を使って消火活動に当たり、消防が着くまでの約10分の間に救助と消火をやってのけた。

 勇気ある行動にも、斉藤さんは「人がいると分かれば助けようと思うのは当然」と一言。「ただ消防団をやっている友人に『俺は現場を知っているぞ』と自慢できますね」とユーモアを交えて振り返った。

 川崎消防署は「繁華街の延焼を防いだばかりではなく、救助が遅れていれば最悪の事態になりかねなかった」と最大限の賛辞を送っていた。

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