梅ジュースで乾杯 地域交流にひと役

 横浜市磯子区の市立梅林小学校(市村千明校長、児童数496人)で、シンボルの梅を題材にした学習や交流が広がっている。梅林として名をはせた往時のにぎわいをよみがえらせようと、子どもたちや近隣住民らがさまざまな活動に取り組む。

 地元ゆかりの杉田梅は、白い花を付け、大きい実がなるのが特徴。約400年前に杉田村の領主、間宮信繁が栽培を奨励したことが始まりとされる。最盛期には3万6千本ほどあって梅林として有名になり、江戸時代から明治時代まで多くの観梅客が訪れたという。

 周辺の杉田梅は風や塩害で枝が傷み、ほぼ姿を消したが、地域住民の希望で、1960年に開校した同校の校名に名残をとどめた。校章や校歌にも梅の花が取り上げられている。

 校内には、杉田梅10本を含む10種類50本が植わる。番号を振った見取り図を作り、「図書室横の44番(白加賀)が最も多く実をつける」「運動場の28番(寒紅梅)が最も早く咲く」と細かく特徴を把握し、愛着を持って大事にしている。

 「梅っ子夢フェスタ」と銘打つ校内発表会では梅を研究テーマにするクラスも多く、創立20周年に作られた「梅林音頭」は、毎年の運動会で全学年が一緒に踊る。初夏に高学年が手掛ける梅ジュース作りも伝統行事。全校児童で味わう。同校事務員で、卒業生でもある女性(29)は「他学年と一緒に乾杯をし、楽しい思い出が残っている」と、今も続く風物詩を喜ぶ。

 昨年4月からは保護者や地域住民による「梅っ子応援隊」が活動を開始。児童が漬けた梅ジュースの仕上げを手伝う。

 現在、杉田梅のほとんどは小田原市の曽我梅林で栽培されているが、地元住民らで構成する杉田梅愛好会が3年前、磯子区内で継ぎ木に成功。昨年12月、同校に2本の苗木を贈った。

 6年生は総合的な学習の一環で、この苗木と古くなった樹名板を作成する。手掛ける生徒たちは「校内に植わる10種類をブレンドして梅ジュースを作ったことが懐かしい」と振り返り、「在校生が梅に関心を持つような樹名板を作りたい」と話している。

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