NY日本食レストラン「コロナに負けない」 存続懸け持ち帰りや宅配 駐在員らSNSで注文呼び掛け

初の弁当作りに乗り出した「Tsukushi(つくし)」=3月20日、ニューヨーク・マンハッタン(共同)

 新型コロナウイルスに負けない―。今や米国内の感染の「震源地」と呼ばれ、店内飲食サービスが禁止された米ニューヨークで、日本食レストランが存続を懸けて持ち帰りや宅配に乗り出した。なじみの味や憩いの場所をなくしてはならないと、日本人駐在員らの間で会員制交流サイト(SNS)を通じて注文を呼びかける動きが活発化。応援のためのウェブサイトも開設されている。(共同通信=松尾聡志)

 資金繰りへの支援はあるが、米国のレストランやファストフード店では一時閉鎖が相次ぎ、全米レストラン協会は今後3カ月で500万~700万人の従業員が失業するというショッキングな予測を発表している。和食ブームをけん引してきた人気レストランであっても、店内営業ができない状態が長引けば、閉店に追い込まれる恐れがある。

 1993年から続く「Tsukushi(つくし)」は急きょ、弁当の販売を始めた。中枢同時テロや金融危機の時も変わらず店を開け、不安を抱える日本人駐在員らに家庭料理を振る舞ってきた。営業制限も弁当作りも初めてだ。

 弁当はサバの塩焼き、タケノコの煮物、コロッケなど、ニューヨークではなかなか食べられない料理が盛りだくさんで20ドル(約2200円)。普段の60ドルのおまかせコースと同様、栄養バランスに気を配る。店主の真鍋徳彦さんによると、初日の注文は10個ほどだったが、常連客からSNSで広がり、2日目には「手に負えないほど注文が来た」という。「ありがとうございます」と手書きされたのしを付け、妻裕子さんが宅配も手掛ける。

店の入り口に持ち帰り総菜が並ぶ「WOKUNI(うおくに)」=3月20日、ニューヨーク・マンハッタン(共同)

 「WOKUNI(うおくに)」は、店の入り口に「フィッシュマーケット・オープン・セブンデイズ」の案内を掲げた。天ぷらやすし、ポテトサラダなどの持ち帰り総菜を買い求める客が多く訪れている。総支配人の吉沢邦明さんによると、外出制限の長期化に備えて冷凍食品などを買い込んだものの、3食とも作るのは大変だし、飽きてしまうという声をよく聞くという。

 一方、「Hirohisa(ひろひさ)」のオーナー林寛久さんは、持ち帰りや宅配で収支を確保するのは難しいとして休業を決定。「大変な毎日だが、おいしいものを食べれば前向きになれる」と、刺し身の盛り合わせやたこの煮付けなど腕によりをかけた総菜を無料で配り、SNSの口コミで詰めかけた客に再開を誓った。

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