感染相次ぎ異例の選挙戦 壱岐市長選告示 陣営、住民から戸惑い <白川氏>非常事態 遊説せず <森氏>握手控え 政策訴え

マスクを付け、候補者の話に耳を傾ける支持者=壱岐市内

 壱岐市で新型コロナウイルスの感染者が連日確認される中、5日告示された同市長選。現職、新人の一騎打ちの構図だが、現職は感染拡大防止の陣頭指揮に専念、新人も有権者との握手を控えるなど異例の選挙戦となり、両陣営や住民からは戸惑いの声が漏れる。
 同日朝、芦辺町内。現職の白川博一候補(69)は数人の支持者を前に「陣頭指揮を執らねば大変なことになる」とし、遊説はせずに市役所で対策に当たると伝えた。白川氏がたすきを掛けることはなかった。
 市内では告示日までに6人の感染を相次ぎ確認。白川氏は選挙戦で磯焼け対策や港湾施設の整備などを訴えるはずだったが、「今回は非常事態だ」として職務代理者を立てなかった。
 「市民の命を優先した」と評価する有権者がいる半面、後援会関係者は暗い面持ち。電話をかけるくらいしか活動ができず「感染者には申し訳ないが、はがゆい」と焦りをにじませる。
 経営者の経験を生かした市政運営をアピールする新人の森俊介候補(35)も、遊説では「壱岐にとって今一番大切なことは、ウイルスにどう立ち向かうかだ」とし、情報公開や水際対策などを訴えた。感染拡大防止のため、有権者との握手を控え、おじぎをし合う場面もあった。
 告示前から集会の自粛や公開討論会の“無観客”開催など、知名度で劣る新人には苦しい状態が続く。白川候補が公務に専念していることについて、森候補の陣営関係者は「申し訳ない気持ちもある。ただ、私たちは(市民に)判断材料を提供しなければならない」と複雑な心中を明かす。
 両陣営とも屋内の集会を自粛し、表向きは静かな選挙戦。郷ノ浦町在住で飲食店勤務の30代女性は「仕事も恐る恐るの状況だけど、投票に行かないわけには…」と表情を曇らせた。
 一方、市選管は12日の投票に向けて感染予防策を検討。▽投票所で投票用紙と一緒に鉛筆を配布し、使用後は消毒する▽一度に大勢の人が集まらないよう入場制限を設ける▽立会人へのマスク配布、定期的な消毒や換気を実施する-などの対策で感染リスクを極力抑える方針だ。

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