<南風>ハワイ天文台の人々

 世界10カ国、13の望遠鏡が立ち並ぶハワイ島マウナケア山頂。標高4200メートルで快晴の日が多く、大気の流れが安定しているため、地上で最も優れた天体観測地と言われています。そこに口径8・2メートル、世界最大級の日本の望遠鏡「すばる望遠鏡」がそびえ立っています。初観測から今年で17年目を迎えるすばる望遠鏡は、130億光年のかなたにある銀河を世界に先駆けて発見しました。近年では太陽以外の星を回る惑星、系外惑星も続々と見つけています。 さて今回はすばる望遠鏡で働く人々についてお話ししましょう。意外なことに、スタッフ総勢約100人のうち天文学者と言われる人々は、実はわずか2割にすぎません。そう、天文台で働いている=天文学者、つまり天文学で博士号を所有しているスタッフではないのです。大部分は技術者、エンジニアで、カメラや分光器といった新しい装置の開発や望遠鏡の操作、ソフトウエアの開発などに携わっています。さらに「デイクルー」と呼ばれる方々は日中、望遠鏡のメンテナンス、装置交換などをしています。

 常夏ハワイでも、冬はマウナケア山頂には雪が降ります。デイクルーの皆さんは命綱をつけ、高さ44メートルのドームの上で雪かき作業をすることもあるのです。まさしく体力仕事です。今の仕事に就くまで天文台の夜の姿しか知らなかった私ですが、初めて昼間の作業風景を見たときは感動しました。天文学の華やかな発見は、望遠鏡を陰で支える人々の努力の賜(たまもの)なのです。

 また日本の望遠鏡と言っても、働いているスタッフは世界中からやってきています。したがって公用語は英語。多様な技能を持った人々が世界から集まり、宇宙の謎を解き明かすべく、昼夜望遠鏡運営に従事している。それがすばる望遠鏡なのです。

(嘉数悠子、国立天文台ハワイ観測所アウトリーチ・スペシャリスト)

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