スタイリッシュ、なのに癒し系!? ボルボ 新型XC90 D5 AWD R-Design 試乗

ボルボ 新型XC90 D5 AWD R-Design[特別仕様車](ボディカラー:サンダーグレーメタリック)

プレミアムSUVを考えてる人全てに検討をおススメしたい選択肢

ボルボ 新型XC90 D5 AWD R-Design[特別仕様車](ボディカラー:サンダーグレーメタリック)

お値段959万円。そんな高価なクルマをオススメするのか? といいたくなるのは解らなくもない。もちろん僕だって手を伸ばしても届かない。でも、仕方ないだろう。いいモノをダメというわけにはいかない。

マイナーチェンジが加えられたボルボ XC90シリーズのスペシャルエディション、D5 AWD R-Design。

ボルボ 新型XC90 D5 AWD R-Design[特別仕様車](ボディカラー:サンダーグレーメタリック)

白状するなら、写真を見た段階では“ボルボ、もしかしてやっちまったか……?”という想いが脳ミソを掠めたりもしたのだ。だって、めざとく気づいた人もいるだろうけど、ホイールの大きさとタイヤの薄さを見てみて。ルックスとしてはスポーティでカッコイイけど、乗り心地が……と考えるのが自然じゃないか。

でも、それは余計な心配だった。走らせてみたら、ちゃんとボルボらしい癒やしの味だったのだ──それもだいぶ上質な。このクルマは手を伸ばせば届く人、プレミアムSUVの購入を考えてる人にとって、間違いなくいい選択肢になると思う。

新世代ボルボの幕開けを飾ったXC90

ボルボ 新型XC90 D5 AWD R-Design[特別仕様車](ボディカラー:サンダーグレーメタリック)

ボルボ XC90は、御存知のとおり世界的に売れ行き好調なボルボのフラッグシップSUVだ。

2代目XC90は新世代ボルボの幕開けとなったモデルであり、2016年に国内発表されてから時間が経っているというのに、実は今も高い人気を保っている。例えば2018年と2019年の数値を見ても、世界で2年続けて10万台前後、日本では2年続けて1000台前後の販売をキープしてるのだ。

なので、マイナーチェンジとはいっても、それほど大きな変更はなされていない。前後のバンパーやフロントグリルなどに“どこが違うんだろう?”と間違い探しのようにしないとなかなか気づきにくいぐらいのフェイスリフトが行われたこと。そして、昔から乗員の安全性については並々ならぬこだわりを持つ伝統に則って、ただでさえ驚くほどたくさんのセーフティデヴァイスが標準で(!)備わっていたというのに、それがさらに充実したこと。並べるとすれば、そのくらいである。

XC90で初となる、D5とR-Designの組み合わせ

ボルボ 新型XC90 D5 AWD R-Design[特別仕様車](ボディカラー:サンダーグレーメタリック)

最も大きいニュースが、D5 AWD R-Designの設定、といえるかも知れない。

ボルボのラインナップそれぞれの中にスポーツテイストを持つグレードとして設定されるR-Designと、2リッターディーゼルで最もパワフルなD5ユニットの組み合わせ。意外なことに、それはXC90では初めてだという。

R-Designのエクステリアで特徴的なのは、スプリッターの部分が2枚刃になってるフロントバンパーやディフューザー付きのように仕立てられたリアバンパーが採用され、さらにはグリルやウインドートリム、ドアミラー、ルーフレールなどがブラックで統一されていて、キュッと引き締まったような印象を見せていること。

それに足元は9J×22というホイールに275/35R22サイズのタイヤ。ほかのXC90は19インチか20インチ、318ps+87psのPHEVで最もパワフルなT8ツインエンジンを積むモデルでさえ21インチなのに、22インチだ。スーパーカーか! とツッコミを入れたくなる。

R-Designでもボルボらしい居心地の良さはそのまま

ボルボ 新型XC90 D5 AWD R-Design[特別仕様車](ボディカラー:サンダーグレーメタリック)

一方でインテリアは、細かい部分の素材が変わったりするぐらいで、いい意味でそれほど大きな違いはないように見える。

ダッシュボードやドアトリムの一部にカーボンパネルが使われていて、個人的にはスポーティ=カーボンという図式に飽きがきてるところはあるものの、新世代ボルボは異なる素材や異なる色味のあしらい方のバランスが抜群に上手い。だから違和感がなくて、XC90ならではのエレガントな世界観がちゃんと保たれてる。これは好感が持てるポイントだ。

けれどXC90のインテリアの最大の美点といえるのは、やはりその居心地のよさ。R-Designであっても、それは全く変わりない。

ボルボ 新型XC90 D5 AWD R-Design[特別仕様車](ボディカラー:サンダーグレーメタリック)

XC90は3列目のシートが標準で備わっていて、大人であってもそれほど長い距離でなければおとなしく座っていられるほどなのだが、それくらい空間は広々としているわけだから、とりわけ1列目と2列目は実にゆったりと過ごせる。

ドライバーとパッセンジャーのためのシートはR-Designの専用とされていて、形状もやや深みを増してるようにも感じられるのだが、座り心地はボルボらしい優しさを感じさせてくれるもの。快適なのだ。

迫力たっぷりな22インチなのに…予想に反した快適性に驚く!

ボルボ 新型XC90 D5 AWD R-Design[特別仕様車](ボディカラー:サンダーグレーメタリック)

その辺りは想像ができていたこと。走り出して1分もしないうちに、僕は無意識に唸っていた。軽く驚かされていたのだ。何に? 乗り心地に。迫力たっぷりの22インチを履いているというのに、予想に反した快適さなのだ。

路面の継ぎ目や段差を踏み越えるときにはさすがにタイヤの薄さを思い出させられることがあるけど、基本、その乗り心地は優しい。高めの速度域での巡航など、至って快適。もっと硬かったり荒かったりするのを予想していたから、望外に嬉しかった。

FOUR-Cアクティブパフォーマンスシャシーとエアサスの組み合わせも進化を実感

ボルボ 新型XC90 D5 AWD R-Design[特別仕様車](ボディカラー:サンダーグレーメタリック)

試乗車はオプションのエアサスペンションを備えていて、その制御がXC90の初期の頃と較べてずいぶん進化しているように思えた。滑らかにして緻密な感じ。+31万円のエクストラだが、これはぜひともセットするべきだと思う。

ちなみにエアサスはドライビングモード選択式FOUR-Cアクティブパフォーマンスシャシーとのセットになっている。

モードを“ダイナミック”にすると乗り味がちょっと突っ張ったフィールになるから、通常は“コンフォート”で走るのがいいと思うが、ワインディングロードなどでは別。さすがにスポーツカーのようにシャープに曲がるとは言いづらいけど、ほどほどに気持ちよくコーナーを抜けてくれるようにはなる。

D5ディーゼルエンジンはロングドライブが似合う性格

ボルボ 新型XC90 D5 AWD R-Design[特別仕様車](ボディカラー:サンダーグレーメタリック)

とはいえ、そういう走り方はやればできるっていうだけのことで、XC90というクルマのキャラクターにマッチしてるとは言い難い。ましてやR-Designのパワーユニットは、強大なパワーとトルクを誇るT8 Twin Engine AWD[プラグインハイブリッド]だったりするわけでもない。

D5と呼ばれる2リッター直4ディーゼルターボは235psに480Nmとなかなかのアウトプットで、2.1トンの車体を過不足なしに加速させてくれるし高速巡航性も結構高いけど、性格としては穏やかな部類。悠然と遠くを見つめるような気分で走らせるのが似つかわしいし、心地好い。

この日も22インチと“ダイナミック”モードの組み合わせを試すために峠道を元気よく走り出し、そこそこいけることは解ったのだけど、いつの間にかアクセルペダルを踏みつける右足は緩み、ステアリングを握る腕の動きもゆっくりしたものになっていた。戦闘的な気持ちになんてなれないのだ。鼻歌まじりでゆったり走る方が気持ちいいから。

ある意味、これも立派なセーフティデヴァイス、といえなくはないか?

ここまで格好良いのに根は癒し系…そこがイイ!

ボルボ 新型XC90 D5 AWD R-Design[特別仕様車](ボディカラー:サンダーグレーメタリック)

SUVを買って軽く車高を落としてインチの大きなホイールに履き替えて……というちょっと本末転倒ともいえることをしたくなる人の気持ちも、実は解っちゃったりする。クルマの隙のないスポーティな雰囲気っていうのは、フェンダーの中から漂ってきたりすることが多いのだから。でも、それをやっちゃうとどうしても乗り心地が大きな影響を受けがち。

ところがXC90 D5 R-Designは、エアサス付きであればモードによっては車高が20mmほど低くなるし、ホイールも大きくてタイヤは薄い。スポーティにしてスタイリッシュだ。

なのに乗り心地はほとんどいっていいくらい悪影響を受けていない。そのうえ乗り味はとってもオトナで、気合いを入れればほどほどに応えてはくれるけど、根は穏やかな癒し系だ。そのマッチングの妙こそが最大の魅力。

どちらも欲しいと内心では思ってる人、実は多いと思うのだ。

ボルボ 新型XC90 D5 AWD R-Design[特別仕様車](ボディカラー:サンダーグレーメタリック)

シンプルなMomentum(モメンタム)、エレガントなInscription(インスクリプション)、ゴージャスなExcellence(エクセレンス)・・・

他にも魅力的なグレードが揃うXC90だけど、D5 R-Designはそれらに負けない個性をしっかり持ってると思う。

そう考えると、XC90選びも難しさを増したといえるのかも知れない。

[筆者:嶋田 智之/撮影:MOTA編集部]

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