奔放さがまぶしい

 ランドセルの皮革を製造するクラレ(東京)が、小学校に今春入学する子どもにアンケートをした。「将来、就きたい職業は?」。1位は男の子が「スポーツ選手」、女の子は「ケーキ屋・パン屋」で、トップは共に長年変わらないという▲動画を投稿して稼ぐ「ユーチューバー」が、男子で過去最高の10位になった。アイデア満載の動画で注目される将来を、夢見る子も多いのだろう▲昔ながらの「会社員」という答えは男女を問わず、20位以内にもない。会社員という職業がピンとこないのか、夢のある仕事とは思えないのか。長いこと会社員をしているけれど、よく分からない▲新1年生ではなく小学6年生に尋ねた調査だが、その昔、「サラリーマン」が男子の就きたい仕事の1位になったことがある。東京五輪の2年前、1962(昭和37)年に、ある雑誌が全国調査した▲映画の影響かもしれない。その年、植木等さん主演の「ニッポン無責任時代」が封切られている。「気楽な稼業」の野放図さは、経済成長の坂道を上る人々の足取りを軽やかにし、子どもたちも憧れの目で見たのだろう▲この調査に応じた小学生も今や古希を迎えている。はじけるような奔放さが人の心を軽くした成長期がどこかまばゆい。「自粛」に身をすくめる今は余計にそうかもしれない。(徹)

 


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