性被害者を侮辱した「伊藤詩織」の正体 【前編】|小川榮太郎 「伊藤詩織」シリーズ第1弾!月刊『Hanada』10月号(完売御礼!)で、大反響を呼んだ小川榮太郎氏の「性被害者を侮辱した『伊藤詩織』の正体」の完全版がついに公開!伊藤詩織氏は本当に性被害者なのか。それとも――。マスコミがまったく報じなかった「事実」の扉が、いま開かれる――。

外国特派員協会での記者会見

レイプ犯の汚名を着た息子

7月8日に、山口敬之氏と伊藤詩織氏の民事裁判が東京地裁で行われた。その翌朝、熱海の海を見ながら山口氏が呟いた一言に、私は胸を衝かれた。

裁判のあと、私は氏を熱海のホテルに誘ったのだった。人生を賭けた裁判の疲労は並々ならなかっただろう。夜は私の妻も交え、裁判談義に始まっていつものように談論風発、その翌朝、山口氏は何やら茫洋とした表情で海を見ながら呟いたのだった。

「こうして熱海の海を見ていてふと思い出したのですが、うちの両親を連れた最後の旅で、実は伊豆山を訪れたんですよ。源頼朝ゆかりの地を巡り、政子との出会いの韮山まで足を延ばして。その時も、こうして熱海の海を見たなあと思って」

山口氏の父君は、この事件のショックから体を壊し、息子の無実を信じつつ、昨年亡くなっている。私も先年、父を亡くした。レイプ犯の汚名を着た息子が孤立するなかで、病重くなり続けた氏の父上のことを思う都度、私は何度いたたまれぬ思いにかられたことだろう。

が、この件に情実は、絶対あってはならない。

自身の仕事に忙殺され、裁判資料などを精査する時間的余裕が全くないなか、私は敢えて沈黙してきた。

私は山口氏を「信じる」という選択は、この件では全くするつもりはなかったし、してはならないと思っているからだ。

「性」は「殺人」とともに、最も暗い人間の情熱であり、その快楽は暴力性と最も近接する。「恐怖」と「暴力」と「強い快感」は、小脳における感受部位が重なる。私自身、自分の性欲や快楽への欲望を抑制する良心を安易に信じることなど到底できない。

そしてまた、古来、生まれてきた赤子が本当に自分の子供なのかという猜疑が、どれだけ多くの男たちを苦しめてきたことだろう。

私は、山口氏を信じるのではなく、証拠資料、証言を通じて、より真実に近い当日の出来事を知りたいと思った。

そしていま、重たい仕事がいくつか片付き、ようやく私は伊藤氏による訴状と山口氏からの反訴状をはじめ、裁判資料を読み始めたのだった。

結果はどうだったか──。

驚くべきものだった。

性交はあった――が、強姦はなかった

結論を先に言おう。

2人の間に性交があったことは両氏とも認めている。その成行きがどうだったかは密室のことで、判定のしようはない。

が、何がなかったかは断言できる。

伊藤詩織氏が主張する山口氏による午前5時過ぎからの強姦、数々の暴行は、明確な根拠を以てなかったと結論できる。

伊藤氏が主張するデートレイプドラッグ(以下、DRD)を山口氏が盛るということ、これも明確な根拠を以てなかったと結論できる。

なぜそう言えるのか。

早速、検証に入ろう。

2人はニューヨークで平成25年12月11日に出会った。邦人向けのバーで、ホステスとして山口氏に接客したのが伊藤氏だった。伊藤氏がジャーナリスト志望だったので、山口氏は翌日、TBSニューヨーク支局長を紹介し、局の見学の希望にも応じた。両者の交流はここで1度途絶える。

翌平成26年8月、伊藤氏がTBSのインターンを志望するメールを送り、山口氏が尽力して日本テレビに採用された。半年後の平成27年3月、東京に戻っていた伊藤氏は、再び山口氏に就活メールを出す。

ワシントンで仕事がないか、山口氏が東京に戻った時はぜひ会いたいとのメールだ。山口氏はちょうど東京に戻る予定があり、両者は恵比寿で晩飯を食べることになった。

平成27年4月3日のことである。

山口氏の実家は恵比寿にあり、この日、氏は父親の代から40年間行きつけのもつ焼き屋「とよかつ」で伊藤氏を待った。

一方、伊藤氏はこの日、ロイターのバイトで靖國神社の奉納相撲の取材をしており、ロイター社に機材を置きに戻ったと思われる18時41分に、山口氏宛に「今仕事終わりました!」とメールしている。

ところが、伊藤氏が先日の公判で証言したところによると、氏は「とよかつ」に直行せず、原宿の自宅に1度戻っている。砂埃を浴びたので着替えるためだったという。

25歳のフリーターが、大手マスコミのワシントン支局長に仕事の相談にゆくのに、相手を待たせてまで自宅に着替えに戻るのは自然な行動とは言えまい。

取材者として、現場仕事を終えて即刻駆け付けるほうが仕事のPRになるだろう。仮に伊藤氏が男性だったとしたら、着替えに戻るだろうか?

デートレイプドラッグで昏睡状態に?

山口氏と会った時の伊藤氏の装いは、関係者の証言によれば、ベージュのコート、白いカーディガン、黒いブラウス、キャミソールで、下着は濃紺地、胸元が白い花柄にデコレートされた、胸を寄せてあげるタイプのブラジャーと、同じく濃紺のTバックのヴィクトリアズ・シークレットのパンティだという。

当日どこまで着替えたのかはわからないが、外形はシンプルでスタイリッシュ、下着はかなり派手めというところであろうか。

いずれにせよ、自宅で着替えたあと、伊藤氏は「とよかつ」に到着した。

「とよかつ」は大衆串居酒屋であり、厨房を囲むカウンター20席ほどの店だ。当日の写真では、伊藤氏は朗らかに楽しんでいるように見える。伊藤氏自身はこの店での酒量をワイン1杯と主張しているが、店側は、伊藤氏は生ビール2杯、しそサワー1杯、ワインをグラスで少なくとも数杯飲んでいたと証言している。滞在時間は30分~40分、相当なハイペースだ。

伊藤氏は、仕事の話もビザの話も出なかったと主張しているが、店主は伊藤氏がビザの話をしていたことを記憶している。あまりに執拗な自己PRぶりが強く印象に残ったためだ。山口氏はあまり会話が成立しない伊藤氏を差し置いて、左隣の美容師の相客と話していた。その間に伊藤氏は、自らワインを手酌で飲み干し続けたというのが証言内容だ。

2軒目の「鮨の喜一」も山口氏がその頃存命中だった父君、友人と通う行きつけで、カウンター12席ほどの小さな店だ。伊藤氏は訴状で、「原告(伊藤氏)の記憶では2人で日本酒を2合ほど飲んだだけだったが、原告が2度目のトイレに行った際に、頭がくらくらとし、蓋をした便器にそのまま腰掛け、給水タンクに頭をもたせかけて休んだきり、その後記憶がなくなってしまった」と主張している。

だから自分は山口氏にDRDを盛られ、昏睡状態のところを犯されたのだ、というのが彼女の主張の第1の柱であった。

昏睡状態ではなく、泥酔状態

ところが店主の遠藤氏によれば、山口氏、伊藤氏の酒量は合わせて1升ほど、このうち伊藤氏は自ら冷酒を何度もお代わりして手酌で飲んでいたという。情報を総合すると伊藤氏の酒量は都合6から7合となる。

遠藤氏によれば、伊藤氏は酔ってハイヒールを脱ぎ、裸足で店内を歩き回り、他の客の席に割り込み陽気に話し込んでいた。店の客筋上、こんな大酒・泥酔する女性客は珍しく、印象に強く残ったという。その間、山口氏は偶々隣席にいた同店常連のタレント、さかなクンと話し込んでいた。

伊藤氏がトイレに入ったまま15分ほど出てこないので店員が開けたところ、氏はトイレから崩れ落ち、不自然な格好で寝ていた。ところが店員に介抱されて席に戻った伊藤氏は、再び日本酒を自ら注文して、手酌で飲み始めたのである。

DRDは女性の意識を失わせて性行為を行う目的で作られた、準強姦犯罪のための薬物である。

トイレで寝ていた伊藤氏は席に戻り自ら酒を注文しているのだから、DRDによる昏睡とは違う。記憶をなくしたという彼女の主張は本当かもしれない。だが、それは自ら大量に飲酒した結果に過ぎず、山口氏の意図によるものではない。

どちらの店も明るく狭い。カウンターから客の様子は一目瞭然だ。山口氏がDRDを伊藤氏の飲み物に入れる場合、店主夫妻、従業員、氏の手元が見える相客全てが誰も見ていない瞬間を狙って事をなさねばならない。至難の業だ。

しかも、ドラッグを服用させれば昏睡状態に陥る。全員が、突如、伊藤氏が昏睡状態に陥った証言者となる。

以上、酒をほとんど飲んでいないのに寿司屋のトイレ内で意識を失った、だから山口氏にDRDを盛られたとの伊藤氏の主張は、信憑性が全くないと言わざるを得ない。

泥酔した伊藤詩織をホテルに……

外国特派員協会での記者会見

では、なぜ伊藤氏は証人を揃えればすぐにばれる無理な嘘を執拗につくのか。

仕事の世話をしてもらおうという男性との初めての会食で、自ら進んで大量に酒を煽り、陽気に振る舞っていたとなれば、その後の出来事は明確な犯跡がない限り、当事者間で解決すべき痴話に過ぎなくなる。

国連でこの実態を正直に語ったうえで性被害を訴えれば、笑い者になるどころか、逆に厳しく糾弾されるだろう。進んで自ら大酒したことを認めたら、性被害者として打って出る根本が崩れてしまう。だから証人がいくらいようと、伊藤氏は飲酒を認めないのではあるまいか。

このあと、11時過ぎ、2人は店を出る。山口氏は投宿中だった白金台のシェラトン都ホテルの自室に、泥酔した伊藤氏を連れ帰った。

監視カメラの映像は、伊藤氏の着衣同様なぜか閲覧制限がかかっているが、ネットに流出した画像を入手・保存し、繰り返し見たところ、この時の伊藤氏は昏睡状態ではない。泥酔状態だ。

伊藤氏が執拗に主張するのとは異なり、山口氏は伊藤氏をタクシーから引きずり出していないし、その後も引きずってはいない。泥酔で足元のおぼつかない伊藤氏を、横で支えながら歩いている。

男性が、泥酔した美しい女性をホテルの自室に連れ帰ったのは、介抱の必要があったからか、性的な下心があったからか──。これは議論しようがない。

逆に、自ら進んで泥酔状態に陥った女性が、その後、生じたことについて、あとになって合意がなかったと主張しても、男性側が合意を主張すれば言い分は相殺されざるを得ない。

2人で勝手に喧嘩でもしておけばよいだけの話である。

だが伊藤氏の主張は、2人の痴話喧嘩に任せておけない深刻なものだ。

伊藤氏は朝5時頃に目覚めた時、山口氏に姦淫されており、その後、暴行を受けたと主張しているのだ。

「痛い、痛い」証言は食い違うが……

当夜から2年半近くあとに出された民事告訴の訴状から、彼女の主張する状況を引いておく。

1 原告が、痛みで目が覚めると被告からの性的被害に遭っている最中であった。(略)被告の行為に気づいた原告が「痛い、痛い」と何度も訴えたが、被告は行為を止めようとしなかった。

原告が、「トイレに行きたい」と言うと、被告はようやく体を起こした。その際に、被告が避妊具をつけていないことがわかった。

2 原告は、バスルームに駆け込んで鍵をかけた。バスルーム内には、ヒゲそりなどの男性もののアメニティがあり、タオルの上に並べられていたことから、その場所が、被告の滞在しているホテル内であることがわかった。

原告が鏡で自分の裸の体を見ると、乳首から出血しており、体がところどころ、傷ついていることが確認できた。原告は被告から服を取り戻して、直ちに部屋から逃げる必要があると考えた。

3 原告が、バスルームのドアを開けると、すぐ前に被告が立っており、そのまま肩をつかまれ、再びベッドにひきずり倒された。そして、抵抗できないほどの強い力で体と頭をベッドに押さえつけられ、再び性的暴行を加えられそうになった。

被告が原告の顔や頭と体を押さえつけ、自分の体で覆いかぶさった状態であったため、原告は息ができなくなり窒息しそうになった。原告が必死で自らの体を硬くし、体を丸め、足を閉じて必死に抵抗を続けたところ、頭を押さえつけていた被告の手が離れ、ようやく呼吸ができるようになった。

原告が、「痛い。止めて下さい」と言うと、被告は、「痛いの?」などと言いながら、無理やり膝をこじ開けようとしてきたが、原告は体を硬くして精一杯抵抗を続けた。

これが事実なら、凄まじい非道ぶりである。

だが山口氏は、次のように証言している。部屋に入った彼女が再三嘔吐をし、彼女自身の服や山口氏の所持品を吐瀉物で汚したために、彼女の衣服を脱がせ、ベッドに寝かせ、そのうえで彼女の汚れた衣服を水洗いし、バスルームに干して、自身が記者として配信する記事を執筆する仕事に掛かった。

伊藤氏は午前2時前後に起き出して、原稿を終えて伊藤氏とは別のベッドで仮眠していた山口氏に、再三詫びながら性的な誘惑をし、性行為に及んだという。

真相がどうだったかは、2人が一致した見解を述べる時が来るまで「ブラックボックス」のままだ。

が、何があり得ないことかは言うことができる。

使われなかったバスルームの電話機

山口氏の主張が真実であることは証明され得ないが、伊藤氏の主張が全くあり得ないものだということに限っては断言できるのである。

伊藤氏によれば、5時過ぎに強姦に気付いた彼女はバスルームに逃げ込んだという。彼女は「ヒゲそりなどの男性もののアメニティが、広げられた小さなタオルの上に、いやに整然と並んでいた」と書いている。

ところが、まさにそのすぐ上にはフロントに通じる電話機が壁にかかっているのである。

彼女は都合の悪いことがあると、全て混乱していたから覚えていないという。だが、アメニティの並び方に気付くほど意識がしっかりしていた彼女が、バスルームの目立つ場所にある電話機に気付かないことがあり得るだろうか。

ドアの外には“凶悪犯罪者”がいるのである。伊藤氏の証言では、山口氏はドアの鍵をこじ開けようとはしていない。ならば、普通、鍵をかけて籠城して動かないというのが最初の選択ではないだろうか。

外にいるのが出刃包丁を持った傷害犯人だと仮定すればいい。誰がそこに再びのこのこ出てゆくだろう。

最初は動転してどう対処するかに迷っても、少し冷静になれば事態が理解され、室内の様子も分かってくる。その時、必ず気付くのが電話機であるに違いない。

そこで彼女がフロントに通報すれば事はそれで終わり、山口氏は現行犯逮捕されただろう。

ところが、伊藤氏はバスルームのドアを開けたというのである。

すると、そこには山口氏が待ち構えており、彼女を引きずり出して再びベッドに押し倒し、「抵抗できない程の力」で彼女を抑えつけ、膝を強引にこじ開けて再び性交に挑もうとした。

伊藤氏は必死で抵抗し、その結果、「凄い衝撃を受けて、膝がずれている。手術は困難だし完治まで長い時間がかかる」と医師に言われるほど膝を痛めたという。

性獣と化した男が「抵抗できない程の力」で膝をこじ開けようとしていたが、伊藤氏はそれを防ぐことができるほど気丈だったということになる。逆に言えば伊藤氏は、この時、心神耗弱状態ではなかった。

なぜ、助けを求めなかったのか

では、ベッド上でそこまで超人的な抵抗力のあった伊藤氏が、なぜバスルームからベッドに引きずられる時は無抵抗だったのか。

バスルームは入口ドアのすぐ横であり、道幅120㎝だ。以下、私独自に実地検証し、動画も撮ったが、ドアから至近のこの狭い空間で抵抗すればドアにも当たり、壁にも当たる物凄い音が響く。隣室の客は騒音でたたき起こされなかったのか。

心神耗弱状態なら声が出なかったろうが、伊藤氏は充分な抵抗能力があった。

助けを求めて叫べば、ドアの外に筒抜けだ。実験では、バスルームを出た場所でやや大きめの声を出しただけで廊下の騒音値は55デシベルと、通常会話レベルに達する。助けを求めて絶叫すれば、廊下中に響き渡るだろう。

強姦魔の手をすり抜けてバスルームに逃げ込む判断力があり、アメニティの様子に気付くだけの注意力があるのに、電話機も使わずに再びドアを開け、ベッド上で凶悪犯の暴力を撃退するほどの気力を保っているのに、叫びも上げず物音も声も立てずに、ベッドまで引きずられた。

あまりにもちぐはぐではないか。

一方、伊藤氏の証言を山口氏側に立って考えるとどうか。

山口氏は当時、同ホテルを頻繁に使っており、熟知している。同ホテルは早朝に新聞を各部屋に配布する。しかも、氏の投宿していた233号室は、中央エレベーターから2部屋目のうえ、数メートルの至近距離に朝6時半から営業を開始するラウンジがあり、従業員室もある。5時台には従業員の行き来が始まる。入口ドア近くでの叫びや暴行の物音は外に筒抜けだ。

しかも、伊藤氏が逃げ込んだと主張するバスルームには電話機がある。

もし山口氏が悪質な漁色家だったとしても、こんな悪条件が重なるなかで、全裸で待ち構えて再びベッドに引きずり込み、暴力を振るって強姦するなどという自殺行為に走る必要がどこにあるのか。

(つづく)

性被害者を侮辱した「伊藤詩織」の正体 【後編】

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小川榮太郎

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