明日は我が身……新型コロナウィルスで大打撃のヨーロッパメーカーの今

フォルクスワーゲン ID.3 ツヴィッカウ工場にて

初の感染者発覚から2ヶ月足らずでにヨーロッパ全域に拡大

新型コロナウイルスの感染者がヨーロッパで最初に見つかったのは2020年1月25日で、場所はフランスのイル=ド=フランス地域圏だが、同27日にドイツ、29日にフィンランド……と、瞬く間に主要国で感染者が確認され、3月初旬にはヨーロッパ全土に拡大。特にイタリアとスペインは医療崩壊を招き、悲惨な状況になっている。

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世界でモーターショーも中止が相次ぐ

自動車業界も大きな打撃を受けている。2月25日に最初の感染者が見つかったスイスは、同28日に「1000人以上が集まるイベントを禁止する」と発表。これにより3月に開催予定だったジュネーブ・モーターショーが中止となった。またフランスも3月に入ってから感染が急拡大し、9月に予定されていたパリ・モーターショーの中止が決定している。

今後のモーターショーやモータースポーツはどうなる?▼

モータースポーツも軒並み延期だが、開催されるかは未知数

F1 オーストラリアGP

モータースポーツにも影響が出ている。F1やDTMなどは開幕の目処が立たず、5月に予定されていたニュルブルクリンク24時間レースは9月に、6月に決勝レースが行われるはずだったル・マン24時間レースも9月に延期となった。しかし、延期された日程でも実施されるとは限らない、というのが実情だ。

3月から自動車業界もかなり厳しい状態に

ニッサン・リテール・コンセプトを導入した販売店 中国 重慶

3月に入ると各国が行動制限を実施し、生活に不可欠な業種を除く店舗の営業を禁止し始めた。もちろん自動車ディーラーも営業できなくなり、販売がストップしている。

フォルクスワーゲン ID.3 ツヴィッカウ工場にて

自動車メーカーも、すでに中国市場における需要低迷で生産を減らしていたが、地元ヨーロッパで販売がストップ。中国やイタリアからの部品供給もおぼつかなくなっていた。

また、従業員の健康を守るためと資金流動性を確保すべく、製造ラインを止める決断を下した。

自動車メーカー&サプライヤーも工場停止

ボルボ エネルギー消費量と排ガス削減のため塗装施設を刷新 スウェーデン・トースランダにある製造工場の塗装施設

3月16日にフェラーリとFCA、グループPSA、トヨタ(ポルトガル工場)の工場が停止したのを皮切りに、翌17日にダイムラーとVWグループ、フォード、ルノー・日産が、18日にBMWグループとトヨタ(フランス工場)が、20日にジャガー・ランドローバーとベントレー、ボルボが、23日にヒュンダイとキアが、24日にはアストン・マーティンが工場を閉め、ボッシュやピレリといったサプライヤーも、生産停止または生産調整に入っている。

1000万人規模の失業者が出る可能性も

フォルクスワーゲン ID.3 ツヴィッカウ工場にて
スバル 群馬工場 イメージ

ACEA(欧州自動車工業界)の試算によれば、生産停止による自動車生産と雇用への影響は、4月6日までにヨーロッパ全体で生産概数が146万5415台減少し、113万8536人の雇用に影響が出ているという。

中でも大きな影響を受けているのがヨーロッパ最大の自動車大国ドイツで、この20日間ほどで45万6977台減少し、従業員56万8518人に影響が出た模様だ。

ただし、これは自動車メーカーだけの話で、ヨーロッパの自動車産業全体では、もともと1380万人の雇用を生んでいると言われており、ロジスティクスなどを含めるとさらに影響は拡大する。

完全な復活まではかなりの日数が必要

マツダ過去に行われた船積みの様子

当初は各メーカーとも、2週間〜1カ月程度の生産停止を予定していたが、現時点で生産再開の目処は立っていないというのが現状だ。

一部の国では感染者増加の勢いが、ここへ来てピークを越えたようだが、上手く押さえ込んでいるドイツでさえも、制限措置解除が予定されている4月19日に向けて、マスクの着用義務化や集会の制限などの措置を取る方針で、段階的に制限を緩めていき、すぐに以前の状態に戻すわけではない。

また市民の多くが経済的に打撃を受けているだけに、自動車市場が復活するまでには相当な時間を要するだろう。

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自動車業界の再編が急加速!? あのメーカーが中国参加の可能性も

中国EV現地試乗と広州モーターショー
中国EV現地試乗と広州モーターショー

ここから考えられるのは、自動車業界の再編だ。少なくとも2020年は、どのメーカーも大幅な利益減少に陥ることは間違いなく、資金流動性が少ないメーカーは、ブランドの切り売りをする所も出てくる可能性がある。

またヨーロッパより一足早く復活する可能性がある中国メーカーによる買収もありそうだ。場合によっては破綻するメーカーも出てくるかもしれない。

EV普及も先送りになる可能性も……

トヨタ MIRAI Concept[東京モーターショー2019 FUTURE EXPO 出展車(参考出品)]
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また、EVの普及も滞る可能性が高い。EV普及には政府や自治体の補助金やメーカー自身の資金による、販売インセンティブや充電インフラの拡充が現状では欠かせないが、各国政府は国民に対する緊急支援で天文学的な予算を使い、メーカーも体力を奪われてしまうと、それらに回すお金がなくなってしまう。

さらに今後は、ドイツやフランスなど裕福な国が、同じEU加盟国ですでに財政難に陥っているイタリアやスペインを援助する必要も出てくる。

ヨーロッパの自動車メーカーは、かつてないほど前途多難といっていいだろう。

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【筆者:竹花 寿実】

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