指名打者として活躍の場を広げた殿堂入り選手たち

1973年にアメリカン・リーグで指名打者制が導入され、同年4月6日(現地時間)のレッドソックス戦でヤンキースのロン・ブロムバーグが指名打者として打席に入った初めての選手となった。まだ通算出場試合数の70%以上に指名打者として出場した殿堂入り選手は現れていないものの、近いうちにデービッド・オルティスがその第1号となる可能性がある。また、指名打者制のおかげで活躍の場を広げた殿堂入り選手も多い。メジャーリーグ公式サイトでは、トーマス・ハリガンが7人の殿堂入り選手をピックアップして紹介している。

近年のメジャーリーグでは、指名打者のポジションは守備に難を抱える強打者に与えられるのみならず、主力選手に休養を与えたり、特定ポジションの人員余剰を解消したりするために使われることが多い。とはいえ、やはり守備に難を抱える、あるいは年齢とともに守備力が落ちてきた強打者に与えられるというイメージが強いポジションである。

通算465本塁打のデーブ・ウィンフィールドは、39歳のシーズンとなった1991年までレギュラーの外野手としてプレイしたものの、キャリアの最終4年は指名打者としての出場がほとんどだった。1992年は打率.290、26本塁打、108打点、OPS.867をマークしてシルバースラッガー賞を受賞し、ブルージェイズのワールドシリーズ制覇に貢献。ツインズへ移籍した翌1993年に通算3000安打を達成した。

通算3255安打、504本塁打を誇るスイッチヒッターのエディ・マレーも、ナショナル・リーグのメッツからア・リーグのインディアンスへ移籍した1994年以降は指名打者としての出場が大半を占めた。1995年には打率.323、21本塁打、82打点、OPS.891の好成績をマーク。ちなみに、マレーはオリオールズでデビューした1977年も主に指名打者として起用され、打率.283、27本塁打、88打点、OPS.803を記録して新人王を受賞している。

通算3319安打のポール・モリターも、指名打者制によって寿命を延ばした選手の1人である。メジャー最初の13シーズンで1870安打、打率.299、362盗塁を記録したモリターだが、故障により出場120試合未満のシーズンが6度もあった。34歳のシーズンとなった1991年から指名打者に本格転向し、現役引退までの8シーズンで平均143試合に出場。この8シーズンで1449安打、打率.316、142盗塁をマークした。

通算384本塁打のハロルド・ベインズは、30歳を迎える前から指名打者としての出場が多くなった。通算出場試合の58.1%に指名打者として出場し、2866安打のうち1690安打、384本塁打のうち236本塁打、1628打点のうち981打点を指名打者として記録。現役最後の4年間は1試合も守備に就かなかった。

殿堂入り選手のうち、指名打者としての出場割合が最も高い(68.3%)のがエドガー・マルティネスだ。31歳までは三塁手としてプレイしたものの、非常に故障が多く、32歳のシーズンとなった1995年から指名打者に本格転向。この年は打率.356(首位打者)、29本塁打、113打点、OPS1.107の大活躍を見せ、5年後の2000年には自己最多の37本塁打、145打点を叩き出して打点王のタイトルを手にした。指名打者をポジションの1つとして確立した存在と言われており、最優秀指名打者賞にはマルティネスの名前が冠せられている。

通算出場試合の過半数を指名打者としてプレイした殿堂入り選手は3人いるが、ベインズ、マルティネスに次ぐ残りの1人がフランク・トーマスだ。1993年から2年連続でMVPに輝くなど、球界を代表するスター一塁手だったトーマスは、首位打者のタイトルを手にした翌年の1998年から指名打者にシフト。2000年に43本塁打、2003年に42本塁打、2006年に39本塁打と晩年まで破壊力は衰えず、40歳まで現役を続け、通算521本塁打を記録した。

史上8人目の通算600本塁打を達成したジム・トーメイも、ナ・リーグのフィリーズからア・リーグのホワイトソックスへ移籍した2006年以降はほとんど守備に就かなかった。2006年は打率.288、42本塁打、109打点、OPS1.014の好成績を残し、39歳のシーズンとなった2010年にはツインズでわずか276打数ながら25本塁打を放ち、OPS1.039をマーク。通算612本塁打は歴代8位の大記録である。

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