緊急事態宣言を受けてスクール休講しオンライン授業へ!それでも“マンガ”を描く楽しさは伝えられる! ”マンガ・イラスト”を教える「堀江アートクール」(大阪市)が、スクールを休講、オンライン授業を始めた狙いとは?

緊急事態宣言を受けて休講し、オンライン授業へ。

下は6歳から、上は70歳代まで、幅広い年齢層の生徒さん150名以上が通う「堀江アートスクール」。絵画教室ではなく、「マンガ・イラスト」を教えるスクールとして2016年に開校し、2020年夏で4年目を迎える。

新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言を受けて、「堀江アートスクール」を運営する「株式会社コミックエージェント」の伊藤貴志社長は、スクールの休講を決断した。 その一方で、生徒さんたちの不安や心配を少しでも解消しようと、オンライン授業をスタートさせる。まだまだ成長過程にあるスクールの運営としては、やはり痛手は大きい。ただ、オンライン授業をうまく活用することで、さらに学びやすく、相談しやすい環境づくりを整えるため、将来に向けてのよい機会にできる可能性があると、ポジティブにとらえている。

「堀江アートスクール」のある大阪は、緊急事態宣言が発令された全国7都府県の一つ。ただ正式に休業要請が出ているわけではなく、いったんは「外出自粛」の効果を見極めた上で、対応が検討されることになっている。
 伊藤貴志社長は、この段階でまずは休講を決めた。その背景には、生徒さんのリスクをできるだけ守りたいとの想いがあった。

「実は少し前から休講するかをすでに考えていました。ただ大人だけでなく、子ども達に関しては特に学校へも行けないので、ストレスが溜まらないかと、心身的な健康が心配でした。授業に来たいという生徒さんも多数いらっしゃったので、

スクールに来ることができる方には思いっきり授業を楽しんでもらいたいという思いで、これまでは授業を続けていました。ただ、今回の緊急事態宣言を受け、まずは二週間の外出を控えればリスクも減り、収束もそれだけ早くなるだろうと府知事の会見であったので、一旦は二週間の休講を決めました。」

これまでも
▼机や多数の人が触る場所のアルコール消毒
▼除菌ハンドソープの設置
▼うがい薬の設置
▼講師陣のマスク着用
▼常に換気する
▼生徒さんへのマスクの着用の要請
など、考えられるあらゆる対策をとって授業を続けてきた。
 
日々、生徒さんたちと接する中で、スクールでマンガを学ぶことがストレスの軽減につながるなど、少なからず役に立っていることも感じていた。それだけにただ休講するのではなく、「学びの機会」を提供し続けたいと、同時並行で、オンライン授業の準備も進めてきた。「自宅にこもらないといけないだけですごくストレスがかかります。さまざまな心配事が増えたり、不安に感じることがどんどん出てくると思います。生徒さんたちの不安や心配が少しでも解消されたらと、オンライン授業を開催することを決めました。」
実際に塾長として、授業内容を構築していくのは、伊藤貴志社長の妻・伊藤曦琳(いとう しーりん)の役目。オンライン授業(リモート講義)に切り替えるための準備に奔走した。
まず大切だったことは、生徒さんへその意図を伝えた上で、しっかりと理解を得ることだった。

 またパソコンやタブレットなどの環境整備も重要なポイント。スクール側、生徒さん側の双方で条件が整わなければオンライン授業は成立しないため、慎重な確認が必要だった。 さらに授業料の仕組みなどについても検討を重ねた。

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生徒さんからは「すごく授業に行きたかったからとても残念」という声があるものの、「LINEで添削やアドバイスがほしい」など、反応は概ねポジティブで「先生方も気をつけてください」と、スタッフを案じる声も多かったという。**

**またこれまで共にスクール運営を支えてきたスタッフとの相互理解もポイントだった。オンライン授業の対応法や講師代についての理解も求め結果的にスムーズに移行できているという。

マンガを教える立場からはオンライン授業であっても、講師と生徒さんがつながることで安心感が生まれると期待している。**

「まず、オンライン授業がスムーズにスタートできれば、家にいても先生とコミュニケーションが取れて、そして絵も描けるので、少しでも生徒さんのストレス軽減になるのではと思います。また、直接会えなくても、聞きたいことがあれば顔を見て直接聞けますし、スタッフの声を、参加した生徒さん皆が聞くことができます。普段なら、個別の質問には、その生徒さんだけに答えていた場面がありましたが、オンラインだと、他の生徒さんからの質問の答えもしっかりと聞くことができて、学びの幅が広がるかも知れません。」

一方で、オンライン授業ならではの難しい面も想定しているという。

「まず、皆に聞かれることになるので、個別に相談したいことが聞きづらいかも知れません。また、生徒さんや先生が描く手元がすぐに見ることが難しく、また、はっきりと見えない可能性もありますので、具体的な描き方を指導する際のコミュニケーションは少し苦労するかも知れません」

今回、オンライン・オフラインなど、教える手法の問題を深く考えたことでマンガを教える立場、マンガの制作に携わる立場から、多くのことに気づかされたという。

「やはり人と人との関わりの大切さを再認識するいい機会になっているのではないかと思います。そういう意味では、スクールが大事にしてきたコミュニケーションや生徒さん一人一人の個性を大事にすることはオンライン、オフラインに関わらず、これからも必要不可欠だと確信します。マンガを習いに来てくれる生徒さんや、ともに頑張ってくれる講師たち一人一人を大事にしたい気持ちもより強まっていますし、単純に技術を教えるだけではない当スクールの良さをさらに深めていきたいと思いました。

 また、遠方の方や在宅で学びたい方がさらに学びやすく、そして相談しやすい環境づくりを整えるためのいいきっかけになったと思います。」

マンガを教えるスクールの存在そのものが生徒さんの笑顔を守ることにつながっているのかも知れない。コミックエージェントの伊藤貴志社長はこれまで培ってきたスクール運営の意義を改めて実感している。

「絵を描くこと自体は、在宅でも楽しめることだと思います。生徒さんにとってはストレス発散になったり、より集中力を高めるいい機会にもなると思います。先が読めない不安な状況のなか、ニュースでは、ストレスによる家庭内暴力なども取り沙汰されています。スクールとしてオフラインでのレッスンはお休みしますが、自宅で絵を描くことで気分転換をしていただけたらと思います。オンライン授業を通じて、そんな気分転換のお手伝いができるだけでも、スクールの運営を続けてきた意義があるような気がします。今、私たちができることは“マンガを描く機会をなくさないこと”。生徒さんの笑顔を守りたいですね」

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