1999年ア・リーグMVPの再投票 MLB公式サイトが特集

日本時間4月10日、メジャーリーグ公式サイトのマーク・フェインサンドは、1999年のアメリカン・リーグのMVP投票を現在の価値基準でやり直す特集記事を公開した。実際の投票では「パッジ」の愛称で親しまれた名捕手イバン・ロドリゲス(レンジャーズ)が投手三冠を達成したペドロ・マルティネス(レッドソックス)をわずか13ポイント差でかわしてMVPを受賞。ただし、1位票を最も多く獲得したのはマルティネスだった。

この年のマルティネスは、213回1/3を投げて四球を37個しか与えず、23勝4敗、防御率2.07、313奪三振という驚異的な好成績をマーク。当然のように満票でサイ・ヤング賞を受賞したが、MVP投票では2人の記者がマルティネスの名前を投票用紙に記入せず、打率.332、35本塁打、113打点、25盗塁、OPS.914をマークしたロドリゲスがMVPに選出された。

マルティネスに投票しなかった2人のうち1人は投手よりも野手を優先したことを明言しており、もう1人はマルティネスの同僚であるノマー・ガルシアパーラをマルティネスより高く評価した(ガルシアパーラのWARはロドリゲスを上回っていたが、マルティネスより低かった)。実際の投票結果のトップ5は以下の通り。

1位 イバン・ロドリゲス(レンジャーズ)
2位 ペドロ・マルティネス(レッドソックス)
3位タイ ロベルト・アロマー(インディアンス)
3位タイ マニー・ラミレス(インディアンス)
5位 ラファエル・パルメイロ(レンジャーズ)

そして、今回の企画にあたってメジャーリーグ公式サイトのライター16人が現在の価値基準で改めて投票した結果が以下の通りである。

1位 ペドロ・マルティネス(レッドソックス)
2位 マニー・ラミレス(インディアンス)
3位 デレク・ジーター(ヤンキース)
4位 イバン・ロドリゲス(レンジャーズ)
5位 ロベルト・アロマー(インディアンス)

1999年は、いわゆる「ステロイド時代」で打高投低の傾向があり、実際のMVP投票で15位以内にランクインした野手13人全員が100打点とOPS.900のラインをクリア。13人中9人が30本塁打以上を記録していた。そのような時代にマルティネスは支配的なピッチングを見せ、23勝、防御率2.07、313奪三振はいずれも断トツの数字。ちなみに各部門のリーグ2位の数字は、18勝、防御率3.44、200奪三振だった。

ロドリゲスの打撃成績は確かに素晴らしかったが、打率はリーグ7位、本塁打は同11位、打点は同14位、OPSは同19位に過ぎない。盗塁阻止率54.7%を記録するなど、捕手としても見事な働きを見せたが、マルティネスの支配的なピッチングを上回るほどのパフォーマンスであったかどうかは意見の分かれるところだ。

再投票の結果、16人分の1位票はマルティネス13、ラミレス2、アロマー1と3人に分かれた。ラミレスは147試合で165打点を叩き出し、アロマーも打率.323、24本塁打、120打点、37盗塁、OPS.955という素晴らしい活躍を見せた。また、打率.349をマークしたジーターも実際の6位から再投票では3位へと順位を上げている。

投手にはサイ・ヤング賞があるため、MVP受賞のハードルは野手よりも高く設定されていると言われる。実際、1986年にロジャー・クレメンス(レッドソックス)がMVPを受賞して以降、MVPに選出された投手は2011年のジャスティン・バーランダー(タイガース)と2014年のクレイトン・カーショウ(ドジャース)の2人だけである。

1999年のマルティネスが見せた支配的なピッチングは、MVP受賞に相応しいものであったと言えるだろう。それは16人のライターによる再投票の結果が物語っている。しかし、ロドリゲスが捕手として攻守両面で見せたパフォーマンスも素晴らしく、必ずしも当時の記者たちによる投票結果が間違っていたとは言えないのではないだろうか。

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