新型コロナ「緊急事態宣言」、詐欺が急増するのが確実な理由

今、新型コロナウィルスに便乗する詐欺が急増しています。7都府県への緊急事態宣言により、さらに新型コロナ詐欺は本番を迎えそうです。新型コロナの蔓延を防ぐために、「3密」(密閉、密集、密接)を避けることが叫ばれていますが、詐欺被害に遭わないためには「3近」(電話・訪問・ネット)の3つの方向からの“近づき”に注意をしなければなりません。


新型コロナウィルス関連の詐欺が急増中

「電話」から近づく詐欺被害は深刻で、令和元年の特殊詐欺の被害が301億5千万円だったことをみてもわかります。今は、家を「訪問」して、現金やキャッシュカードを取りにくる手口も増えています。「ネット」においては、メールを通じて「マスク」や「消毒液」などが買えるという偽サイトに誘導して、商品は送らずにお金だけを騙し取ったり、クレジットカード情報を抜き取るなどの被害も後を絶ちません。

すでに、新型コロナウィルスに関する相談が、国民生活センターには1万件以上寄せられており、今後は、より電話による詐欺が増えていくことでしょう。

今月、高齢男性のもとに息子を騙った人物から「会社が倒産したので、お金を貸してほしい」という電話がかかり、家を訪問してきた弁護士を名乗る男に800万円を渡してしまっています。

また、高齢女性宅には偽の息子から電話あり、「新型コロナの検査をしたけど、陰性だったよ」と安心させた後で「カバンをなくしてしまい、その中に小切手が入っていて、お金の工面をしなければならない」と慌てさせられて、家にやってきた男に700万円を渡しています。こうした新型コロナ・オレオレ詐欺が猛威を振るっています。

不安を煽る「調味料」

新型コロナ・還付金詐欺もあります。
女性のもとに偽の役所の職員から「お金が戻る」という電話があり、その際「市役所はコロナ対策で忙しいので」との理由をつけてATMへ誘導させ、タッチパネルを操作させながら100万円を振り込ませています。

これらの被害事例からわかるのは、詐欺師たちは「新型コロナウィルス」という言葉を詐欺の話に振りかけてきていることです。多くの人に感染症への不安が渦巻いているなか「新型コロナ」のフレーズを入れることで、話に説得力が生まれて、信ぴょう性が増してくるからにほかなりません。ここに詐欺師たちの巧妙な騙し言葉の使い方が見えてきます。まさに「新型コロナ」は、塩や醤油といった、詐欺の料理に欠かせない調味料となってきているのです。

緊急事態宣言の余波

さらに詐欺への拍車がかかる宣言も出されました。それは、新型コロナウィルスの蔓延への「緊急事態宣言」です。これにより人々はますます外出を控えるでしょう。すると詐欺の電話を取るリスクも高まります。

それにお店へ向かう客足もさらに遠のき、たくさんのお店が閉店することを余儀なくされるに違いありません。結果、職を失う人や倒産する会社も出てきます。すでに、その煽りを受けて、経済的に困窮する人たちも増えてきています。

となると、息子から電話がかかってきて「コロナの影響で仕事がなくて、お金を借りたい」といってきても、不思議ではない状況ではないでしょうか。正直なところ、私も緊急宣言の前後から、急速に講演や番組収録が取りやめになり、この状況が続けば、いつお金に困るかわかりません。もしかすると自分だって生活が苦しくなり親に「少し、お金借りれないかな?」と電話をしてしまう可能性もゼロではないでしょう。

また感染が急増する首都圏から地方への移動自粛も叫ばれており、実家にも戻れない人が多くいます。そんな状況ですから、親に「体調は大丈夫?」と電話を掛けやすいうえに、「お金を借りれないかな?」という言葉も言いやすい。まさに、詐欺をしやすい状況が社会に生まれているのです。

今後は、給付金制度も本格的スタートするでしょうから、役所を騙って「あなたは新型コロナ給付金の対象になっていますので、急いで手続きをしてください」などという詐欺電話も当然、かかってくると予想されます。

安倍首相の緊急事態宣言以降、詐欺は加速していくものと思われます。この宣言は単に新型コロナウィルスに対するものだけではなく、詐欺増加への緊急事態宣言の発布ともいえるものです。これまで以上に、詐欺に対する警戒をするようにしてください。

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