伝説の人気モデル・ハンターカブ、現代の装備を満載して復活を遂げた

ひとつのブランドとして世界でもっとも生産累計台数が多いといわれているスーパーカブ。それだけに数多くのバリエーションが世界中で生まれてきましたが、ここでまた1台、素敵な仲間CT125・ハンターカブ(以下ハンターカブ)の新型モデルが仲間入りです。


もっともワイルドなスーパーカブシリーズ

1952年に登場して以来、様々な改良を加えながらも基本的なスタイルを変えることなく1億台以上を世に送り出してきた名車、スーパーカブ。あの映画「ローマの休日」で有名になったベスパとともに、世界でもっとも名を知られた2輪と言えます。

それほどの存在だけに、ベース車両のほかにも数多くのバリエーションが登場してきました。そんな中で高い人気を誇ってきたのがハンターカブです。この人気車のルーツは1968年デビューのCT50・ハンターカブです。ちなみにそれ以前にもスーパーカブをベースにしたCTシリーズやハンターのモデル名を使ったことはありましたが、ゴチャゴチャしますので説明は省きましょう。

このハンターカブの人気の理由は、未舗装路や不整地、一般的にはオフロードと呼ばれる道路での走行を優先した構造や装備品を備えたことです。ベースのスーパーカブ同様にビジネスユースでも使える上、いざとなれば悪路専用設計を武器に凸凹道や山道でも、荷物などを積んでどんどん走ることができます。この守備範囲の広さが人気の根底にあるのです。

さらにマフラーがアップしたスタイルや、レッグシールドを取り払った軽快なデザインなど、全身から独特のワイルド感を発散させたことがとても新鮮でした。これをレジャーバイクの新しいスタイルと捉えた人たちが、アウトドア派を中心に多数いました。キャンプ、フィッシング、さらに街から山まで、どこへでも気兼ねなく行ける手軽なツーリングバイクとして注目度はうなぎ登りとなっています。

ちなみにもう1台人気モデル、CC125・クロスカブとの違いはレジャーバイクとしての方向性の違いです。クロスカブは、ハンターカブほどハードな状況には走り込めませんが、スーパーカブよりはスポーティに使える、ちょうど中間にあたる感じというところでしょうか。ベースモデルをスニーカーとすれば、クロスカブはウォーキングシューズ、そして今回のハンターカブはそれなりに高機能なトレッキングシューズといったところでしょう。

基本スタイルはしっかりと抑えています

昨年の第46回東京モーターショー2019で、ハンターカブのプロトタイプが世界初公開されたのですが、その時の反響の大きさは凄いものがありました。日本はもとより、海外からの注目度は高く、ホンダブースを訪れた来場者の熱い視線は印象的でした。それはそうでしょう、人気モデルだったにもかかわらずCT125・ハンターカブというモデル名は2012年の生産中止以降、使われていませんでした。それが今回、2020年6月26日に正式販売が行われると3月20日に発表されました。つまりハンターカブ復活というわけですから、多くの人たちの期待度はさらに上がりました。

現在の状況ですが、現物を見ることもなく、かなりのバックオーダーを抱えているということです。年間の販売予定台数が8,000、希望小売価格440,000円(消費税込み)なんですが、すでにいま頼んでも納車は秋以降かも、といわれるほどです。

そんな人気も理解できます。私自身も昨年、クロスカブを軽自動車のN-VANに積み込んで、色々なロケをこなしているうちに“6輪生活”の楽しさを再確認していました。それをきっかけにリターンライダー計画を再起動させようとさえ、考えていたのです。そこに今度はハンターカブという選択肢が加わるとなれば、ツーリングのフィールドはさらに広がるわけですから、なんとも楽しい気分になったわけです。

では今度のハンターカブ、どんな魅力を持ったバイクなのでしょうか? 実は正式発表はあったものの、まだ発売になる前なので試乗の機会はありません。改めて試乗レポートは行いますが、今回は見た目中心のチェックをしてみようと思います。

特徴的なアップマフラーとエンジンガード。

まず特徴的なヒートガード付アップアマフラーは当然装備されています。さらにレッグシールドはなく、剥き出しのエンジンに、それを保護するエンジンガード装備、さらにアップハンドルといった具合に、マルチパーマスバイクらしいワイルド感と、オフロードでの実用をキッチリと両立しています。ぱっと見でも十分に魅力が伝わってきます。

新しい魅力をたっぷりと装備

さらに見ていきましょう。見た目の新しさでいえばLEDを採用した丸型のヘッドライトも特徴的です。なんともアイコニックな丸型ヘッドライトによって、フロントビューはより個性的になっています。なんとハンターカブはすべての灯火器にLEDを採用しているため、被視認性は確実に向上していいます。

丸型ヘッドライトやウインカーなど、灯火類はLEDとなっています。

次の注目点はディスクブレーキの採用でしょう。走行性能が安全になるのはもちろんですが、確実な制動力を実現することでライディングの楽しさはさらに向上します。

エンジンは空冷単気筒OHCで、排気量は124ccです。もちろん自動遠心クラッチを採用しているので、左手によるクラッチ操作は不要です。この辺はスーパーカブと同じで、市街地での頻繁なストップ&ゴーやツーリングでもストレスなく走れるので助かります。ただし、まだ実際に走らせていないのではっきりと言えないのですが、クロスカブで感じた山道などでのわずかなパワー不足は解消されているかどうかチョット気になるところ。ですが、この辺はギア比の改良などでも十分に対応できます。メーカーの発表でも、低中速域での力強さを重視した出力特性としているので、とにかく早く乗ってみたいですね。

ちなみに気になる点を上げてみましょう。ホイールベースを10mm延長し、よりしっかりと剛性感の高いフレームワークを与えたことによる走りのしっかり感はどうなったか? 次にロングストローク化されたサスペンションは凸凹路での乗り心地をどう変えたか? さらに165mmという最低地上高を確保したことでクロスカブと比較しても50mmほど上昇したシート高(800mm)によって足つき性はどう変わったか?などなど、次々に気になることができます。どんどん乗りたい欲求が膨らんできますね。


市場からの熱烈ラブコールに対してだけでなく、バイクにあまり興味のなかった人たちにとっても魅力的な選択肢としてデビューしてきたハンターカブ。開発のキーワードは「気軽に、楽しく、どこへでも」。少しでも早く新型コロナウイルス禍が終息し、なんの屈託も遠慮もすることなく、心から楽しめる日が来ることを祈ります。そしてバイクはその象徴的存在でもあるのです。

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