栗山千明のうそ偽りのない本音── 女優引退まで考えた「サイレント・ヴォイス」難役へのチャレンジ

栗山千明のうそ偽りのない本音── 女優引退まで考えた「サイレント・ヴォイス」難役へのチャレンジ

2018年10月期に好評を博したドラマ「サイレント・ヴォイス 行動心理捜査官・楯岡絵麻」(BSテレ東)が、先日3月7日に放送した「特別篇 悪魔の学問」に続き、4月11日からは待望のSeason2を世に放つ。同作の主演・栗山千明が演じるのは、被疑者がうそをつく瞬間に0.2秒だけ現れるしぐさや表情(=マイクロジェスチャー)を読み取り、真相に迫る敏腕刑事・楯岡絵麻。膨大なセリフと緊迫の取り調べ劇が大半を占める難役に真っ向から挑み続ける栗山に、うそ偽りのない本音を直撃した。

── 主演作のシリーズ化が決定した時は、どんなお気持ちでしたか?

「素直にうれしかったけど、実は不安もあったんです。なにせ前回、女優を辞めようかな…と思ったくらい苦労したので(苦笑)。絵麻はセリフが多い上に、マイクロジェスチャーが出る場所やタイミング、ほかの人物の心の声が入る間を確保するテンポ感など、覚えることがたくさんあって、本当に大変なんですよ! でも、前回も周囲の皆さんのおかげで乗り越えられたし、今回もきっと大丈夫なんじゃないかな(笑)」

── Season1から1年が経ったタイミングで、「特別篇 悪魔の学問」とSeason2の撮影が始まったそうですが、絵麻の感覚はすぐに取り戻せましたか?

「もっと苦労するかと思っていたんですけど、台本を読んだら、パッと思い出せました。Season1の時から、プロデューサーさんや監督さんと楯岡絵麻像を共有できていたのが大きかったんでしょうね。撮影も『今の絵麻なら、こんな感じだよね』みたいな、感覚レベルの話で通じる状態でスタートできたんですよ。劇中でお決まりとなっているマイクロジェスチャーの説明ゼリフも、前回は自分に知識がなかったので、覚えるだけでも一苦労だったんですけど、今回はある程度『あっ、いつものね!』って感じで」

── それはすごい! 説明ゼリフはもう怖くないですか?

「恐怖心はだいぶなくなったかな、と思いますね。説明ゼリフが苦手という役者さんは多いと思うんですけど、私もやっぱりその1人で、以前はすごく苦手意識があったんです。でも、これだけ込み入った説明をずっとしていると、免疫がついてくるというか…。ほかの作品に出演した時にも『あっ、これくらいの説明ゼリフね』と思えそうだなって(笑)。もちろん、暗記する時間はそれなりに頂きたいですけど(笑)、『何とかなるでしょう』と立ち向かえる心の強さができたかなって思います」

── ちなみに、相手をじーっと観察しながらうそを見抜く絵麻を演じてきた中で、栗山さん自身も人の表情の見方が変わるなど、何か影響を受けましたか?

「それが…役を通して知識を得ることはできましたけど、反射的に『うそをついてるか、どうか!?』という感覚で相手を見ることもないし、『あっ、この人うそついてるな』とか、全く分からないです!(笑)。ただ、逆に自分がうそをついていると思われたんじゃないかなって、ふと焦ったりすることはあります。例えば、腕を組んでいるのは相手を拒絶している証拠だって、よく言われるじゃないですか。でも、私はそんなつもりじゃないのに、腕を組むことがあって…。『そんなつもりじゃないんですよ!』って、自分に対して思ったりします」

── 以前、「すぐに人を信じちゃう」とおっしゃっていましたけど、今もですか?

「そうですね(笑)。そんなに疑わないタイプです。さすがにちょっとキツいことを言われたりすると、『なんでこんなことを言われたんだろう…。私が何か原因を作ったのか?』とは考えますけど、普通に言われたことに対しては素直に『お~、そうなんだ~!』って。どちらかと言うと、だまされやすい方だと思います(笑)。そもそも世の中、相手を疑う人って、そんなにたくさんいるものなんですかね?」

── 実際のところはどうか分からないですけど、褒められても素直に受け止められない人とか、意外と多いなって印象があります。

「あ~! それは分かります。私も褒められた時に『社交辞令だよね。でも、否定するのも…』と思って、『ありがとうございます!』と言ったりすることがあるので。ただ、それはたとえうそだとしても“いいうそ”だから、気にすることでもないのかなって」

── 話は戻り、今まさにSeason2を撮影中ですが、現在の心境はいかがですか?

「Season2では手話をする回があったり…と、私にとっては新挑戦となることが時々盛り込まれているんですよ。そのたびにちょっとずつ覚えなきゃいけないものがあるので、『次はどんな話なんだろう!?』って、そわそわしてますね」

── 撮影中に意外なシチュエーションが発生して、ビックリするようなこともあったりするんですか?

「台本を読んで想像していた感じと、実際の撮り方が違って新鮮に思うことはありますね。カット割りが書き込まれた撮影当日用の台本を見て『監督はこんなふうに撮ろうって思ってたんだ』って気付く時もありますし、リハーサルで相手の役者さんの動きを見て『こういうお芝居をやるんだ!』と驚くこともあります。ただ、皆さんのおかげで意外なシチュエーションも楽しめていますし、前回みたいに『女優を辞めちゃうかも…』と思うことは、もうないです!(笑)」

── むしろ“もっともっとシリーズを続けたい!”という気持ちが芽生えたりは…?

「Season1と特別篇では、白洲迅さん演じる西野が絵麻の相棒だったけど、Season2では馬場徹さん演じる東野(浩介)が新相棒になるんですよ。だから、スタッフさんとも冗談で『西野、東野、北野、南野って、方角を全部制覇したりしてね』なんて話しているんです。でも……(天をあおぎながら)はぁ…! 全制覇する前に、2代目・絵麻が誕生しているかもしれない(笑)。いや、私自身は『機会を与えていただければ続けたい』と思ってはいるんです。でも同時に、絵麻を演じれば演じるほど『自分の中のレパートリーは、これ以上ないんじゃないかな』と感じてしまったりもして…。この作品は特に、取調室という決まった場所で、私がずーっと話してるシーンが多いので、見る方もきっと飽きるじゃないですか。だから、絵麻役がほかの人に変わるという選択肢もあるのかなぁ、なんて(笑)」

── 全く新しい役を演じるのも大変だけど、同じ役を演じ続けることにもまた違う難しさや苦労があるんですね。

「そうですね。これでいいのかなぁ…と思いながら、演じるようになっていきますね。最初は『絵麻ってどんな感じかなぁ』と手探りで演じていたのが、何となく自分の中でイメージが固まってきた途端、『ずっとそのままでいいのかな?』と悩んじゃう」

── そういう時は監督に相談されたりするんですか?

「あらためて相談するというよりは、ほかの役者さんのお芝居や監督の演出を受けながら、『あっ、こういうことをやっちゃうんだ!』という気付きを得て、ちょっとずつ開拓しています。皆さんに誘導していただいて、どんどん広がっていく…みたいな感じですね」

── Season2では、前作とはちょっと違う絵麻も見られそうですね。

「引き続き新たな面を開拓していますし、私自身もどんな絵麻になるか楽しみですね。もちろん前シリーズに引き続き、各話に散りばめられた面白い謎とストーリー、最後に真相が分かった時のスッキリ感も健在なので、視聴者の皆さんにもぜひ楽しんでいただきたいです」

【プロフィール】


栗山千明(くりやま ちあき)
1984年10月10日生まれ。99年に映画「死国」で女優デビュー。映画「バトル・ロワイアル」(2000年)、映画化もされたドラマ「ATARU」(TBS系)、主演ドラマ「不機嫌な果実」(テレビ朝日系)、主演ドラマ「銀河鉄道999」(BSスカパー!)、「遺留捜査」シリーズ(テレビ朝日系)、映画「チワワちゃん」(19年)など代表作多数。20年初夏には、主演映画「種まく旅人~華蓮(ハス)のかがやき~」が公開される。

【番組情報】


「サイレント・ヴォイス 行動心理捜査官・楯岡絵麻 Season2」
4月11日スタート
BSテレ東
土曜 午後9:00~9:55

2010年に「このミステリーがすごい!大賞」の優秀賞を受賞した新鋭ミステリー作家・佐藤青南が手掛けた同名小説の実写版。行動心理学に基づいてウソを見破る刑事・楯岡絵麻(栗山千明)が、またしても取調室を舞台に“超・心理戦”を展開する。Season2からは、絵麻の新たな相棒となる刑事・東野浩介(馬場徹)が登場。新コンビが警視庁のエリート刑事や、ネット社会で絶大な支持を得る若手政治家ら、手強い被疑者と対決していく。また、アイドルグループのファンによる殺害予告事件や、作曲家のゴーストライター事件、運動部での体罰問題など、実際に起こった事件をモチーフとした事件にも、果敢に立ち向かっていく。

取材・文/南由紀子 撮影/松井伴実
スタイリング/ume ヘア&メーク/奥原清一 衣装協力/KOH’S LICK CURRO、STELLAR、HOLLYWOOD

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