【社会人野球】本当はマジメな野球人? 元日ハム新垣勇人、東芝コーチとして奮闘する日々と指導論

東芝野球部で投手コーチを務める新垣勇人氏【写真:安藤かなみ】

18年に現役を引退し東芝に指導者として復帰「後悔してほしくない」

 日本ハムに在籍し、現在は東芝野球部で投手コーチを務める新垣勇人氏。横浜商科大学から東芝に入社すると、5年間在籍しチームを牽引。2012年ドラフト5位で日本ハムに入団した。日本ハム時代にはチームメートも多数登場する動画をはじめ、自身が上沢直之や大谷翔平(現・エンゼルス)の見舞いなどに訪れる写真などをツイッターに投稿しファンを楽しませてきた。2016年は1軍昇格後にナインの前で一発ギャグを披露し続け、チームは15連勝を記録。ツイッターのフォロワー数は6.3万人を誇り、親しみやすいキャラクターで選手からもファンからも愛された。

 2018年オフに戦力外通告を受け現役を引退すると、古巣・東芝に投手コーチとして復帰。指導者として2年目を迎えた新垣コーチは「後悔をしてほしくないというのが僕の中にあって」とナインへの接し方で心がけていることについて話した。

「最終的に、笑顔で終わりたい。だから細かいことはけっこう言います。例えば、ダッシュの残り何メートル抜いてるとか、もっと大きな声を出してほしい時に出していないとか。そういう細かいところはもちろん技術面でもあります。フィールディングでちょっとミスをした人が、次に同じことをしたらやったらできる、でもそうじゃない。“次できる”のではなくって、“次にやらないため”になにをするかというのを考えてやっていきたい。結局、先のことを考えたプレーをしてほしいなと思います。ミスで負けたくないのもあるし、『そこをやっておけば』という後悔もしてほしくない。僕もいろいろ経験をしてきて、そういうところを心がけていたのかなと思います」

 もちろん、グラウンドではいつものコミカルな一面は封印。ナインからは「ギャップがすごい」「こんな感じだと思わなかった」との声も上がると言うが、「よく言われます」と笑い飛ばした。「投手コーチとして、メリハリをつけています。外ではいいけど、グラウンドに行ったらそういうのはやっぱりなし。勝つためにどうするかを常に考えています」という新垣コーチ。ベンチからマウンドに向かう選手に対しては、「今までやっていたことを全て出して対戦しよう」と声をかけて鼓舞。社会人野球の試合で使用する球場にはベンチとブルペンをつなぐ電話が用意されていないことも多く、ひっきりなしに移動することも多いという。「シャトルランみたいですよ」と意外な苦労話も飛び出したが、口ぶりは至って明るい。

東芝からは岡野が中日へ、宮川が西武へ入団「全員で戦おうという団結力が出てきている」

 エースの岡野祐一郎が中日に、宮川哲が西武にそれぞれ入団。チームは2本柱を失ったが、新垣コーチは「今年は“総合力”ですね。層は厚いと思うので。投手は岡野、宮川が抜けて、『全員で戦おう』という団結力が出てきている」とチームの雰囲気を語る。

「宮川がパワー、スピード系。岡野はコントロール系。岡野はスピードがほしい、宮川は岡野のようなコントロールがほしい。そこでお互い話し合ったりもしていたし、お互いのピッチングを見て、どうやってやっているだろうとか。宮川が岡野に聞いたり、逆に岡野が宮川に聞いたり。見ていて、いい関係だと思っていました。(残された選手も)そういうところは見てくれているはず。実際、岡野は年下にも自分がよくなるためにアドバイスを聞いていたりもするし、宮川は宮川で野球に対してものすごく真面目で、常にどうしたらいいのか考えているタイプ。他の選手もそういうところを見て、多少なりとも影響を受けていると思います」

 プロ入りを果たした2投手が残した好循環に期待を寄せながら、「ベンチに入ろうが入らまいが、投手陣10人全員で勝ちに行く」と全体のレベルアップも狙う。新型コロナウイルス感染拡大の影響で3月中旬に予定されていたスポニチ大会が中止となり、4月2日には第45回全日本クラブ野球選手権大会、第46回社会人野球日本選手権大会、一部のJABA公式大会の中止も決まるなど、状況は苦しいが前を向いて、活動していくしかない。

 現役時代の印象とはまた違った姿でグラウンドに立ち続ける新垣コーチ。得意の動画投稿については「ちょっといま抑えているんですよ。真面目にはなっていないんですけど」とニヤリ。「どこまでやっていいのか……。どう思います?」と、ファンに呼び掛けていた。(安藤かなみ / Kanami Ando)

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