ジョン・クーガー「ジャック&ダイアン」懐メロになんてならない魂の歌 1982年 4月12日 ジョン・クーガーのアルバム「アメリカン・フール」がリリースされた日(ジャック&ダイアン収録)

アメリカへの憧憬を抱かせてくれた名曲「ジャック&ダイアン」

ジャック&ダイアン、この曲を初めて聴いてからかなりの月日が経つが、未だに聴き続けている理由は一体なんだろう。アメリカ中西部の田舎町に暮らす “ジャックとダイアンの物語” は、30年以上も前の高校生だった僕にアメリカへの憧憬を抱かせ、知名の今となっても感情のひだを揺さぶり続けている。

曲の冒頭から飛び出てくるのはこんなワードだ。アメリカンキッズ、グローイングアップ、ハートランド、フットボールスター、バックシート、チリドッグ、テイスティフリーズ、ボビーブルックス。今となっては何てことないありふれた言葉だが、当時は実に新鮮な響きだった。アメフトやチリドッグは僕の周りに無かったし、テイスティフリーズやボビーブルックスなんて何のことか全く分からなかった(ファストフードのチェーン店と服のブランドであることが後に判明)。

アメリカの田舎町に暮らすティーネイジャーの情景

ともあれ、彼の歌に出てくる英単語を丁寧に紡ぎ合わせていくと “いかにも” といったアメリカの田舎町に暮らすティーネイジャーの情景が目に浮かんでくる。80年代初頭はアメリカに対する憧れがとても強い時代ではあったが、キラキラと輝くウエストコーストやアーバンなニューヨークよりも、僕にはこんな朴訥としたアメリカがとても魅力的に映った(実際の環境は恐ろしく保守的な土地柄なんだろうが)。

そんな古びた田舎町を捨て都会への逃避行を企てるジャックとダイアン。ただ、実行したかどうかを歌詞から読み取ることはできない。ジョン・クーガーにとって、ビッグシティに飛び出そうがスモールタウンに留まろうが、そんなことは大きな問題ではなかったのだろう。いずれを選ぼうとも、生きていく限り大人にならなくてはならないし、子供のままでいることは不可能なのだ。その上で “ジャックとダイアンの物語” はこう歌われる。

Life goes on… 必死にもがきながらベストを尽くす人間の物語

 Oh yeah, Life goes on
 (人生は続いていく)
 Long after the thrill of livin is gone
 (スリルが去った後もずっと)
 They walk on
 (歩き続けよう)

永遠と瞬間、若さと老成、退屈と興奮、疾走と停滞、ネガティブとポジティブ。そんなアンビバレントな気持ちを行ったり来たりさせながら、ギリギリのところで折り合いをつけて懸命に生きるジャックとダイアン。でも、そんな感情はティーネイジャーだけのものではない。必死にもがきながらもベストを尽くす人間の物語は、いつの時代もサヴァイヴできる力を持っている。リリースから何十年経とうが、時間という荒波を越え、決して懐メロなんかにはならずに生き残るのである。

豆知識:
ジョン・クーガーはデヴィッド・ボウイのマネジャーであったトニー・デフリーズに見出されました。そんな縁もあって、この曲のギターには「ジギー・スターダスト」などでも名プレイを披露したミック・ロンソンが参加しています。

※2016年6月21日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 太田秀樹

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