【最新・尿ビジネス】(上)長寿 健康状態を可視化

発表会で、オーダーメードサプリ「パーソナルワン」を手にする池森名誉相談役(中央)ら=1月15日、東京都港区

 近年、尿検査を基にした商品やサービスが生まれている。最新の「尿ビジネス」を追った。

 「パーソナルサプリは、私が1994年にサプリメント事業を立ち上げた時からの最終目標だった。ようやく実現できた」

 今年1月15日、ファンケルのオーダーメードサプリ「パーソナルワン」の発表会。登壇した創業者の池森賢二名誉相談役は、いつにも増して冗舌だった。

 「パーソナルワン」は、尿検査と食習慣のアンケートから健康状態を分析し、顧客それぞれに適したサプリを提供する新サービス。82歳の創業者は「私の健康はオーダーメードのサプリに支えられている。今回、尿検査で不足した栄養素が分かる技術を開発した。サプリの良さを体験していただくと同時に、病気にならない体をつくっていただきたい」と強調した。

 総務省の人口推計によると、日本の総人口に占める70歳以上の割合は2018年に初めて2割を超えた。国立社会保障・人口問題研究所は、36年には3人に1人が高齢者になると推計する。

 政府は長寿化を経済成長の「大きなチャンス」と位置付け、病気や介護の予防を重視する戦略を打ち出す。こうした背景もあり、ビジネスの現場においても「健康」や「長寿」は大きな柱となりつつある。

 同社は26年前、健康食品としてサプリの販売を開始。近年の健康意識の高まりも追い風となり、サプリを含む栄養補助食品の売上高(19年3月期連結決算)は439億円に達し全体の3分の1を占める。サプリを購入する同社の顧客の多くは50~60代で、平均購入額は月額1万円前後に上るという。

 同社健康食品事業部の若山和正部長は「サプリメント市場は1兆円規模近くまで成長してきている。一方、日常的に摂取しているのは日本人の3割程度。この割合を増やしていくことは、われわれの取り組むべき大きな課題であり、市場拡大に向けた大きなチャンス」と意気込む。

 同社は5年ほど前から、パーソナルサプリの開発に着手。2年ほど前から、尿検査を基にした商品化を進めてきた。

 なぜ、尿に着目したのか。同社総合研究所の雄長誠主任研究員は「尿検査は疾病を防ぐためというイメージが強いが、現在の健康状態を知る指標にもなる」と語る。

 同社は今回、尿に含まれているタンパク質の一種「フェリチン」の量を測定することで、鉄分の充足状況を簡単に測定する技術を開発した。鉄が不足すると疲労感やいらいらが増すほか、記憶力や学習能力の低下も引き起こす。いわば、健康維持のためには欠かせない栄養素だ。

 パーソナルワンでは、鉄分のほか、ビタミンB1、B2、亜鉛、カルシウム、マグネシウムの計6項目について測定が可能となった。今後、調査項目を増やしていく予定という。

 雄長主任研究員は言う。 「尿の分析は道半ばで、分かっていないこともたくさんある。健康状態を知る上で、尿はまだまだ可能性がある」

 ◆パーソナルワン 尿検査とアンケートから顧客の健康状態を分析。この結果を基に一人一人に適したサプリメントを選出し、毎月個別包装して通信販売する。参考価格は4千~4万円。初回時は、尿検査キット(5500円)が必要。

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