新型コロナで導入広がる「テレワーク」、恩恵を受けそうな銘柄は?

世界中で新型コロナウイルスが蔓延し、パンデミックがいまだ収まる気配はありません。そこで、にわかに注目を集めているのが「テレワーク」です。テレワークとは、ICT(情報通信技術)を利用して時間や場所にとらわれない柔軟な働き方ができることを意味します。

今回の新型コロナウイルス感染拡大を機に、生産性・効率性の向上や事業継続計画(BCP)の一環として、テレワークの導入が加速していくと見込まれています。


官民ともにテレワークを推奨

通勤や会議などの際の感染リスクを減らすことができることから、官民ともにテレワークを推奨している状況です。厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症のためのテレワークに対する助成金を設けました。また、独自のテレワーク推進支援策を行う地方自治体も出てきています。

民間企業では、テレワークをすでに導入済みの企業は在宅勤務に移行。未導入企業では、緊急で導入を検討する企業が増加している状況です。また、テレワークの導入に必要なアプリケーションやサービスを期間限定で無償提供する企業も多くなっているようです。これらのように、ニーズと土台が整えられていることから、一気にテレワークが普及する可能性が出ています。

総務省の「通信利用動向調査」によると、「テレワーク導入目的」は、平成29年は勤務者の移動時間の短縮を目的としたものが1位でしたが、平成30年は効率性や生産性の向上を目的とした導入が増えていることがわかります。

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)が2018年7月6日に公布され、2019年4月1日より施行。この働き方関連法が、企業の効率性や生産性の向上に対する意識を高めたようです。

2019年は、東京オリンピック時の混雑を予想して、通勤しなくても業務が回るようにテレワークを導入する企業が増えていたようです。

まだ低いテレワーク実施率

パーソル総合研究所が3月23日に発表した、正社員2万人が対象の「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」によると、「現在の会社で初めてテレワークを実施した人」が47.8%と約半数近く。

一方で、テレワークを希望しながらも、実際はできていない人は33.7%に上ります。東京圏では、オリンピックを前にテレワークの導入が進んでいたことからテレワークの実施率は高いようですが、その他の都市では実施率は低く、今後普及する余地が大きい状況です。

また、厚生労働省がLINEと協力して調査した第1回「新型コロナ対策のための全国調査」によると、「仕事はテレワークにしている」と回答した方はわずか5.6%。現時点では、一般的と言えるほど普及していない状況とわかります。

初めの一歩を踏み出す企業が増加中

実際にテレワークを導入するためには、さまざまなものを整備する必要があります。まず必要とされているのはテレワークのための制度のようです。その後は、パソコンやタブレットの導入、通信環境の整備、会社にあるデータのやり取りをする際の認証やVPNの整備、セキュリティの確保など多岐に渡ります。

新型コロナの影響を受けた現状を見ると、急に在宅勤務に移行したり、何とか業務をまわすためにテレワークを導入する企業が増えているようです。すでに、テレビ会議を行うためのサービスや必要となるWEBカメラなどの周辺機器、PCの売れ行きが好調となっているようです。

従来のままであれば、重い腰を上げて比較・検討・導入をする必要があったものが、一度体験したことによりテレワークの利点や問題点が見え、スムーズな導入が図れるのではないかと見ています。

オフィスで普段働く人々だけでなく、それ以外の層への広がりにも期待が持てるようです。たとえば、学校の授業は喫緊の課題として導入が加速しています。携帯キャリア各社は、オンライン授業を始める大学などが増える中、学生の負担増となることに着目し、通信量の一部無料化を相次いで発表しています。

医療向けでも活用が進んでおり、院内感染のリスクが高まる中、「リモート診療」などで、オンライン上で遠隔医療を受けられるサービスが注目を浴びています。テレワークの導入が、新たなサービスを生み出していくことにも期待できるでしょう。

テレワークによって需要が見込まれる銘柄

テレワークに必要なPCやWEBカメラなどの周辺機器を扱う銘柄として、ダイワボウホールディングス(3107)、メルコホールディングス(6676)、エレコム(6750)があります。
在宅勤務だからこそ必要となるセキュリティ対策銘柄は、FFRI(3692)、トレンドマイクロ(4704)。

グループウェア及びコミュニケーションのテラスカイ(3915)、サイボウズ(4776)なども業務状況の把握や意見交換などに必要になるでしょう。

総合的なテレワークソリューション提供をする企業は数多くありますが、中でもソリトンシステムズ(3040)、伊藤忠テクノソリューションズ(4739)、NEC(6701)、ネットワンシステムズ(7518)、内田洋行(8057)に注目しています。

仮想デスクトップとして、有名なアセンテック(3565)やリモートマネージメントに強みを持つオプティム(3694)にも恩恵があるでしょう。

<文:投資調査部 饗場大介>

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