コンサート自粛も…ネットで活躍の場を 地元ミュージシャンら動画配信 ライブハウスも後押し「コロナに負けない」

ミュージシャンの紹介動画を撮影する益田さん(左)とまこちんさん=長崎市住吉町、「ミュージックサロン バディー」

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、県内の多くのライブハウスがコンサートを自粛。演奏の場が制限された地元ミュージシャンの間では、自分たちのパフォーマンスを撮影した動画を会員制交流サイト(SNS)や動画投稿サイト「ユーチューブ」などで配信し、活動の場をネットにも広げようとする動きがある。一部のライブハウスはSNSを通じてミュージシャンを紹介したり、無観客状態の店内を動画撮影の場に提供したりして支援。現代の情報ツールを活用して県内の“音楽の灯”を守ろうとする取り組みを取材した。
 「本日、最初に紹介するのは長崎では有名なシンガー・ソングライター大平ユージさん。ハイトーンボイスが魅力です。フェイスブックでぜひチェックしてみて」
 政府の緊急事態宣言が発令された7日夜、長崎市住吉町の「ミュージックサロン バディー」。ステージ前に設置されたスマートフォンのカメラを前に、軽妙な語り口を披露するのは同市の音楽制作会社「EGサウンズ」の益田亨代表(63)と同市在住のミュージシャン、まこちんさん(61)。収録しているのはネットで演奏動画などを配信しているアマチュアミュージシャンを紹介する番組。フェイスブックで、リアルタイムで一般公開された。

 ◆負けたくない

 同店は2016年11月に開店。これまで月に2回のペースで県内のアマチュアバンドや弾き語りのミュージシャンが出演するライブを開き、毎回約50人の観客でにぎわっていた。
 しかし、4月のライブはコロナ禍で中止。賴田博店長(68)は「コロナに負けたくないとは思うが、出演者のさまざまな事情を考慮し中止を決めた」と述べ、「彼らが再びライブができるようになるまで店を守っていきたい」と決意を語る。
 番組の制作は、賴田店長の知人の益田さんとまこちんさんが「ライブができない状況にいるミュージシャンらの支援をしたらどうか」と提案し、実現。7日の番組で紹介された大平さんは「自宅で過ごしている友人たちのために配信を始めた。好評なのでコロナが終息するまで続けたい」と話した。

 ◆コメント次々

 自宅で大きな音を出しづらいミュージシャンに、動画の撮影・配信の場を提供しているのは、雲仙市愛野町の「カフェ&バー チェリオ」。同店は19年4月にオープン。県内のミュージシャンが集い、不定期にライブを開いていた。しかし、コロナの影響で現在は自粛。同店の坂本亮代表(45)が無観客の店内でスマートフォンやパソコンを操作し、ミュージシャンの生演奏を撮影、ユーチューブで配信している。
 4月8日の配信では、大村市のミュージシャン、マミヤトシローさんが出演。1人でエレキギターを弾きながら、オリジナルのロックナンバーなど8曲をカメラの前で演奏。リアルタイムで配信中の動画には、視聴者から「かっこいい」「CDを買いたい」などのコメントが次々と寄せられた。配信後、マミヤさんは「動画を見ている人たちの姿を想像しながら演奏したので、実際のライブと変わらない気持ちでパフォーマンスできた」と満足げに話した。

 ◆元気届けたい

 コロナ禍を機に、ネットでの音楽配信に力を入れている本県のプロミュージシャンもいる。大村市出身の歌手タナカハルナさんは、インスタグラムでギターの弾き語りなどを不定期でライブ配信している。「コロナの影響で沈みがちな気持ちでいる人たちに、元気な歌声を届けたい」と意欲を語る。

動画配信用の機材の前で演奏するマミヤさん(右)=雲仙市愛野町、「カフェ&バー チェリオ」

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