連続無失点 メジャー記録はハーシュハイザーの59イニング

投手にとって、9イニングを無失点に抑える完封勝利は最高の結果と言えるが、これを5試合以上連続で続けた投手が存在する。連続完封のメジャー記録は、なんと6試合連続である。ここでは、その連続完封記録を含め、メジャーの連続イニング無失点記録を振り返ってみよう。

史上屈指の「投手優位」のシーズンとなった1968年、2人の大投手がメジャー記録を塗り替えた。ドン・ドライスデール(ドジャース)は、5月14日のカブス戦で2安打完封をマークすると、そこから18日のアストロズ戦、22日のカージナルス戦、26日のアストロズ戦、31日のジャイアンツ戦、6月4日のパイレーツ戦と驚異の6試合連続完封を記録。8日のフィリーズ戦で5回表に犠牲フライで1点を失い、連続無失点は58イニングでストップしたが、デッドボール(飛ばないボール)時代の1913年にウォルター・ジョンソン(セネタース)がマークした55回2/3連続無失点のメジャー記録を更新した。

この年、31歳で自己ベストの防御率2.15をマークしたドライスデールだったが、翌1969年に肩を痛め、12先発で5勝4敗、防御率4.45に終わると、シーズン途中であっさり現役引退を表明。メジャー14シーズンで通算209勝を記録し、1984年に10度目のチャレンジで78.4%の票を得てアメリカ野球殿堂入りを決めた。

ドライスデールの記録が継続中だった1968年6月2日にボブ・ギブソン(カージナルス)の記録もスタートした。6日のアストロズ戦、11日のブレーブス戦、15日のレッズ戦、20日のカブス戦、26日のパイレーツ戦で5試合連続完封をマークしたギブソンは、2日のメッツ戦(完投)の最終2イニングを合わせて47イニング連続無失点を記録。7月1日のドジャース戦ではドライスデールと投げ合って完投勝利をマークしたが、初回に暴投で失点したため、連続無失点はストップした。

この年のギブソンは、34試合に先発して28完投・13完封を含む22勝9敗、防御率1.12をマーク。先日、メジャーリーグ公式サイトの企画として行われたファン投票で「史上最高のシーズン」に選出された。1975年限りで現役を引退するまで、カージナルス一筋17シーズンで通算251勝をマーク。有資格初年度の1981年に得票率84.0%でアメリカ野球殿堂入りを果たした。

デッドボール時代以降のメジャー記録は、1933年にカール・ハッベル(ジャイアンツ)がマークした45回1/3連続無失点だったが、史上屈指の「投手優位」のシーズンとなった1968年、ドライスデールとギブソンの2人がこの記録を塗り替えることになった。

それから20年後、ドライスデールの大記録を更新したのもドジャースの投手だった。オーレル・ハーシュハイザーは、9月5日のブレーブス戦、10日のレッズ戦、14日のブレーブス戦、19日のアストロズ戦、23日のジャイアンツ戦と5試合連続完封をマーク。8月30日のエクスポズ戦(完投)から継続中の連続無失点は49イニングまで伸びた。

そして、シーズン最終登板となった28日のパドレス戦でも9イニングを無失点に抑え、ドライスデールと並ぶ58イニング連続無失点のメジャータイ記録を樹立。「記録を破りたくない。ドンと並んで終わりたい」と話していたハーシュハイザーだが、ドライスデールの後押しを受けて10回もマウンドに上がり、二死二三塁のピンチを招きながらも無失点に抑えてドライスデールの記録を塗り替えた。

ちなみに、ハーシュハイザーはメッツとのリーグ優勝決定シリーズ第1戦でも最初の8イニングを無失点に抑え、この記録は非公式ながら67イニングまで伸びている。翌1989年のシーズン初登板の初回に失点したため、公式記録は59イニングでストップした。

1988年のハーシュハイザーは、ポストシーズンでも6試合(うち5先発)で3完投・2完封を含む3勝0敗1セーブ、防御率1.05と大活躍し、チームのワールドシリーズ制覇に大きく貢献。リーグ優勝決定シリーズとワールドシリーズの両方でMVPに選出された。シーズン成績も23勝8敗1セーブ、防御率2.26でサイ・ヤング賞を受賞。2000年限りで現役を引退するまで、メジャー18シーズンで通算204勝をマークした(有資格2年目の2007年に得票率4.4%で殿堂入り投票の対象外に)。

なお、ハーシュハイザー以降では、2015年に当時ドジャースに所属していたザック・グレインキー(アストロズ)がマークした45回2/3連続無失点が最長記録となっている。

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