『デンジャー・クロース 極限着弾』 圧倒的なベトコンと戦った豪軍。戦争に益なしを痛感

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 ベトナム戦争で、108人のオーストラリア軍が二千に及ぶベトコン(南ベトナム解放民族戦線)と戦った「ロングタンの戦い」を描く豪州製の戦争映画だ。「デンジャー・クロース」とは、味方にも砲撃が届くほどの超至近距離への極限着弾のことで、圧倒的な兵力差をカバーするために豪州軍が採った戦法である。

 戦争映画は、戦場の臨場感を重視するタイプと、兵士たちのドラマに重点を置くタイプに大別できるだろう。本作はタイトルからも分かる通り、一見前者を狙った作品に思える。だが、欲張ってドラマ性にも食指が動いてしまっている。当然ながら、ドラマ性を高めればリアリティーは目減りする。だから、どちらも中途半端なのだ。

 それでも、ハリウッドの戦争アクション映画とは違い、登場人物たちが戯画的にキャラクター化されたり、勧善懲悪で色分けされたり、あるいはスタローンやトム・クルーズのようなスターが演じたりしていないことで、カメラが彼らに寄り添い続けているうちに、次第に彼らは我々自身だと思えてくる。観客が自ら戦場の臨場感を我が身に引き寄せるようになるのだ。時にスローモーションなどの技法がその臨場感を削いでしまう点は残念だが、死がすぐそこにあり、生き残っても素直に喜べないという彼らの実感を共有し、戦争に益なしを痛感する。反戦映画として十分に見応えはある。★★★★☆(外山真也)

監督:クリフ・ステンダーズ

出演:トラヴィス・フィメル、ルーク・ブレイシー

公開日未定

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