新型コロナでイベント中止、チケットを払い戻さず「寄付」することで税の優遇が受けられる制度

新型コロナウイルス感染症の影響により、政府の自粛要請を受けて、文化芸術・スポーツイベントがあいついで中止等されています。

イベント等の中止により主催者には大きな損失が生じています。国は、主催者等の負担を軽くする効果を期待して、文化芸術・スポーツイベントの一定のイベントの入場料等について、観客等が払い戻しを受けない(放棄する)ことを選択した場合、その金額分を寄附金とみなし、税の優遇を受けられる制度の設立の準備が進んでいます。


対象のイベント

国は、緊急事態宣言の発令に合わせて、新型コロナウイルスによる経済の落ち込みに対応するための「緊急経済対策」を閣議決定しました。4月24日までに令和2年度補正予算案が決定するとみられています。

このことにより、新型コロナウィルスで中止になった文化芸術・スポーツイベントへの寄付による税の優遇制度の導入が進んでいます。

対象のイベントは2020(令和2)年2月1日から2021(令和3)年1月31日までに、日本国内で開催する予定だったもので、現に中止等されたものです。一人年間合計20万円までのチケット代金が優遇の対象となります。

現行制度では年間寄付金額はその人の総所得金額の40%までが上限です。
その範囲内でチケットに関して年間20万円までが寄付金扱いとなると考えられますが、まだ法案が通っていないので、詳細は発表されていません。

なお、不特定多数の者を対象としていないイベントや、そもそも払い戻しが受けられないイベントは対象になりません。

税の優遇の内容

以前から国や地方公共団体、学校などに寄付をしたときに、「寄付金控除」という税の優遇がありますが、チケットの払い戻し放棄についても同様のしくみとなります。寄付金控除には、所得控除と税額控除があります。

寄付した金額から2000円を差し引いた金額を所得から差し引き、所得税の負担を軽くするのが所得控除ですが、多くの場合、次の税額控除が有利となります。
税額控除は、(対象チケット代金合計-2000円)×40%の金額を税額から差し引くことができます。

例えば、チケット代金が2万円の場合の税額控除は、(2万円-2000円)×40%=7,200円の所得税の減税です。

さらに、各自治体が条例で税優遇を定めた場合は (2万円-2000円)×10%=1,800円の住民税が減額されます。

税の優遇を受けるまでの流れ

まずこの制度は、主催者が文化庁やスポーツ庁に申請して、対象イベントの指定を受けます。指定を受けたイベント名が、文化庁やスポーツ庁のホームページにアップされます。

観客等は払い戻しを受けないことを主催者に連絡し、主催者から特例対象イベント証明書のコピーと、払戻請求権放棄証明書を発行してもらいます。

観客等はこの2点の証明書を添付して、寄付金控除の適用を受けるための確定申告をします。e-taxによる申告も可能となるようです。

税の優遇でチケット代金が100パーセント戻ってくるわけではありませんが、チケット代金の払い戻しを受けないことで、好きなチーム・アスリート、アーティストなどへの寄付となり、応援につながることが期待されます。

「寄付金控除」は、寄付金合計が、所得税ではその人の総所得金額の40%まで、住民税では30%までが上限です。その上限を超えて寄付金やふるさと納税をしていると、税の優遇はありません。

チケットの寄付もこの上限枠に含まれるかなど現時点では、まだ不明な点もあります。

まずはイベント主催者が文化庁やスポーツ庁に申請してから対象となる制度です。関連する法律案が国会で成立次第、詳細が決まっていくと思われますので、文化庁やスポーツ庁のホームページをチェックしておきましょう。

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