「うちで踊ろう」…?

〈扉閉じれば/あすが生まれるなら…僕らそれぞれの場所で重なり合うよ〉-メロディーは軽やかだが、歌詞には悲痛なメッセージも込められている。〈生きて踊ろう…生きて、また会おう〉。シンガー・ソングライター星野源さんの話題の動画「うちで踊ろう」▲伴奏やコーラスやダンスを重ねてくれないかな-星野さんの呼び掛けに呼応する動きが広がる中、安倍晋三首相が自宅でくつろぐ無言の動画を投稿した。この評判がさんざん▲ゆったりとソファに腰掛けて、お茶を飲んだり、読書をしたり…。何度見返しても「優雅な休日」にしか見えない。でも、髪形はばっちり整えられて▲〈友達と会えない。飲み会もできない〉と始まる外出自粛の呼び掛けメッセージに「ああ、そういえば、総理はお友達との会食がお好きでしたね」と言い返すのは揚げ足取りが過ぎるのだろうが▲公人にも私的空間はある。休息も必要だ。しかし、世に向けて発信された瞬間、彼の行動は「首相」の行動だ。最初にすべき心配は飲み会が開けないことではないし、見せるべきは自宅でどう過ごすか-のサンプルではない▲緊急事態宣言から1週間。さまざまに広がる不満や不安や悲鳴には、週末も休日もない。愛犬と一緒のリビングにその声は聞こえていたか。批判は当然だ。(智)

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