「お客さんは1日に3、4人…」 新型コロナウイルスで巨人V9戦士も試練の時

「CAFE HAGI(カフェ・ハギ)」を営む萩原康弘さん(左)と堀内恒夫さん【写真:本人提供】

広島でも活躍、開業36年目の萩原康弘さん「CAFE HAGI」

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、全国の飲食店は自治体の営業時間短縮要請を受けるまでもなく、営業不振に悩まされている。プロ野球OBにも、飲食店経営者は少なくない。通算203勝投手で元巨人監督の堀内恒夫さんは自身のブログに、「ちょっと前に横山の店に顔を出したけど、元気…ではないな。それから萩原のお店も大変だとか? 俺もみんなのお店を許される範囲で回りたいくらいなんだけど、俺が一番感染リスクが高いもんね。自覚を持って行動しなきゃいかんな」ともどかしい思いを綴っている。

「横山」とは元巨人投手で、東京・池袋でうどん店「立山」を経営する横山忠夫さん。「萩原」とは巨人V9戦士の1人で、広島、ヤクルトでも外野手として活躍し、同・目白で喫茶店「CAFE HAGI(カフェ・ハギ)」を営む萩原康弘さんのことだ。

 萩原さんは「ホリ(堀内さん)が!? ブログ? 俺はそういうの見られないから、代わりにメッセージを送っといてくれないか? 『心配かけてすみません。ドンピシャ、その通りの苦しい営業です』ってさ……」と苦笑した。萩原さんは1947年11月、堀内さんは48年1月生まれの“同学年”。巨人時代から仲が良く、萩原さんの妹と、堀内さんの妻が高校の同級生という不思議な縁もある。

「4月に入ってから、お客さんは1日に3、4人。売り上げはおそらく普段の10~20%になってしまうだろうね。ウチの常連さんは70過ぎの年配の人が多くて、そういう方々はプッツリ来なくなった。電話は来るけどね。『生きてるよ。こういうご時勢だから行けない』ってさ」と肩を落とす。

 萩原さんは中大から69年ドラフト3位で巨人入り。勝負強い打撃で鳴らした。特に9連覇がかかった73年終盤、激烈な優勝争いを演じていた阪神との直接対決(後楽園)で、同年に22勝を挙げた上田二朗から放った代打逆転3ランは、今もオールドファンの間で語り草だ。広島移籍後も79、80年の2年連続日本一に貢献した。

野球好きの常連、堀内恒夫さんら元同僚がアシスト

 ヤクルトを経て現役を引退し、38歳で開業。4年後に現在地に移転し、通算36年目を迎えている。2005年には、一緒に店を始めた同い年の妻を亡くす不幸に見舞われたが、人生の“ミラクル”が待っていた。17年6月、69歳にして、常連客の1人だった21歳下の陽子さんと再婚したのである。

 10坪の店内ではこれまでに、堀内さんをはじめ、松永浩美さん、石毛宏典さん、大野豊さん、駒田徳広さん、松沼博久さん、蓑田浩二さんらプロ野球OBが、「格安のギャラで」(萩原さん)トークショーを開催してきた。25~30人入れば満員の、手作り感あふれる催しだった。

 毎週水曜の夜には、午後6時から萩原さんを中心に野球好きが集まる「野球談議の日」を2ドリンク付き会費2000円で行い、すでに159回を数えたが、こちらは新型コロナウイルスの感染拡大が収まるまで休止する。

「1日でも長く、この店で野球の話をしていたいね」と萩原さん。かつての同僚をはじめ数多くのプロ野球OBや、“ハギさん”の人柄に魅せられて通う野球好きたちが、気兼ねなく集える日が戻ってくるのを、首を長くして待っている。

「カフェ・ハギ」(JR目白駅から徒歩1分、東京都豊島区目白3-14-20 目白四輪馬車3F、電話03-3565-2424)の通常営業は、午前10時から午後6時まで。土、日、祝日は定休。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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