リモートワークの浸透で人事評価が厳しくなる? 今後の対策を考える

テレビ東京が4月13日に出したリリースがなかなか衝撃的でした。「4月15日から20日臨時休日のお知らせ」と題されたもので、新型コロナ対策の一段の強化のため、「テレビ東京およびBSテレビ東京について、4月15日(水)から20日(月)までの4営業日を自主的に休みとすると決定いたしました」とのことです。

この間も両局の放送は継続するようですが、「この方策によってテレビ東京社員の出社割合を20%以下にすることを目標としています」と説明します。これまでの対策については「2月末から段階的に社員の出社を減らし、4月3日以降はBCP(事業継続計画)に基づき、出社人数を社員の3割程度に減らしてきました」とのことです。


コロナ対策で先手を打ったテレビ東京

テレビ東京は早々に「ロケ中止」を発表するなど、テレビ局の中ではコロナ対策の先鞭をつけ、一定の評価をあげていました。今回はその対策を強化したわけですが、ネットにはこんな声も書き込まれていました。

「つまり7割は無駄な社員」
「ほんとはいなくていい社員が沢山いる事が露見してしまったの?w」

さすがにリモートワークでできる社員はそうしましょう、ということであって「無駄な社員」「ほんとはいなくていい社員」が7~8割というわけではないでしょう。しかし、今回のリモートワークは着実に「必要な人材・不要な人材」を会社に印象付ける結果になってしまったと思います。

まだリモートワークの導入は全国的には少ないとはいえ、今後都心では満員列車のストレス緩和などの目的もあり、コロナ終息後もリモートワークの推進は続くと見られます。今はその予行演習をしているとの側面もあります。現に私も週に2回小学館へ、1回博報堂に出社していましたが、いずれもリモートになりました。しかしながら書類や企画書の提出にZOOMやteamsを使った会議はあり、それに向けた準備資料も作らなくてはなりません。

こういった形の働き方になると、「いるだけの人」の存在が明らかになってしまいます。もちろん全員が何らかの役割を果たしているチームに私は所属しているので誰が欠けてもよろしくはない、とは思う。しかし、「1日8時間会社にいなくてもいいんじゃないの?」という人が明確にリモートワークは炙り出してしまったのです。

たとえば、その人の仕事量は一日平均4時間で終わるものだったのに、「定時」の概念があるからこそ8時間会社にいた、なんて場合もあるわけです。テレワークは意外と「核」となる人の負担が増える働き方です。何らかの指示を出すにしても、その場に一緒にいるから意思疎通がしやすいし、周囲の詳しい人がサッと助言できたりもする。新しいツールの使い方を別の誰かが解説してあげたりもし、その「核」的人材の負担が減っていたのです。しかし、テレワークだとその人が電話やメールやslackで個々に対して指示をする必要があったりもしますし、これまではバイトに任せていたスキャンしてPDFを送る作業なんかも自分でやることになる。

こうなると負担は一気に「核」の人に向かってしまいますが、その他の人は案外と普段より早く仕事が終わったりもします。すると、「えっ? 私の仕事って1日3時間だったの……」みたいなことに気付いたりもするんですよ。

コロナ渦終息後のことも考え始める

こうした事態は管理職も見ているでしょうから、リモートワークが終わった後の人事考査がけっこうシビアになってしまう可能性があります。意外と自分がそれほど忙しくないことに気付いた人は「ラッキー」と思うのではなく、これを機に「コロナ後の我々の部署ができること」やら新サービスの案を考え、提案した方がいいです。

テレワークによって「ただいただけ」、というのがバレてしまった方はその後の社内での扱いが悪くなることが避けられないのです。もしかしたら今後会社は「その日やるべき仕事が終わったら帰ってもいい」「出社の必要がないのであれば来なくてもいい」といった姿勢になるかもしれません。

だからといって、求められるアウトプットは質が高ければ高いほどいいもの。今の通勤自粛時は将来の働き方、強いては査定に大幅に影響する可能性があるかもしれません。ですから、テレワークだからといって「うわーい、監視の目がないもんね♪」なんて思ってはいけず、むしろ監視の目が強化されていると思った方がいいです。

出社している人へのねぎらいも忘れずに

また、懸念されるのが、テレビ東京にしても出社する社員は20%ほどはいるわけです。となると、そうした人がたとえば会社で勤務中に同僚がフェイスブックに「今日のテイクアウトのイタリアン、マジウマい。食べて応援!」みたいなことを書いていたらけっこう腹が立つと思うんですよね。

コロナ禍が収束した後、20%の人はお気楽なことを書いていた自宅待機組に対する恨みを持つことでしょう。「私はあの時感染のリスクを冒して出社したのにあの人は自宅で呑気にしていた。それでいて給料はあまり変わらない……」と。

こうした事態を避けるためにも、リモートできる人は出社してくれている人(本当はしない方がいいとは思いますけど)の労をねぎらうためにもあまり仕事とは関係のないことをSNSや共有のslack、メーリングリスト等に書かない方がいいと思います。とにかく今、人材の選別が起きていることは間違いない。そんな危機感をもってリモートワークをしていきましょう。

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