水無川の一部 砂防管理に着手 国の関与継続へ 国交省雲仙復興事務所

青線内が国土交通省雲仙復興事務所が示した砂防管理の実施範囲(同事務所提供)

 国土交通省雲仙復興事務所は2020年度、長崎県島原、南島原両市に挟まれた水無川の一部で、土石流に伴う除石工事や砂防設備の修繕などを担う「砂防管理」に着手する。国の同年度当初予算として、従来の砂防事業費5億7千万円とともに、新たに砂防管理費6億4千万円が計上された。これを受け、田村毅所長は「管理業務は1年限りではなく、国の関与が決まったことが重要」と予算の位置付けを強調する。
 雲仙・普賢岳の噴火で形成された溶岩ドーム(平成新山)の規模は約1億立方メートル(推定)。ペイペイドーム(福岡市)の53杯分に当たる。現在、1年間に約6センチ沈降し1997年の計測開始から23年間で島原市側に約1.3メートルずり下がった。地震や豪雨による大規模な崩壊の可能性は今も残る。
 溶岩ドーム崩壊や土石流に備えたハード対策として、同事務所が93年から続ける砂防ダムなど大型構造物の建設工事は、2020年度完了する予定で、事業費ベースの進捗(しんちょく)率は99%。
 これまで、21年度以降の事業は白紙の状態で、専門機器を使った溶岩ドームの監視も担う同事務所の行く末に、不安を募らせる関係者も少なくなかった。そんな中、20年度予算への砂防管理費計上に古川隆三郎島原市長は「溶岩ドームの監視を含め、水無川の砂防施設管理が国の直轄事業として継続されていくものと受け止めている」と安堵(あんど)の表情。
 同事務所によると、砂防管理は溶岩ドーム先端から約3~7キロの範囲で実施。範囲内には土石流の流路を一定に導くために設けられた導流堤33基のほか、上流から流れてくる土砂をとどめ、下流への流出を軽減する砂防ダム5基などがある。
 田村所長は国直轄事業として実施され、工事完了後も国が管理を続ける桜島(鹿児島市)を例に、「砂防施設が存在し、流域の状態が変わらない限りは管理し続ける」と21年度以降も国の関与が続く見通しを示す。一方、同事務所の在り方については「組織体制については検討している段階」と述べるにとどめた。

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