豪州SC:eシリーズ第2戦、注目対決はSVGに軍配。フェルスタッペンは惜敗の連続2位

 F1界で躍進する次世代チャンピオン候補、マックス・フェルスタッペンの緊急参戦で注目を集めたVASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーのeスポーツ・シリーズ『Supercars All Stars Eseries』第2戦が4月15日に開催され、旧友との直接対決を制した2016年VASC王者シェーン-ヴァン・ギズバーゲンが連勝を飾り、ツーリングカー使いの面目躍如を果たしている。

 当日夜にシルバーストン、バルセロナの各2戦が争われた『Supercars All Stars Eseries』第2戦は、初戦シルバーストン直前の段階で新たな賞金制度の創設がアナウンスされ、長年のシリーズパートナーであるArmor All(アーマオール)が、今後各ラウンドの最多得点者に1000豪州ドル(約6.8万円)を贈ると同時に、オーストラリアの衛生状況改善に邁進する慈善団体に同額を寄付するチャリティ制度を発表した。

 そんななか、この日最初のヒートに向けポールポジションを獲得したのは、開幕戦に続き通算3度目の最前列となるErebus Motorsportのアントン・デ・パスカーレ(ホールデン・コモドアZB)で、7ラップスプリントとなったレース4ではポール・トゥ・ウインによる悲願の初優勝を達成した。

 その背後で激戦を繰り広げたのがワイルドカード枠参戦のレッドブル・ホンダF1所属のフェルスタッペンと、SVGことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB/Triple Eight Race Engineering)、そしてDJR Team Penskeのエース、スコット・マクローリン(フォード・マスタング)の3台だった。

 現実のVASCシリーズ連覇中の実績に加え、おなじiRacingのプラットフォームを使用する『Indycar iRacing Challenge』でも“シングルシーター初勝利”を飾っているマクローリンは、フロントロウ発進の好位置を活かしてオープニングラップから首位争いを展開するも、続く周回にはSVGのレッドブル・レーシング・ホールデンに詰め寄られ、マゴッツ-べケッツでサイド・バイ・サイドのバトルに。

 その後方から隙を窺っていたのがネイビーのレッドブルカラーをまとう33号車ホールデン・コモドアZBをドライブするフェルスタッペンで、チャペル脱出からハンガーストレートにかけてバトルに集中する2台を出し抜き、レース巧者ぶりを見せつけ2番手浮上に成功する。

 終盤はSVGが親友に追いすがったもののポジション変動はなく、アントン・デ・パスカーレがeシリーズ初優勝。初参戦のフェルスタッペンは貫禄のドライビングで2位表彰台デビューを飾り、3位SVGと続くトップ3となった。

 おなじくシルバーストンで開催されたレース5は、開幕戦同様のフォーマットを採用してリバースグリッド+ピット義務の9ラップ勝負に。

 これにより、レース4で最後尾だった2015年VASC王者マーク・ウインターボトム(ホールデン・コモドアZB/Team18)がリバースポールから序盤のレースをリードしたものの、パスカーレやマクローリンらが1周目にピット義務を消化して猛追を開始。とくにパスカーレはほぼグリッド全車を抜き去り、最終的に3位表彰台ポジションまでカムバックする驚異のドライビングを披露した。

 おなじく後方から這い上がってきたSVGと首位のウインターボトムが6周目にピットへ向かうと、ルーキーのジェイク・コステッキ(ホールデン・コモドアZB/Matt Stone Racing)が隊列を率いることに。

 しかしハンガーからストウへの進入で姿勢を乱したコステッキはTickford Racingのキャメロン・ウォーターズ(フォード・マスタング)にポジションを譲る形となり、悔しい2位止まりに。ウォーターズが開幕レース3の2位に続き、自身初のeシリーズ勝利を飾っている。

RBRAの一員として仮想空間でホールデンをドライブすることとなったマックス・フェルスタッペン(中央)
各ラウンドの最多得点者に1000豪州ドル(約6.8万円)を贈ると同時に、オーストラリアの衛生状況改善に邁進する慈善団体に同額を寄付するチャリティ制度も創設された
R4で6位に入ったアンドレ・ハイムガートナー。続くR5でも9位と連続トップ10入りを果たす

■続くバルセロナのレース6、レース7はSVGとフェルスタッペンの直接対決に

 そして圧巻の勝負となったのがレース6、レース7のスペイン・バルセロナ2連戦。オフシーズンテストや欧州ラウンド開幕の地としてF1サーカスを代表するトラックでのレースは、F1とVASCを代表するレッドブル・エース同士の直接対決構図に。

 初戦の雌雄を決したのはオープニングラップで、再びのポールシッターとなったパスカーレを早々に仕留めたSVGは、仇敵マクローリンがスピンを喫したことで悠々のトップランを奪取。その背後には6番手発進から浮上のフェルスタッペンが続き、レッドブル・レーシンングのホールデンがワン・ツー体制を築く。

 ともにバーチャルレースを戦った経験を持つ親友同士はお互いの手の内を知り尽くしており、SVGはフェルスタッペンからのプレッシャーをすべて封じてのeシリーズ初勝利を獲得。この日2度目の2位となったフェルスタッペンに続き、ポールシッターのパスカーレ、そして同じくErebus Motorsportから初参戦の初代TCRオーストラリア王者、ウィル・ブラウン(ホールデン・コモドアZB)が続くリザルトとなった。

 そしてこの日最後の勝負となったレース7は、2番手浮上パスカーレがフェルスタッペンにヒットされスピンを喫したことで最初のターン1からクラッシュの連鎖が発生し、グリッド上の全車がなんらかの接触を経験する狂気のオープニングラップと化す。

 その混乱をくぐり抜けたのはやはり先頭ランナーの利点を活かしたSVGと、体勢を崩しながら持ち堪えたフェルスタッペンの2台で、対照的にErebusの2台はコースオフ、クラッシュを喫し20番手以降にドロップしてしまう。

 5周目には激しい2番手争いを展開していたフェルスタッペンとマクローリンが同時ピットへ向かい、首位SVGはプッシュを続けて2周後にピットへ。しかしコース復帰時にはフェルスタッペンに先行され、マクローリンを含めた三つ巴の首位攻防戦となる。

 すると9周目のターン1でSVGが勝負を仕掛け、よりフレッシュなタイヤを履くメリットを最大限に活用して、首位を行くF1ドライバーを鮮やかにオーバーテイク。そのままトップチェッカーを受け、バルセロナ2連勝。親友に対して完全勝利を収める結果となった。

 これにより『Supercars All Stars Eseries』のランキング14位だったSVGは、マクローリン、パスカーレに次ぐ3位にまで急浮上。スーパーカーのレギュラー勢と仮想空間で初対決したフェルスタッペンは、4戦中3度の2位というワールドクラスの才能を示してイベントを終えている。

 続く『Supercars All Stars Eseries』第3戦は、オーストラリアを象徴する名門サーキット、バサーストでのレース。ドライバーたちは4月22日(水)に同様のフォーマットで、マウントパノラマでのシングルトラック勝負に挑むこととなる。

シルバーストン初戦では親友SVGに先着し2位と意地を見せたマックス・フェルスタッペン
シルバーストンで4位、5位。バルセロナのR7で3位に入った王者スコット・マクローリンはランク首位を堅守した
「彼(SVG)は僕と走る時、いつもぶつかってくる。それもなぜか僕のせいだと思ってるみたいなんだ」と、レース後にも再びジョークを放ったマックス・フェルスタッペン

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