医療・介護産業の実情に猪瀬直樹が苦言「コスト意識がない」

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。4月8日(水)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、作家で大阪府・市特別顧問の猪瀬直樹さんが“構造改革が必要な医療・介護産業の実情”について述べました。

◆医療・介護産業の実態は?

新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、日本の医療資源は足りないと言われていますが、「構造改革をすれば使える医療資源はいっぱいある」と猪瀬さん。例えばベッド数にしても「本来は多過ぎる」そうで、患者を最も大変な「急性期」、さらには「回復期」や「療養期」などで分けたり、症状によって得意な病院に振り分けたり、機能を分化することで不足が解消できると言います。

また、日本には約28万人の精神病の入院患者がいますが、「人口1,000人当たりの精神病床数の推移」を見ると、ベルギーやイタリア、オーストラリア、アメリカなど各国に比べ数値が高く、そのコストに「1兆4,000億円もかかっている」と猪瀬さん。

これにMCの堀潤は、「入院措置が必要だからか、それとも別の理由があるのか」と疑問を呈すると、猪瀬さんは「単に放置しているだけ」と言い切り、「近代というのはいろいろおかしな人も収容しないといけない」と返答。しかし、欧米はそんな近代的思想からグループホームで支え合う治療に切り替えたそうで、「(欧米は)出口戦略を考えているが、(日本は)遅れてきた近代、ポスト近代になっている」と指摘。

また、人工透析患者にかかるコストは、年間およそ1兆8,000億円。猪瀬さんは「ちゃんとした供給システムを作っていけば、これらは消えていく」と主張します。

◆医療・介護産業は「コスト意識がない」

さらに、猪瀬さんが問題視しているのが薬剤師数。日本は欧米に比べ薬剤師の数が極端に多く、例えばドイツに比べると約3倍。

猪瀬さん曰く「門前薬局で儲かるシステムになってしまった」そうで、そんな現状を嘆きつつ、薬剤師がやるべき仕事について言及。薬剤師は6年間も通学するだけに「注射もできるし、血液を採ったりする検査もできるのにやらせていない。有効な医療資源として使い切れていない」と異議を唱えます。

その上、薬剤師を増やし続けた結果、「病院で薬をもらうと300円ぐらいなのに、院外では3,000円ぐらいとられてしまう」と猪瀬さん。

そこには薬剤師の技術料などの他、「お薬手帳」の有無に関わらず「薬剤服用歴管理指導料」がプラスされるとか。そうしたシステムが構築され、2005年度から2017年度の間に薬剤師に対するコストは1兆円から約1兆5,000億円に増加したそう。

日本は国民医療費が43兆円、介護費が12兆円もあり、国民が負担している医療・介護におけるコストは総額55兆円で、その規模感は日本の自動車産業と同じだそう。猪瀬さんは、「2つの大きな産業があり、医療・介護は公金使用だから、全然コスト意識のない世界ができあがっている」と訴えます。

ポストコロナ以降もウイルスとの戦いは終わることがないだけに、堀が「(医療・介護産業の)構造改革を進め、できる資源を有効活用する国にならないといけない」と意見すると、猪瀬さんは大きく頷き、「今それをやらないと。コロナで人が足りないのではない、有効活用すれば足りている」と改めて強調していました。

なお、猪瀬さんは医療・介護産業の現状に鋭く切り込んだ著書「日本国・不安の研究」を昨年末に上梓。気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

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