地球に似た系外惑星を300光年先に発見。生存可能領域で大気があれば水も?

太陽系外惑星「ケプラー1649c」(左)を描いた想像図(Credit: NASA/Ames Research Center/Daniel Rutter)

2018年に運用を終えたNASAの宇宙望遠鏡「ケプラー」は、太陽系外惑星が手前を横切る「トランジット」が起きた時の恒星の明るさの変化を観測することで、数多くの系外惑星発見に貢献しました。今回、ケプラーの観測データを再確認したところ、これまで見過ごされていた地球サイズの系外惑星が見つかったとする研究成果が発表されています。

■サイズは地球とほぼ同じ、温度も地球に近い可能性

地球(左)とケプラー1649c(右、想像図)のサイズ比較図。直径の差は1割にも満たず、ほとんど同じ大きさとみられている(Credit: NASA/Ames Research Center/Daniel Rutter)

Andrew Vanderburg氏(テキサス大学オースティン校)らがケプラーの観測データから新たに発見したのは、「はくちょう座」の方向およそ300光年先にある系外惑星「ケプラー1649c」です。ケプラー1649cの直径は地球の約1.06倍で、赤色矮星「ケプラー1649」を約19.5日周期で公転しています。

ケプラー1649cの軌道は、主星のハビタブルゾーンに入っています。今回の研究ではケプラー1649cの平衡温度(※)が摂氏マイナス59~19度と算出されており、これは地球の平衡温度(摂氏マイナス18度)に近い値です。もしもケプラー1649cに大気があれば、温室効果によって適度な気温が保たれ、表面に液体の水が存在するような環境が整っていることも考えられます。

なお、ケプラー1649の周囲では、すでに「ケプラー1649b」という別の系外惑星が2017年に報告されていました。こちらも地球とほぼ同じ直径(地球の約1.02倍)の惑星とみられていますが、公転周期は約8.7日と短く、主星のハビタブルゾーンを内側に割り込んでいます。

※…大気の存在を考慮せず、主星から受け取るエネルギーと惑星から放射されるエネルギーだけを考慮した温度

■発見されていない3つ目の系外惑星が存在するかもしれない

ケプラー1649cの地表を描いた想像図(Credit: NASA/Ames Research Center/Daniel Rutter)

研究チームは、今回見つかったケプラー1649cと、以前から知られていたケプラー1649bの公転周期に注目しました。2つの系外惑星の公転周期の比が9:4の整数比(1649cが4周するあいだに1649bは9周する)に近いことから、ケプラー1649bと1649cは重力で相互作用した結果生じる軌道共鳴の状態にあるのではないかと考えられたのです。

ただ、軌道共鳴では2:1や3:2といった比率に落ち着くことが多く、9:4はめずらしい比率です。そこで研究チームは、ケプラー1649bと1649cのあいだに未発見の系外惑星が存在していて、3:2の軌道共鳴が2組分、全体では9:6:4の関係にあるのではないかと予想しました。

もしもこの予想が正しければ、約13日周期で公転する3つ目の系外惑星が見つかるかもしれません。そこで改めてケプラーの観測データがチェックされましたが、3つ目の系外惑星の存在を示す減光は検出されませんでした。研究チームでは、仮に3つ目の系外惑星があるとすれば、その大きさは火星サイズの小さなものか、あるいは軌道が傾いているために地球からはトランジットによる減光が観測できない可能性があるとしています。

Image Credit: NASA/Ames Research Center/Daniel Rutter
Source: NASA/JPL
文/松村武宏

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