今季は日本ハムと広島が勝率5割でオープン戦の戦いを終える
3月15日、2020年におけるオープン戦の全日程が終了した。オープン戦は各チームの試合数が共通しているわけではなく、球団ごとにこなした試合数は異なるのが通例だ。そういった背景もあって、オープン戦を勝率.500ちょうどで終えるチームの数は多くない。2010年から2019年までの10年間で、オープン戦で勝率.500だったチームは120チーム中10チーム。確率的には、10%にも満たないレアケースといえる。
にもかかわらず、2020年のオープン戦では、日本ハムと広島の2チームが勝率.500という成績を残した。複数チームがオープン戦で勝率.500という数字を残すのは、2013年以来、実に7年ぶり。この数字からも、かなり珍しい事象だということがわかる。
そこで、今回は2010年から2019年までの10年間における、オープン戦で勝率.500だったチームと同年のシーズン成績、そして、先述の条件に合致するチームが輩出したタイトルホルダーたちを紹介。各種の数字をまとめるとともに、そこから見えてきたものについて考察していきたい。
まず、オープン戦で勝率.500だったチームが複数生まれた2011年と2013年について見ていきたい。各チームのオープン戦、ならびにレギュラーシーズンでの成績は次の通りだ。
【2011年】
○巨人:12試合5勝5敗2分(5位)
年間成績:71勝62敗11分 勝率.534(3位)
○中日:14試合6勝6敗2分(6位)
年間成績:144試合75勝59敗10分 勝率.560(1位)
オープン戦で勝率5割だった巨人と中日は、どちらもシーズンでAクラス入りを果たした。とりわけ中日はチーム打率と得点がともにリーグ最下位ながら、防御率リーグトップの投手陣を中心とした「守り勝つ野球」の極致とも言える手堅い戦いぶりを見せ、見事にリーグ優勝を飾っている。また、巨人も合計4人のタイトルホルダーを輩出しており、優秀な個人成績を残した選手は少なくなかったと言える。
【2013年】
○日本ハム:16試合6勝6敗4分け(7位)
年間成績:144試合64勝78敗2分 勝率.451(6位)
○西武:18試合9勝9敗(9位)
年間成績:144試合74勝66敗4分 勝率.529(2位)
○ヤクルト:19試合8勝8敗3分(6位)
年間成績:144試合57勝83敗4分 勝率.407(6位)
○DeNA:19試合9勝9敗1分(8位)
年間成績:144試合64勝79敗1分 勝率.448(5位)
この年は4チームがオープン戦を勝率5割で終えるという極めて珍しい結果になったが、その中でAクラスに入ったのは西武のみ。残りの球団はいずれも5位か6位という、苦しいシーズンを送る結果となった。両リーグの最下位チームが両方ともオープン戦では勝率5割だったということもあり、オープン戦の勝率が同じチームの中でも、はっきりと明暗が分かれた年と言えそうだ。
AクラスもBクラスも5チームずつと五分の成績に
続けて、オープン戦で勝率.500だったチームが1チームのみだったシーズンについても見ていきたい。
【2014年】
ロッテ:15試合7勝7敗1分(6位)
年間成績:144試合66勝76敗2分 勝率.465(4位)
【2016年】
巨人:19試合9勝9敗1分(7位)
年間成績:143試合71勝69敗3分 勝率.507(2位)
【2017年】
ヤクルト:18試合7勝7敗4分(7位)
年間成績:143試合45勝96敗2分 勝率.319(6位)
【2018年】
ヤクルト:16試合6勝6敗4分(8位)
年間成績:143試合75勝66敗2分 勝率.532(2位)
Aクラスに入ったチームとBクラスに終わったチームがそれぞれ2つずつと、五分という結果となった。2014年のロッテは前年に3年ぶりのAクラスとなる3位に入っていたが、さらなる躍進も期待された2014年はシーズンを通して苦戦が続いた。また、2017年のヤクルトは故障者続出の影響もあって浮上のきっかけをつかめないまま、球団史上最多の96敗を喫する苦難のシーズンを送った。
一方、2016年の巨人は3位以下のチームが全て負け越しという状況の中で奮闘し、最終的に2つの勝ち越しを作って2位に入った。また、投打合わせて6個の個人タイトルを獲得するなど、優れた成績を残した選手の存在も目立った。また、2018年のヤクルトは前年と同じくオープン戦の勝率は.500だったが、シーズンに入ってからは1年前と同じ轍を踏まず。1年で負け数をちょうど30減らして2位に躍進する、見事なV字回復を見せた。
続けて、直近10年間のオープン戦で勝率.500だった各チームの順位を集計した結果を紹介したい。その数字は以下の通りだ。
1位:1度
2位:3度
3位:1度
4位:1度
5位:1度
6位:3度
AクラスとBクラスの回数がそれぞれ5度ずつと、奇しくも全く同じ数字となった。ある意味では勝率.500という数字に即した結果ともいえるが、優勝したチームが1つだけだったのに対し、シーズン最下位のチームは3つと、順位の面では苦しんだチームが相対的に多くなっている。2位に入ったチームが最下位のチームと同じ3チームということもあり、まさにどちらに転ぶかわからないと言えそうだ。
10年間で10チームしかない勝率5割チームから、30のタイトルを獲得
最後に、各チームの選手たちの個人成績にも目を向けていきたい。オープン戦の勝率が.500だったチームが輩出した、同年のタイトルホルダーは以下の通りだ。
【2011年】
○中日
浅尾拓也氏:最優秀中継ぎ、リーグMVP
吉見一起投手:最多勝、最優秀防御率
○巨人
澤村拓一投手:新人王
内海哲也投手:最多勝
長野久義外野手:首位打者
藤村大介氏:盗塁王
【2013年】
○西武
浅村栄斗内野手:最多打点
E・ヘルマン氏:最高出塁率
○日本ハム
ミチェル・アブレイユ氏:最多本塁打
陽岱鋼外野手:最多盗塁
○DeNA
トニ・ブランコ氏:首位打者、打点王
○ヤクルト
W・バレンティン外野手:本塁打王、最高出塁率、MVP
小川泰弘投手:最多勝、最高勝率、新人王
【2014年】
○ロッテ
石川歩投手:新人王
【2016年】
○巨人
菅野智之投手:最優秀防御率、最多奪三振
S・マシソン投手:最優秀中継ぎ投手
澤村拓一投手:最多セーブ
坂本勇人内野手:首位打者、最高出塁率
【2018年】
○ヤクルト
近藤一樹投手:最優秀中継ぎ
W・バレンティン外野手:打点王
山田哲人内野手:盗塁王
以上のように、リーグ優勝したチームが1つだけだったにも関わらず、オープン戦の勝率.500だったチームの選手が獲得したタイトルは30個にのぼった。とりわけ、8個のタイトルを獲得した2011年と、12個のタイトルを獲得した2013年は特筆ものだ。2013年といえばバレンティンがシーズン60本塁打の日本記録を樹立した年でもあるが、この年はバレンティンとブランコの2人だけで打撃の主要3部門を独占している。
個人成績が優れた選手を多く輩出したチームは、そのぶんチーム成績自体も向上しやすいと考えるのが自然だろう。上述のランキングにおいても、Aクラスに入ったチームの選手が獲得したタイトルが19個、Bクラスのチームが11個と、やはり前者のほうが多くなっている。実際、上記のタイトルの大半は同年にAクラスに入ったチームの選手が獲得したものだが、例外的に2013年はBクラスの3チームの選手だけで計10個のタイトルを手にしている。
オープン戦の結果がシーズンに反映されるわけではないのは先述した各チームの成績からもわかる通りだが、10試合以上を戦ったうえで五分の成績を残している時点で、一定のチーム力を有しているともいえる。ある種例外的ともいえる、2013年のBクラスのチームのタイトルラッシュは、そういった紙一重の面を示唆しているのかもしれない。
以上のように、オープン戦で5割だったチームがどちらに転ぶかは全くの五分だった。多くのタイトル獲得選手を輩出している点も含めて、何やら不思議なジンクスを感じさせる結果となった。果たして、今季のオープン戦で勝率.500だったチームはどのような成績を残すのか、そしてタイトルを獲得する選手は両チームから何人輩出されるのか。今後もオープン戦を五分の成績で終えたチームが現れたら、ぜひ注目してみてはいかがだろうか。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)