コロナ直撃 献血ピンチ 県赤十字血液センターが協力呼び掛け

来場者同士が接近しないよう、献血車の外で問診を行う=横浜市西区

 新型コロナウイルスの感染拡大防止策として外出自粛が求められる中、輸血に必要な血液の確保が困難になっている。神奈川県赤十字血液センター(横浜市港北区)によると、4月1~16日の県内献血者数は1万4629人で、目標(1万7767人)を17.7%下回っている。センターは「ぎりぎり持ちこたえている状態」と危機感を募らせ、協力を呼び掛ける。

 2月下旬から3月上旬にかけて、全国的に全血の献血者数が減少。状況を危惧した、白血病で闘病生活を送る競泳女子の池江璃花子選手(19)=ルネサンス=が3月5日に、自身のツイッターで協力を訴え、一時期は安定した採血ができていた。

 だが、4月7日の政府による緊急事態宣言後は協力者が激減。外出に伴う不安に加え、大学や企業、イベント会場に出向いていた献血カーの稼働が予定の半分になったことが追い打ちを掛けた。センター企画係の加藤英明さん(47)は「他地域と在庫量を融通しながらやりくりしているが、赤血球の有効期限は21日。有事に備えて継続的な協力がほしいが、現状のままでは苦しい」と顔を曇らせる。

 商業施設の休業や、テレワークなどを導入する企業が増えたことから、献血カーを訪れる人はまばら。15日に複合施設「相鉄ジョイナス」(横浜市西区)前の献血会場を訪れた会社員の河辺妙子さん(51)は「血液が足りないと知って来た。自分にできることで貢献したい」と話した。

 センターでは献血会場の安全を確保するため、職員が入退室ごとに手指消毒を実施するほか、献血者ごとにメディカルグローブを交換するなど配慮。街の中にある献血ルームでは待合室が混雑し、献血者同士が接近しないよう電話予約などを勧めている。

 これまでも輸血を必要とする患者が感染症などの危険にさらされないよう、過去に輸血(自己血を除く)や臓器移植を受けた人は採血ができないなどの基準が設けられていたが、さらに新型コロナウイルスの感染予防策として、事前の問診項目を追加。【1】本人がコロナウイルス感染者の疑いがある【2】感染者と濃厚接触をした【3】海外から帰国して4週間以内【4】呼吸器系に異常がある-などの場合は採血を行わないなど徹底している。

 輸血を通じた新型コロナウイルスへの感染の可能性について、加藤さんは「同じコロナウイルス感染症であるSARS(重症急性呼吸器症候群)は、輸血による感染は証明されていない。呼吸器感染症を起こすウイルスが輸血で伝播(でんぱ)した例もない」と説明している。

 移動献血カーの日程については、県赤十字血液センターの公式サイト、または同センター電話045(834)4611。

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