繁華街閑散…好転の兆し見えず 佐世保、長崎 夜の実情【ルポ】

閑散とする佐世保市の繁華街=15日午後10時33分、佐世保市下京町

 夜のとばりが下りた。いつもなら酔客であふれる通りも人影はまばらで、ネオンだけがまばゆく光る。新型コロナウイルスの感染拡大で県内の夜の繁華街も大打撃を受けている。16日には緊急事態宣言が全国に拡大。状況が好転する兆しは見えない。「店を閉めるしかないのか」。飲食店から悲鳴が上がる。長崎と佐世保の夜の街を歩いた。
 
 
◎来店者ゼロも
 
 15日午後8時ごろ。佐世保市栄町の外国人バー「Playmate」。16席あるカウンターに客は1人だけ。いつものような、米兵たちの陽気な笑い声やジョークはそこにはない。オーナーの吉賀愛祈さん(32)は「お客さんはほとんど来ない。ゼロの日もある」と寂しげに言った。
 佐世保の街には、米海軍佐世保基地の米兵らが多く訪れる「外国人バー」が数十店ある。同店の客も9割が外国人。米兵らが基地外の店に出入りできなくなった3月下旬以降、客足はすっかり途絶えた。
 20日から臨時休業に入る予定だが、家賃の負担はある。それでも「店で感染者が出たら自分の責任。それに、この状況で営業を続けたら悪者みたいに思われるかもしれない…」。吉賀さんはうなだれた。
 居酒屋やスナックが軒を連ねる同市の京町・山県地区で「無料案内所」の男性(29)に声を掛けた。「客は3月に半分になった。今月に入って佐世保で感染者が出てから8~9割減ったんじゃないかな」。
 行きつけのラウンジに顔を出した。世の中がコロナ一色になってから足が遠のいていた。ママ(42)が一人、カウンターに座っていた。「常連客に来てほしいとも言えない。それでも『お金を落としに来たよ』って来てくれる客もいる。今はそれだけが励みよ」。いつもとは違う疲れた表情でママはそう言った。
 
◎覚悟持ち判断
 
 長崎市の銅座・思案橋。
 「従業員の生活もかかっている。悩んだ末に覚悟を持って判断した」。同市内でラウンジ3店舗を経営する倉富三恵子さん(55)は7日に休業を決断した。従業員は総勢70人。「長崎市内でも感染者が出た。決断は正しかったと思う」。
 休業後、従業員に給料の前借りを許可。個別面談などでケアもしている。5月の連休明けに店を再開する予定だが、緊急事態宣言が解除されるのか、まったく分からない。「私たちの業種は早くから休業を求められた。補償が十分にあれば辛抱もできるが…。アルバイト従業員は収入がゼロになってしまうので」と声を落とした。
 県内のスナックやバーなどが加盟する県社交飲食業生活衛生同業組合には、「まだ営業して良いのか」「休業補償はどうなるのか」などの相談が続々と寄せられている。理事長の木下喜行さん(70)は、浜町でバーを時間短縮で営業。客が1人も来ない日も珍しくない。「銅座・思案橋地区で店を構えて45年になるけれど、こんな状態は初めてだね」。木下さんは深いため息を付いた。

 


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