笑いと免疫力

 最近、通勤電車の中で落語の本を読むようになった。笑いには免疫力を向上させる効果があると聞いたからだ▲大阪国際がんセンターの研究によると、漫才や落語を鑑賞したがん患者と、鑑賞しなかった患者各30人の血液を分析すると、鑑賞後の患者には全体的に免疫細胞の増加傾向がみられたという▲新型コロナウイルスの緊急事態宣言が全国に拡大された。県内は全国的にみると感染者数は少ないが、相手は見えない敵だ。すぐ近くまで忍び寄っているかもしれない▲新型コロナは感染者の2割が重症、重篤になるという怖い感染症だ。一方で未来を担う子どもや若者たちが重症化する確率は低いという。どうも人類を滅亡させるまでの力は持ってないらしい。私たちはいずれ普通の生活を送りながら、このウイルスとも共存していくのだろう▲そんな大きなことを考えてみても、とにかく今は感染してはいけないとの思いが勝る。せめて笑いの効果にすがろうと、わらをもつかむ思いで落語の本を開いてみるのだ▲物知り自慢のご隠居がでたらめなうんちくを傾ける長屋噺(ばなし)「やかん」のオチがおかしくて、電車の中で我を忘れて「ふはは」と小さく笑ってしまい、周囲の冷たい視線を浴びた。先の見えない日々だが、ささやかな笑いで厄介な敵に抵抗している。(潤)

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