MVPを取れなかった最高のシーズン 2004年のイチローも登場

全米野球記者協会の記者たちにとって、2019年のMVPを選ぶのは簡単なことではなかった。結果的にはマイク・トラウト(エンゼルス)とコディ・ベリンジャー(ドジャース)が受賞者となったが、アレックス・ブレグマン(アストロズ)やクリスチャン・イェリッチ(ブリュワーズ)も受賞に値する素晴らしい成績を残していたからだ。このように、素晴らしい成績を残しながらもMVPを受賞できなかった選手は数多く存在する。メジャーリーグ公式サイトのマット・ケリーは、素晴らしい成績を残しながらもMVPを受賞できなかった選手を特集する記事を公開した。

年代の新しいものから順番に紹介されているため、真っ先に登場するのはトラウトだ。トラウトは、新人王を受賞した2012年に打率.326、30本塁打、49盗塁、OPS.963をマークしながらも三冠王のミゲル・カブレラ(タイガース)にMVP受賞を阻まれ、打率.312、39本塁打、24盗塁、OPS1.088をマークした2018年もシーズン終盤の故障離脱が響いてムーキー・ベッツ(レッドソックス)の後塵を拝した。

トラウトの次には、2004年のイチロー(マリナーズ)が登場。この年、イチローはシーズン262安打のメジャー新記録を樹立し、自己最高の打率.372で首位打者のタイトルを獲得したほか、19敬遠もリーグ最多で、守備面でもキャリアハイの数字をマークした。ところが、リーグ最高のWAR9.2(Baseball-Reference版)を記録しながらも、チームの低迷が響いたのかMVP投票では7位どまり。MVPを受賞したブラディミール・ゲレーロ(エンゼルス)のWARは5.6に過ぎなかった。

2001年のサミー・ソーサ(カブス)は史上2人目となる60本塁打&160打点を達成するなど、打率.328、64本塁打、160打点、OPS1.174の好成績をマークしたが、MVPは73本塁打のバリー・ボンズ(ジャイアンツ)が受賞。ソーサとしては相手が悪すぎた。一方、ソーサがMVPを受賞した1998年には、当時のメジャー新記録となる70本塁打を放ったマーク・マグワイア(カージナルス)がMVPを受賞できなかった。

もっと歴史を遡ると、1941年のテッド・ウィリアムス(レッドソックス)もMVPを受賞できなかった1人である。ウィリアムスはメジャー3年目となったこの年、打率.406、37本塁打、120打点、OPS1.287をマークして首位打者と本塁打王の二冠を獲得。現時点では「最後の4割打者」となっている。ところが、MVP投票ではジョー・ディマジオ(ヤンキース)に37ポイント差の2位に終わった。ディマジオは125打点で打点王に輝いたものの、打率.357、30本塁打、OPS1.083はいずれもウィリアムスを下回っていた。しかし、ヤンキースが2位レッドソックスに17ゲーム差をつけてアメリカン・リーグを制したこと、そして何よりも56試合連続安打の大記録を達成したことが高く評価され、MVPに選出されたのだった。

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