LOFT9で5月開催予定の「少年の叫び2020」が8月9日に開催延期。開催までのドキュメント【部屋に残されたものと私〜少年の叫び2020まで後112日〜】公開。

5月にLOFT9 Shibuyaで開催される予定だった音楽フェス「少年の叫び2020」がコロナウイルスの影響で8月9日(日)に延期となった。

夏の開催にむけて、主催者の内藤重人からテキストが到着。Rooftopでは「少年の叫び2020」開催日まで数回にわけて掲載していく予定。

部屋に残されたものと私〜少年の叫び2020まで後112日〜

少年の叫びというイベントを計画していたのだけど、昨夜開催の延期の発表をした。それでなくても最近はとても部屋で過ごす時間が多いから、この時間に何か出来ないかと思って考えていたら、新しい曲のMVを撮りたいなと思いついて実家から昔の写真を送ってもらった。数十枚位送ってもらえたらいいなと思っていたのだけど、予想に反してそれは段ボール箱2箱分で送られてきた。その中には写真は勿論、過去の日記帳のようなものやバンドを始めた時の思い出の品などがパンパンに詰まっていた。少し手に取ってパラパラとノートのページをめくってみると、そんな事もあったなーなんて思って流して読むには余りにも気恥しく直視するのが難しい内容がつらつらと書かれている。そのままスッとページを閉じて箪笥の奥にしまっても良かったのだけど、折角なので来たる少年の叫び2020に向けて、タイトルに少年という言葉も入っている事だし、ひとつひとつの物を取り出して誇りを払うように思い返してそれについてここに書けたらいいなと思う。

多くの人がきっと通過してきたであろう、何かやりたいような気がするから何かを形に残してみようという、そのエネルギーはとてつもなく。良い言葉で書けば純粋で無垢であるが、人生という迷宮を生き抜くには余りにも見えていない事が多過ぎて、そりゃ当時、親も教師も怒りまくっていたのだろうなと感じる。

1冊のノートを取り上げてみた。

ノートの表紙には「空の飛び方」と書いてある。恐らくスピッツの曲から取ったのであろうから、高校生の頃であろうか。その頃、白線流しというドラマがあって主題歌がスピッツであった。今ではめっきりドラマも見ないし、テレビすら見なくなったけど、あの頃はよくテレビを見ていた。好きな子はいたような、いなかったような。なんとなく何人かの顔が浮かぶけど、学校を卒業してから全く会っていないので彼女達がどのように過ごしているかは分からない。そのノートの冒頭、学校の勉強の関係の事が申し訳程度に数ページ書いてあった後、突然それは始まる。日記である。

「10年後、僕は何をしているのか」と書き出しから壮大なテーマを投げかけてくる彼に僕は答えを教えてあげたいが、そうもいかない。ゆっくり時間を掛けてその書かれた数行の日記を読んでみた。日付は1998年、4月24日。

インターネットでその頃の時事情報を調べてみると参議院選挙では自民党が大敗していて、完全失業率は過去最悪と書いてある。ワールドカップがあったり長野オリンピックがあったりもしたようだが、世界の激動に対して僕は悶々と部屋の中で行くあてのない情熱を燃やしていたように思う。既にライブハウスに遊びに行くのは好きで、当時流行であった日本インディーズパンクシーンに夢中でもあった。両親との距離は年々開き続けていたが、悲壮感もなく絶望感もなくただ淡々と未来に向けて心の牙をみがいていられたのは音楽が好きであったからだが、何故だかこの頃の文章を若いなあと思って笑い飛ばす事も出来ない。あの頃の自分に出会う事は出来ないが少しだけ愛しく感じるような気もする。

かなり厳しいが、今、2020年春、その日記をテキストに打ち込んでみる。

10年後、俺は何をしているのか?一応今、僕は夢がある。でも今の学校生活を行っていると将来がどうでもよくなってくる。ここから抜け出そうと考える。でも、今はここから出てもどうしようもないだろう。誰かに連れ出して欲しいと願う。自分ではここからでれない。弱い人間だと思う。1年後、僕はどうなっているかな。僕には安らぐ場所がないような気がする。自分の理想と周りが合わない。僕はこの世界にあっていないのかなと疑問に思う。どこかにある約束の地に早く行きたい。

ひぃー。俺も当時の親や教師のように愛ゆえにこいつに何か言ってあげたいが、やはり何も言わなくてもいいような気もする。なんとかなっているとは今でも思えないが、これから本当に色んな事が起こるんだよ。という事を自分は知っていて、なんとなくそれを重ね合わせたら、今の自分にも励みになるような気もする。

今後も続けて書いていくので良かったら覗いてもらえたらと思う。

書いているうちに見えてくるものもあるんじゃないかな。

Text 内藤重人

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