臨機応変? 朝令暮改?

 困惑している。3日付のこの欄で「ぬか喜び」と書いた件から「ぬか」の2文字が外れることになった。なのに、引き算で残るはずの「喜び」の実感があまりにも乏しい。代わりに浮かんでくるのは幾つかの「?」▲新型コロナウイルスの緊急経済対策として、全ての国民に一律10万円が給付されることが決まった。しかし、大幅な収入減に直面する世帯への急を要する支援は「一律」の中にのみ込まれてしまった。これが最初の疑問点▲一律給付の背景には「景気を刺激し、経済を下支えする」との名目があった。だが「緊急事態宣言」の下、全ての国民が外出抑制を求められている今、この理屈は通りにくい。皆が“臨時収入”を当て込んで消費に動くことなど当面はおそらく望み薄だ▲政策の目的はいつの間にかすり替わってしまった。「闘いを乗り切るには国民の一体感が必要」-安倍晋三首相の説明を何回か聞き直してみたが、10万円との関係はピンとこない▲前例もなければ、先も見えない事態が続いている。何より必要なのは「臨機応変」な対応だろうし、多少の方針転換があっても「朝令暮改」などと簡単に批判するのは控えたいと考えている。だが、それにしても▲このところの安倍首相には「右往左往」のほかにぴったりの言葉を思いつかない。(智)


© 株式会社長崎新聞社