大学生の子供がバイトを始める前に、親子で話し合っておきたいこと

新型コロナウィルスで現在は在宅を余儀なくされていますが、大学生のお子さんがいるご家庭では、状況が改善した後にアルバイトを始めようと予定している方も多いかと思います。

バイトをすることは自立の一歩ですから喜ばしいことですが、親として心得ておきたいこともあるのでお伝えしたいと思います。親子で話し合える時間がある今だからこそ、考えてみてはいかがでしょうか。


バイト先と何らかのトラブルがあった学生は60%以上

厚生労働省が2015年に行ったアルバイトに関する意識等調査によると、学生1,000人が経験したアルバイト延べ1,961件のうち48.2%が労働条件等で何らかのトラブルがあったと回答しています。人ベース1,000人では実に60.5%がトラブルにあっていることが明らかになりました。

具体的なトラブルの内容について、回答が多い順に見てみましょう。

・採用時に合意した以上のシフトを入れられた
準備や片付けの時間に賃金が支払われなかった
・採用時に合意した仕事以外の仕事をさせられた
・一方的にシフトを削られた
1日に労働時間が6時間を超えても休憩時間がなかった
・給与明細書がもらえなかった

社会人経験のある親からみると、自分から確認すればトラブルにはならなかったかもしれないと推測できるものもあります。しかし、初めて働く子供にしてみればどのタイミングで確認すればいいのかわからないことは想像に難くありません。

上記の太字部分は労働基準関係法令違反のおそれがあるものです。法令違反ということは、そもそも契約しても無効ですし、悪質と判断された場合にはバイト先の企業に懲役や罰金などの刑罰を科される可能性もあるものです。つまり働く側でも一定の知識を持って自衛する必要があると言えます。

親に相談してもらうことで防げることもある

前述調査の対象者1,000人が、アルバイトで困ったことがあったときの相談先として回答したのは、知人・友人に相談した場合 が最も多く(32.0%)、次いで家族(23.6%)、インターネットで調べた(10.1%)、学校や職場の先輩 に相談した(9.6%)でした。

同年代の知人・友人の知見に判断を頼ることは少し心許ないところではないでしょうか。親に専門知識があるとは限りませんが、少なくとも適切な相談先をアドバイスすることはできます。

その際、親自身が介入することはベターな選択とは言えません。社会に出て働く経験をすることは大学生の子供にとって自立する絶好の機会です。親としては、相談先をアドバイスした後は見守るだけに留めておきたいところです。

相談先については、大学の中にある学生相談室にまずは足を運ぶように促すのが良いでしょう。また、労働基準監督署や「総合労働相談コーナー」(労働基準監督署や労働局の中にある)に足を運ぶ、あるいは「労働条件相談ほっとライン」で電話相談できることも伝えておきたいところです。

バイトを始める前に伝えておきたい7つのポイント

トラブルの内容によっては、コミュニケーションが取れていれば未然に防げていたケースもあるかもしれません。

たとえば、子供自身が自分の条件をはっきりと主張する、事前に労働条件を確認し不明なことをクリアにしておくなどです。確認したものの希望に合わなければ取りやめることもできますが、働き始めると心情的に聞きにくくなってしまうかもしれません。

厚生労働省のリーフレット「アルバイトをする前に知っておきたい7つのポイント 」を参考にして、バイトを始める前に一定の知識を頭に入れておくよう子供にも伝えておきましょう。

1.アルバイトを始める前に、労働条件を確認する

2.バイト代は、毎月、決められた日に、全額支払いが原則!

3.アルバイトでも、残業手当がある

4.アルバイトでも、条件を満たせば、有給休暇が取れる

5.アルバイトでも、仕事中のけがは労災保険が使える

6.アルバイトでも、会社都合の自由な解雇はできない

7.困ったときは、総合労働相談コーナーに相談する

子供が稼ぎすぎて親の負担が増えることに注意!

最後になりますが、子供がバイトで稼ぐことで親への影響があることもお伝えしたいと思います。子供の収入が一定以下の場合、親にとっては税負担が軽減する、あるいは勤務先から家族手当の支給があるなどメリットがあります。

たとえば、大学1年生の子供(19歳)がいる場合、特定扶養親族控除として親の年収から一定の控除額を引くことができるのです。控除額は、所得税63万円、住民税45万円になります。

親の年収600万円の場合、所得税率と住民税は共に10%となりますから年間10万8,000円の税額軽減になります。特定扶養親族に該当する子供は、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の場合であり、早生まれの現役大学1年生は特定が外れた扶養親族に該当し控除額が小さくなります。

また、親の年収が高くなると所得税率も高くなるので、高年収の場合には税額軽減が大きくなることを付け加えておきます。

このように家計へのメリットが大きい税額軽減ですが、子供の給与収入が年間103万円を超えると利用することはできなくなります。月のバイト代にすると約8万5,833円ですから該当する人は多くはないかもしれません。

ただし、長期休みでバイトに励むこともありますから留意は必要です。なお、勤務先によりますが家族手当の支給がある場合、子供の年収要件について会社に確認をしておく必要があります。

「年収103万円以内の22歳未満の子どもにつき月額5000円を支給する」など、勤務先によりルールは異なるものの、年収要件を103万円以内と定めている会社も多いようです。お子さんがバイトを始める前に家庭内で話し合っておかれることをオススメします。

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