三菱 新型eK スペース/eK クロス スペースに試乗|実際に乗り込んでわかった使い勝手や質感、室内の広さ

三菱 新型 eK X(クロス) スペース/ekスペース

三菱 新型eKスペースとeKクロススペース、基本的な部分は同じなのに際立つ個性とは

三菱 新型 eK X(クロス) スペース/ekスペース

三菱 新型eKスペースとeKクロススペースは基本的には同じクルマだが、外観と内外装のデザイン、装備などは大きく異なる。

eKクロススペースは、フロントマスクが今の三菱車に共通するダイナミックシールドの形状だ。ボディサイドのパネルがフロントマスクまで回り込み、ガードするような見栄えに仕上げた。

他社ライバルに設定される「カスタム」グレードに共通する押しの強さに加え、三菱車らしいSUV風の力強くタフなイメージも加えられ、独自の魅力を持った。

いっぽうのeKスペースは、穏やかで万人受けするデザインだ。初期の受注状況では、eKクロススペースが全体の65%を占め、人気を集めている。三菱ならではのデザイン性が評価された格好だ。

運転席から見まわした視界は極めて良好だ

三菱 新型 eK X(クロス) スペース/ekスペース

新型eKスペースとeKクロススペースは、前後左右のピラー(柱)の角度を立てて、ボディ前端の側面には、縦長のサイドウィンドウも装着した。この効果もあり、斜め前を含めて前方視界は良好だ。

サイドウィンドウも下端の位置を低めに抑えたから、側方も見やすい。

ボディ後端のピラーは少し太いが、後方視界を損なうほどではない。

ボディサイズは、eKスペース、eKクロススペースともに、全長が3395mm、全幅は1475mm、全高は1780mm(4WDは1800mm)、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2495mmだ。天井が高く、ホイールベースも長いために室内は広い。

プレミアムインテリアパッケージの上質さはコンパクトカーのレベルを軽く超えたもの

三菱 新型 eK X(クロス) スペース/ekスペース
三菱 新型 eK X(クロス) スペース/ekスペース

実際に新型eKスペース/eKクロススペースの車内に乗り込んでみると、上質な内装の造りが印象的だ。インパネの中央にはブラックのパネルが備わり、エアコンはタッチパネル式になる。

さらにeKクロススペースでは、メーカーオプションとしてプレミアムインテリアパッケージ(+5万5000円のメーカーオプション)も用意した。

シート生地が合成皮革とファブリックを使った上級な仕様にアップグレードされ、インパネには柔らかいパッドも入る。内装やシートの各部には、本物の糸を使うステッチ(縫い目)も見られ、内装の質はコンパクトカー以上だ。

質感を大切にするなら、オプションのプレミアムインテリアパッケージも検討したい。

前席(運転席・助手席)に座ってみた印象は

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前席はサイズに余裕を持たせ、肩まわりのサポート性も良い。背もたれは腰を包むような形状だ。座り心地は良いが、運転席の着座位置を上下させる機能は改善を要する。座面だけが動くため、調節した高さによって座り心地が変わってしまう。背もたれを含めて、シート全体を上下させる一般的なタイプが好ましい。

後席は座面の長さ(奥行寸法)が短く感じる。座り心地は硬めだから、大腿部のあたりに違和感が生じて、座面の短さが一層目立つ。座り心地をもう少し柔軟にしたい。

後席に座ってみた印象は

三菱 新型 eK X(クロス) スペース/ekスペース

全高が1700mmを超える軽スーパーハイトワゴンだけあって、後席のスペースは広い。

身長170cmの大人4名が乗車した時、後席に座る同乗者の膝先空間は握りコブシ4つ分だ。Lサイズセダンでも2つ半から3つ分なので、前後方向の足元空間は相当に余裕がある。

頭上にも握りコブシが2つ収まるから開放感もある。

後席のスライド機能を活用し、後部の荷室空間を充分に確保して乗ったほうが良い理由

三菱 新型 eK X(クロス) スペース/ekスペース

それでも実際に後席に座る時は、膝先空間が握りコブシ2つ分になるようスライド位置を前寄りに調節したい。

そうなれば後席に座る乗員とリヤウィンドウの間隔に余裕が生まれ、追突された時の不安をある程度は抑えられる。後席の後ろ側に荷物を積むことも可能だ。

また後席のスライド機能は前後に320mm調節できるから、チャイルドシートを装着した時は前寄りに調節すると良い。親子の間隔が縮まり、信号待ちの時などに子供の面倒を見やすい利点がある。

荷室を拡大する際の後席シートアレンジ(前倒し)も容易に出来る

三菱 新型 eK X(クロス) スペース/ekスペース

全高が1700mmを超える軽自動車では、荷室も重要だ。

新型eKスペース/eKクロススペースの後席の背もたれを前側に倒すと、座面も連動して下がり、広い荷室になる。

広げた荷室の床には、少し傾斜ができるが、容量は大きく自転車なども積みやすい。

いちど慣れるともう手放せない! ハンズフリーオートスライドドア

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新型eKスペースとeKクロススペースのGとTには、左側のハンズフリーオートスライドドアを標準装着した。電動スライドドアだが、キーを携帯しながらその下側で足を出し入れすると、自動的に開閉する。

子供を抱えたり、両手で荷物を持っている時に便利だ。

なおメーカーオプションで右側ハンズフリーオートスライドドア(5万5000円)も用意されている。

このほか新型eKスペースとeKクロススペースでは、収納設備も豊富に備わる。

助手席の前側には、グローブボックスとは別に、ボックスティッシュなどが収まる引き出し式の収納設備を採用した。トレイも随所に備わり使いやすい。

先進安全技術や運転支援機能もさらに充実

三菱 新型 eK X(クロス) スペース/ekスペース

三菱 新型eKスペース/eKクロススペースの装備面についても紹介しよう。

年々性能が向上し続ける衝突被害軽減ブレーキは、センサーが進化した。従来の単眼カメラに加えてミリ波レーダーも備わる。

この効果で、2台先を走る車両も検知可能になり、ドライバーの見えないところでトラブルが発生した時も、早期に警報により注意喚起出来るようになった。

この変更もあって、マイパイロットに含まれる車間距離を自動制御できるクルーズコントロール(ACC)、車線の中央を走れるようにパワーステアリングを支援する機能も正確性を高めた。反応の遅れを感じにくい。

eKクロススペースにオプション設定される“後席パッケージ”は選んでおきたい装備

三菱 新型 eK X(クロス) スペース/ekスペース
三菱 新型 eK X(クロス) スペース/ekスペース

このほか快適装備では、eKクロススペースにオプション設定される後席パッケージ(4万4000円)に注目したい。

運転席・助手席シートバックテーブルやリアロールサンシェードに加えて、プラズマクラスター付きリアサーキュレーターも装着される。一種の扇風機で、インパネから吹き出したエアコンの冷気を後席側に送るものだ。空間の広いeKクロススペースだから、積極的に選びたい。

なおノーマルのeKスペースの場合は、GとTに助手席シートバックテーブル、リアロールサンシェード、プラズマクラスター付きリアサーキュレーターは標準装備される(運転席シートバックテーブルのみオプション)。

日産版「ルークス」にあって唯一三菱 新型eKスペース/eKクロススペースに備わらないヘルプネットの謎

日産 新型ルークス

今後の課題はヘルプネットの採用だろう。

日産ブランドのルークスでは、運転席の上部にSOSスイッチが装着され、緊急時にオペレーターを通じて救援を依頼できる。エアバッグが展開した時は、オペレーターが乗員に呼びかけを行い、応答のない時は自動的に消防や警察に通報することも可能だ。

これは安全性を高めユーザーにとっても利点の大きい機能だから、三菱自動車工業としても早急に対応して欲しい。

新型eKスペース/eKクロススペース、実際乗ってみてわかったおススメグレードは!?

三菱 新型 eK X(クロス) スペース/ekスペース

機能と価格のバランスを考えると、最も買い得なグレードはeKスペースGだ。前述のように標準ボディでもマイパイロットなどを装着できる。

試乗して動力性能に不満を感じたら、ターボエンジンのeKスペースTも検討する。

動力性能はノーマルエンジンの1.7倍だが、WLTCモード燃費は10%しか悪化せず、効率が高い。eKスペースTの価格はGに比べて9万3500円高いが、アルミホイールなど複数の装備が加わるから、ターボの正味価格は実質約4万円だ。

SUV風のeKクロススペースが欲しい時も、まずはGを検討してターボのTも試すと良い。

軽スーパーハイトワゴンの世界は似通ってるようで個性たっぷり

三菱 新型 eK X(クロス) スペース/ekスペース

今は軽自動車といえば、ホンダ N-BOXの人気が突出して高い。しかし走行安定性や運転支援機能は、eKスペース&eKクロススペースが優れている。

軽自動車は競争が激しく、常にライバル車を研究しながら開発されるため、2020年に発売されたeKスペース&eKクロススペースは、2017年に登場したN-BOXよりも有利になった。

従ってライバル車のN-BOX、ダイハツ タント、スズキ スペーシアと乗り比べてみると、eKスペース&eKクロススペースの特徴がさらに良く分かる。

一見するとどれも外観が似通っているように感じるが、実際にお店で試乗することによって、それぞれのニーズに合った車種を見つけられるだろう。

[筆者:渡辺 陽一郎/撮影:森山 良雄・MOTA編集部・三菱自動車工業]

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