コロナ相場の「勝ち組」「負け組」はどの業種?

新型コロナウイルスの世界的流行は止まることを知らず、世界の感染者は250万人を突破しました。また、WTIの原油先物が歴史的な大暴落を続けるなど、世界的には不安定な状況が続いています。

この混乱を先取りする形で世界の株式市場も2月の後半から急激な調整を強いられ、3月中旬に日経平均株価は高値から一時8,000円を超える暴落を記録しました。

しかし、3月23日からの3営業日で約3,000円の上昇を記録するなど急激なリバウンドをみせ、現在は1万9,000円台に位置しています。

この期間のセクター別の騰落率はどうだったのでしょうか。東証業種別株価指数(33業種)の3月18日から4月17日までの騰落率から、セクター別の強弱を見ていこうと思います。


強かったセクター

騰落上位セクターは医薬品、その他製品、保険業と、新型コロナウイルスにより業績への追い風が予想されるセクターが続きました。この期間のTOPIXの上昇率は13.5%であったのでかなりのアウトパフォームといえます。特徴的な銘柄をいくつかピックアップしてみます。

医薬品セクターではウイルス除去製品であるクレベリンを製造する大幸薬品(証券コード:4574)がウイルス対策関連として物色され、40%以上の上昇を見せたほか、時価総額7兆円を誇る中外製薬(4519)が上場来高値を更新するなど力強い銘柄が目立ちました。

保険業セクターでは、2020年3月期の連結純利益を92%下方修正した第一生命HD(8750)が20%超の上昇を見せたほか、「保険市場」を運営するアドバンスクリエイトは好調なオンライン生命保険の申込件数が好感され、40%超の上昇を記録しました。

弱かったセクター

騰落率下位のセクターは空運業、鉄鋼業、その他金融業となりました。騰落上位セクターとは対照的に新型コロナウイルスにより悪影響の大きいセクターが顕著に伸び悩む形となりました。特徴的な銘柄をいくつかピックアップしてみます。

空運業では、世界的な移動制限の大打撃を受けているANAHD(9202)が下げ止まらず10%以上の下落でした。金融機関に1.3兆円の融資を求めており、資金繰り懸念が生じているほか、例年稼ぎ時であるゴールデンウイークも自粛が続くことが確実となり、厳しい状況が続きます。

2番目に弱かった鉄鋼業は、米中貿易摩擦の影響から新型コロナウイルスによる需給ギャップと逆風続きのセクターです。中でも大幅な下方修正を発表した日本製鉄(5401)とJFE(5411)の株価が、1倍を目安とするPBRで0.2倍をつけるなど低迷を続けています。

3番目に弱かったその他金融業は航空業界の落ち込みが波及し、航空機リースが打撃を受けていることからリース関連企業の下落が目立ちました。中でも優待銘柄として個人投資家にも人気があるオリックスは5%以上下落し、PBRも約0.5倍と低迷しています。

コロナ後にも強そうなセクターは?

直近の株価の動きは新型コロナウイルスによる特需や短期的な悪影響の反映であるとの見方もできますが、長期的なライフスタイルの変化を先取りしている可能性もあるのではないでしょうか。特に役割の変化が予想される製品を見ていきましょう。

まずは家庭ゲーム機です。騰落上位2番目のその他製品セクターに属する任天堂(7974)は、外出自粛に伴うゲーム需要の増加から株価が30%以上上昇しています。

主力製品であるニンテンドースイッチは生産が追い付かないほどの人気を見せており、今回使用を開始したユーザーが継続的に使用し、業績が押し上げられることも考えられます。

また、人々の生活様式の変化が追い風となることも考えられます。たとえば社会人で通勤時に暇つぶしとしてスマホアプリでゲームをしていた方も多くいたのではないでしょうか。

しかし今後テレワークが広がりを見せた場合、通勤の時間がなくなるため、その時間を使って家でゲームをする人も増えるのではないでしょうか。スマホゲームを家庭ゲーム機が代替し、需要が高まる可能性も期待できます。

ライフスタイルを激変させたコロナ

続いてマスクです。連日店舗での品切れがニュースで報道されていますが、株式市場でも医療用衛生材料最大手である川本産業(3604)が1月下旬に10連続ストップ高を記録するなど、新型コロナウイルスの影響を先取りして動きがありました。リバウンド相場ではセクターとして目立った動きはありませんでしたが注目といえるでしょう。

今までは風邪気味の際に周りに迷惑をかけないため、最小限を家庭に保管しておく存在でした。しかしこれを機会にエチケットとしてマスクの常時使用がスタンダードになる可能性があるのではないでしょうか。

マスク着用の文化がなかった米国でもつけることが推奨されるなど、マスクを取り巻く環境は劇的に変化しており、一時的な物色対象ではなく、長期的に成長産業となる可能性を秘めています。

日本への影響は小さいと思われていた新型コロナウイルスは今や、従来のライフスタイルを激変させてしまいました。厳しい日々が続きますが、自分の生活を見直すと同時に、その変化を投資アイデアとして活用してみてはいかがでしょうか。

<文:Finatextグループアナリスト 菅原良介>

© 株式会社マネーフォワード