市民に感染「可能性低い」 厚労省・鈴木氏 船内の管理重要

クルーズ船内でクラスターが発生したことについて見解を示す厚労省クラスター対策班の鈴木氏=県庁

 長崎県入りした厚生労働省クラスター対策班の鈴木基(もとい)氏は22日、県庁で報道陣の取材に応じ、クルーズ船の乗組員623人のうち34人の新型コロナウイルス感染確認について「かなりのインパクトがある数字」との見解を示した。さらに船内の感染者が増えるとの前提で対策を立てる必要性を指摘しつつも、クラスター(感染者集団)から市民に二次感染が広がる可能性は「低い」とした。

 -乗組員623人のうち34人が感染した事実への見解は。
 かなりのインパクトがある数字。まだ陽性の人がいるという前提で(対策を)考えなければならない。調理担当ら(船内の運営に従事する)「エッセンシャルクルー」は完全な個室隔離は不可能で、これらのクルーが感染しないよう船内を管理することが重要になる。

 -市民への二次感染の可能性は。
 新型コロナは患者1人から平均して2人に二次感染させると言われている。これはインフルエンザとあまり変わらない。ただインフルエンザは5人の患者がいたら、おしなべて2人に感染させて10人となるが、新型コロナは5人の患者のうち4人は誰にも感染させないが、残りの1人が10人にうつすという偏った感染を起こしやすい。これをクラスターと呼んでいる。クラスターの大半は(5人のうち誰にも感染させない)4人と同じなので二次感染が起こる確率は低い。
 院内感染やライブハウスなどでクラスターが発生したが、多くの場合、そこから外にウイルスが飛び散るケースは極めて限られている。クルーズ船の乗組員の何人かが市中に出入りしていたとしても、次のクラスターを起こす可能性はかなり低い。

 -ウイルスが船内に持ち込まれた経緯は。
 現時点では分からない。可能性としては、まちなかに出た乗組員がどこかで感染して船内に持ち込んだか、海外から検疫を経て入国した乗組員が症状がなく検査も陰性だったが実はウイルスを持ったまま船内に入ったか、この2点が考えられる。

 -今後の船内の感染対策は。
 私が知る限り、個室隔離になる前は乗組員は船内で普段通りの生活をして交流や接触の機会があり、どこかのタイミングで感染が広がった。(先に集団感染が起きたクルーズ船)「ダイヤモンド・プリンセス」の時は乗客の中で大規模な感染が発生して、その対策のゾーニング(感染、非感染区域の区分け)が難しかった。今回のクルーズ船はこれからゾーニングをしなければならず、まさに今(22日正午すぎ)、厚労省のDMAT(災害派遣医療チーム)がどう態勢を構築するか検討している。疫学調査のため現状ですぐ船内に入れるかどうかも判断しないといけない。

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