不用品を売買できるフリマアプリはとても便利ですが、トラブルも頻発しています。その多くは、正規品と謳われていたブランド品を買ったら偽物だったというケースや、購入した商品が入っておらず、空箱だけが送られてくるといったトラブルです。しかしこれは必ずしも購入者だけに降りかかるものではなく、商品の出品者にも起こりえます。
取引先との思わぬトラブル
知人はフリマサイトに有名ブランドのバックを出して、約30万円で落札されました。そして入金を待っていたのですが、思わぬトラブルに遭いました。
突然、購入者から「私が持っている正規品のバッグと、縫い目やロゴが違うから、これは偽物ではないか?」と疑われたのです。知人は確かにブランド会社の公式サイトで購入したもので、商品のレシートも添付して送っていました。
それにも関わらず「偽物の可能性があるので、返品したい」と言われたのです。そこで、知人はフリマの運営サイトへ、購入時のレシートの写真を送り、本物を主張して、どう解決すればよいのか尋ねました。しかし運営者側からは「購入者の要望に応じて、返品に応じてください」という返事がくるだけでした。
知人は悩みました。相手は氏素性のわからない人です。もし返品されたとしても、偽物を入れて送ってくる、“すり替え”の可能性もあります。これは購入者が「サイトで見たサイズや色が違う」などと難癖をつけて返品を了承させて、実際には出品者が送ったものと違うものを送り返す「返品詐欺」といわれるものです。
知人は返品依頼を受けるべきかについて悩み、ネット上の質問サイトでみんなに聞いてみると、ほぼ全員が「すり替えが行われても、運営者側は関与しないので、泣き寝入りになるだけだ」という意見が圧倒的でした。そして「返品に応じてはいけない」というのです。なかには「本物だと言い続けて、戦う姿勢で臨むべきだ」という意見もありました。
知人も最初は、それらの意見にのって「返品を受けない」方向で話を進めていましたが、購入者はまったく折れません。
ついには、運営者側からは「あなたの商品は偽物の疑いがあり、違反出品に当たるので、自己負担で返品対応を」との連絡がきました。知人はレシートの写真だけではなく、ブランド品を公式サイトから購入したマイページの履歴のスクリーンショットも送りましたが、運営者側は、購入者寄りの対応しかしてきませんでした。
最悪の事態を避けるために
知人はどう対処してよいかわからずに、私に連絡をしてきました。
「このフリマでは、購入者が受け取りの評価をしないとお金がもらえないので、取引き打ち切りとなると、バックは相手に渡った上に、お金も手に入らないという最悪の事態になっていまいます」
さらに話を聞けば、運営者は「返品に応じなければ、取引を打ち切る」とまで言い「24時間以内の対応を」と、期限まで切ってきたということでした。
「もし偽物とすり替わって商品が戻ってきた場合、サイトでは何も保証もないようです。その時に、相談できる場所はあるのでしょうか?」
弁護士に相談
まず相談先については次のようにお話ししました。
「このケースのトラブル相談は弁護士になります。消費者センターはあくまで企業と個人とのトラブルに関しての相談を受けるところで、フリマのような個人間同士の取引の場合は、消費者センターは対応できません。ただし、話を聞く限り、運営者側の一方的な対応に問題もありそうなので、その妥当性については消費者センターに相談しても良いかと思います」
知人とはいえ、私は法曹資格がありませんので相談には乗れません。本人が解決を図るために必要なことをお伝えました。
「サイトの運営者側は、返品してくださいと言っているのですね。だとすれば、返品には応じる必要はあるかと思います。ですが、万が一、すり替えが行われた時のために、迅速に動けるように準備はしておいた方がよいと思います。商品のすり替えがあった場合、すぐに警察にかけこめるように、事前に#9110に電話をして、通報先を尋ねておいてください」
これらの準備をしたうえで、購入者側に次のことをしっかりと伝えると良いとアドバイスしました。
「送る前の商品やレシートの写真は撮っており、手元にあるとのことですので、それを相手にお伝えしたうえで、『当方としても高額な商品ですので、すり替えの心配をしています』と正直に告げてください。そして『もし違う商品が送られてくれば、すぐに警察に通報します』も合わせて伝えておいてください。何より、こちらの意向をしっかりと伝えて誠意ある態度で交渉することが大事になります。それでもなお、返品したいということあれば、応じてはどうでしょうか?」
それからしばらくして、知人から連絡があり、購入者と何度か話し合いをもった結果、購入者は鑑定先に商品を持っていき、本物であると確信したそうです。そして、受け取りの評価もしてもらい、お金も無事に入金されました。
フリマのトラブルを避けるために
今、こうしたフリマをめぐるトラブルは多くなっています。
知人は購入者にも、レシートやマイページの写真を送りましたが、相手も「偽物」との疑念をもったために「本物を買ったうえで、証明書を手に入れて、偽ブランド品を送る手口もある」という情報を知り、この証明も100%信じられないと思ったそうです。双方がネット上の様々な情報から、疑心暗鬼になりトラブルに発展するケースは多いのです。ですので、ネット上の情報だけに偏るのではなく、しっかりと当事者同士が腹を割って、何度も話すことが大事になります。
今回はトラブルを回避できましたが、もし相手が騙すことを目的とした悪質な人だった場合、このようなウィンウィンな形での収束とはならなかったでしょう。
ですので、商品を送る前には、シリアルナンバーを確認できる商品の写真や、お店で購入した際のレシートをしっかりと手元に残しておく。特に、高額商品の取引をする場合は、トラブルに遭遇するかもしれないという最悪の事態を想定して、様々な事前準備を怠りなくしておき、もし詐欺被害に遭ったら泣き寝入りせず、すぐに警察に相談することが大になります。
今、新型コロナウィルスの影響で、自宅からこうしたフリマサイトを利用することも多いかと思いますが、トラブルに遭った場合、運営者側はどちらかというと購入者重視で対応する傾向があります。また、トラブルでの法的解決を図ろうとしても、特定商取引法などの消費者を保護する法律は、相手が事業者だった場合に適用されるものなので、個人間取引には対応できません。ですので、金銭を伴う商品授受のトラブルは、あくまでも個人同士が対応をし合わなければならないことを心に留めて取引をするようにしてください。