GG賞は守備で貢献した選手が選ばれているか? データと投票結果を検証【2018年パ編】

ソフトバンク・甲斐拓也(左)と西武・源田壮亮【写真:荒川祐史】

“甲斐キャノン”で一世を風靡した甲斐は守備指標でもトップの数値

 守備の名手に与えられる栄誉ある賞といえば、ゴールデングラブ賞だ。毎年、守備面でチームに貢献し輝いた選手が各ポジションごとに選出され、9人の受賞者が決まる。選出は記者投票によって行われ、新聞社、通信社、テレビ局、ラジオ局のプロ野球担当記者として5年以上、現場で取材を担当している記者に投票資格が与えられる。

 記者投票によって行われるため、そこにはそれぞれの人たちの主観が入り込む。もともと守備の名手と称されてきた選手や、何度もテレビなどで報じられるインパクトあるビッグプレーをした選手には票が集まるのは仕方ないところだ。ただ、実際には打撃面の貢献度が、そこに入り込んでいるとの声があがるのも事実だ。

 そこで、ここでは様々なデータで野球を分析するセイバーメトリクスの指標を検証。株式会社DELTAのデータを用い、客観的な数字から、実際の受賞結果との違いを見ていきたい。セイバーメトリクスも絶対の数字ではなく、怪我など様々な要因によってブレが生じるとされる。あくまでも、参考として見てもらいたい。

 今回は2018年のパ・リーグを見ていく。ゴールデングラブ賞の受賞者は以下の通りだ。

投手 岸孝之(楽天)
捕手 甲斐拓也(ソフトバンク)
一塁手 中田翔(日本ハム)
二塁手 中村奨吾(ロッテ)
三塁手 松田宣浩(ソフトバンク)
遊撃手 源田壮亮(西武)
外野手 秋山翔吾(西武)柳田悠岐(ソフトバンク)西川遥輝(日本ハム)

 投手は守備機会が少ないため比較は割愛し、捕手から見ていく。ゴールデングラブ賞は“甲斐キャノン”で一世を風靡した甲斐。実際に捕逸割合や盗塁阻止から算出される捕手の指標である「Catcher Defence」では7.2をマークし、12球団でトップの数字だった。

初受賞となった遊撃手の源田はUZRでも30.9という驚異的な守備指標をマーク

 一塁手は中田が2年ぶりに受賞した。中田は失策3、パ・リーグでトップの守備率.998をマークしており、これが受賞の要因となったのだろう。一方で同ポジション平均の選手に比べて守備でどれだけ失点を防いだかを示す「UZR」は2.0。パ・リーグで600イニング以上守った一塁手の中で4番目の数字だった。西武・山川穂高が5.1でトップで、ロッテ・井上晴哉(4.6)、楽天・銀次(3.0)と続いている。ただ、山川はこの4人でワーストの14失策だった。

 二塁手で選出された中村奨はUZR6.5と、指標の上でもパ・リーグトップ。三塁手の松田宣もUZR13.5と、こちらは12球団でダントツの数字を残しており納得の選出になっている。遊撃手では源田が初受賞。UZR30.9という驚異的な守備指標を叩き出しており、同郷の先輩である今宮健太からその座を奪い取った。

 最後に秋山、柳田、西川が選ばれた外野手を見ていこう。3人ともが中堅手。中堅手のUZRでは西川の6.2がパ・リーグでトップ。柳田の2.1が3位、秋山の-1.2が4位だった。そして2位に入っていたのが楽天・田中和基。UZR5.5をマークしていた。UZRは同一ポジション内での比較ではあるが、中堅手以外に目を向けると、左翼手では楽天・島内宏明が17.3、日本ハム・近藤健介が10.2と抜きん出た数字を記録。右翼手でもソフトバンク・上林誠知が14.0、日本ハム大田泰示が13.3と高い数字を叩き出していた。

 このように守備指標から見る守備のいい選手と、実際にゴールデングラブ賞に選ばれた選手を比較検証してみると、違いがあることが分かる。こうして、データも見ながら野球を見ると、また1つ楽しみが生まれるのではないだろうか。(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。

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